Chapter 16 「黒き翼」
宇宙を、終焉の光が埋め尽くしていた。
《GENESIS》主砲。
惑星すら蒸発させる超広域殲滅砲。
放たれた白赤の奔流は、
一直線にヘリオス・ベースへ向かっていた。
『駄目です!!』
『回避不可能!!』
『艦隊前衛、蒸発します!!』
人類艦隊が崩れる。
戦艦が。
FW部隊が。
HX残骸ごと、
光へ呑み込まれていく。
爆発すら残らない。
存在そのものが、
消えていた。
「くっ……!」
《セラフィム》内部。
リゼが歯を食いしばる。
モニター全域が警告表示で赤く染まる。
WARNING
WARNING
WARNING
『熱量測定不能!!』
『空間歪曲発生!!』
『こんなの……兵器じゃない……!!』
一方。
《ヴァルグレイヴ》は、
その終焉の光へ向かっていた。
黒い粒子を撒き散らしながら。
「ソラナム!!」
リゼが叫ぶ。
『戻って!!』
『直撃したら――』
「間に合う。」
低い声。
だが、
その声はどこか機械的だった。
コクピット内部。
ソラナムの瞳が、
薄く黒く発光している。
SYNC RATE:80.3%
脳内へ、
無数の情報が流れ込む。
知らない文明。
知らない星。
滅び。
滅び。
滅び。
『観測記録:12783』
『文明崩壊確認』
『感情因子による自壊率:93%』
頭の中へ、
声が流れ込む。
「……うるさい。」
ソラナムが呟く。
『人類は非効率。』
『争いを繰り返す。』
『終焉は必然。』
「黙れ……!!」
《ヴァルグレイヴ》出力上昇。
黒い翼がさらに展開した。
羽ではない。
粒子の集合体。
まるで、
“終焉そのもの”が翼を持ったようだった。
『形状変化確認!?』
『あれは……HX形態!?』
EVA管理局オペレーターたちが凍りつく。
一方。
《クリムゾナー》は、
なおもHX群中央で戦っていた。
「どけェェェ!!」
左腕だけでブレードを振るう。
高熱斬撃。
一閃。
HX二機撃破。
だが。
WARNING
FRAME LIMIT OVER
機体各部が悲鳴を上げる。
右脚部出力低下。
背部推進器破損。
内部温度危険域。
『フレア!!』
ミリアが叫ぶ。
『もう下がって!!』
「まだ……!!」
《クリムゾナー》が加速。
『駄目!!』
「まだ先輩が――!!」
その瞬間。
HX砲撃直撃。
「ッぁ!!」
《クリムゾナー》左肩部爆散。
機体が大きく吹き飛ぶ。
『フレアァ!!』
ミリアの叫び。
爆炎。
火花。
沈黙。
「……っ。」
コクピット内部で、
フレアは血を吐いた。
視界が滲む。
それでも、
前を見る。
黒い機体。
《ヴァルグレイヴ》。
「……先輩。」
昔。
アカデミーで見た背中。
誰よりも無茶で。
誰よりも前へ出て。
誰よりも、
誰かを守ろうとしていた。
「だから……。」
フレアが震える手で操縦桿を握る。
「アンタだけに……背負わせるかよ……!!」
《クリムゾナー》再起動。
赤い推進光が灯る。
一方。
《ANGEL PRIME》は、
静かに《GENESIS》を見ていた。
『観測領域限界到達。』
その背後。
光輪が増殖する。
一枚。
二枚。
三枚。
空間そのものへ幾何学模様が刻まれる。
『対終焉兵装』
『――解放』
その瞬間。
《ANGEL PRIME》の右腕が変形した。
白銀の巨大槍。
HXですら記録に存在しない武装。
『あれは……』
『武器……!?』
誰かが呟く。
次の瞬間。
《ANGEL PRIME》消失。
超高速移動。
白い閃光が、
《GENESIS》主砲へ突撃する。
だが。
終焉の光は止まらない。
『停止不可能。』
THRONEの声。
『終焉は確定事項。』
「違う。」
ソラナムが前へ出る。
黒い翼が広がる。
空間が軋む。
粒子が悲鳴を上げる。
「終わるかどうかは……!!」
《ヴァルグレイヴ》が、
終焉砲の真正面へ立った。
「俺たちが決める!!」
OVERDRIVE:SECOND PHASE
黒い粒子が爆発的に噴き上がる。
そして。
ソラナムの視界へ、
“誰か”が映った。
黒い海。
滅びた星。
その中心に立つ、
漆黒のHX。
それは。
《ヴァルグレイヴ》と、
酷似していた。
『終焉因子適合確認。』
『継承を開始します。』
「……何を……言って……。」
頭が割れる。
視界が歪む。
だが、
それでも。
ソラナムは前へ進む。
人類を守るために。
仲間を守るために。
そして。
黒き翼が、
終焉の光へ触れた。
次回予告
《ヴァルグレイヴ》と《GENESIS》主砲が激突。
だが、
SYNC RATE80%を超えた代償は、
確実にソラナムを蝕み始めていた。
一方、
限界を超えた《クリムゾナー》は、
ついに完全停止寸前へ。
それでもフレアは、
なお戦場へ戻ろうとする。
『お願い……生きて……』
涙をこぼすミリア。
そして。
《ANGEL PRIME》は、
HX文明すら封印した“禁忌”へ手を伸ばす。
Chapter 17
「終焉天使」
人か。
HXか。
ソラナムの境界が、
崩れ始める。




