056 【覚醒と絆】宿に集う転生者たち、ハーレム形成と魔族討伐への宣戦布告
■安らぎの聖域と、唐突な告白
王都キャルベルの北の森で、俺たちは『極炎の宴』という悪辣な害虫を排除した。その手には、泥と血に汚れたダークエルフの少女、ダルアを抱えて。
ニャルマル商会のシャルさんに通信魔道具で事後報告を済ませると、俺たちは一刻も早くこの不潔な森を脱出し、拠点の『猫が安らぐ宿』へと戻った。
重厚な扉を開くと、そこには戦場とは別世界の光景が広がっていた。調度品は洗練され、暖炉の火が静かに爆ぜる、まさに「安らぎ」の名にふさわしい空間。
「ここが……私の、場所?」
ダルアは、宿の豪華さに呆然と立ち尽くしていた。奴隷として扱われ、家畜以下の生活を強いられていた彼女にとって、この宿は夢の国のように見えたに違いない。
リビングに集まり、まずは熱い紅茶で喉を潤す。湯気が立ち上る中、ようやく一息ついた俺は、隣に座る彼女に問いかけた。
「さて、ダルア。先ほどは聞けなかったが、何を確認したいことがあるんだ?」
その問いに対し、彼女は不意に紅茶カップを置き、俺を真っ直ぐに見据えた。
「ダルだよー。ダルアさんは他人行儀。……ねえ、ショータ」
「あぁ、そうか。ダル、だな」
「そう。……ねえショータ。ダルはね、決めたの。もう誰にも縛られない。だから、ダルはショータの『ハーレム』に入るよ!」
「…………え?」
俺は思考が停止した。
リビングが静まり返る。口調は軽快だったが、彼女の身体は微かに震え、その瞳には「もう二度と戻らない」という鋼の決意が宿っていた。
「は、ハーレム!?」
俺の声が裏返る。
「いや、その……君、俺と出会ったばかりだぞ!?」
すると、いつの間にかエリが俺の背後に忍び寄っていた。
「主様、否定する必要はないのじゃ。……主様にその気があるのは分かっておる。妾は、いつだって主様に身を捧げる覚悟があるのじゃ」
「僕もお風呂の誘い、待ってたんだよ?……僕もいつでもいいよ」
ハルカが恥ずかしそうに頬を赤らめながら、俺の腕にしがみつく。
「アタシも大好きだから、今からハーレムでOKだにゃ!」
ペロが俺の背中に飛び乗り、猫のように喉を鳴らしながら甘えてくる。
最後にはダルまでが、俺の胸に自分の豊かな双丘を押し付けてきた。
「ダルも混ぜてよー。汚れた身体かもしれないけど、ショータのためなら全身全霊でサービスしちゃうから!」
……なんだ、この天国は。いや、これが異世界ハーレムの洗礼というやつか?
俺はタジタジになりながらも、彼女たちの温もりを受け入れることにした。貴族や冒険者に蹂躙されてきた彼女たちが、こうして俺を求めてくれること自体が、復讐劇の先にある救いなのかもしれない。
■転生者としての絆、共有される記憶
ハーレムの形成という、予想外の大イベントを終えた後、俺たちは真剣な話し合いの場を設けた。彼女たちの過去を癒やし、未来へ向かうためには、互いの素性を知る必要があるからだ。
「……ねえショータ、本当に日本から来たの?」
ダルの問いに、俺は頷く。
「ああ。事故死して、気づいたらこの世界にいた。魔抜けとして蔑まれ、家族からも見捨てられてな」
ダルは少し寂しげに笑った。
「一緒だね。私も日本で女子高生やってたよ。事故で死んで、気づいたらダークエルフの集落で虐められてた。……酷いよね、実の親にまで、あんな奴らに売られるなんて」
「……そうか。日本か」
懐かしい響き。俺たちは、この残酷な世界で唯一、共通の「故郷」を持つ者同士だった。
彼女の憎しみは、俺の憎しみでもある。
「ダル、俺はお前を二度と裏切らない。……お前を売った集落、そしてお前を汚した奴ら全員、俺が地獄へ送ってやる」
「……うん。ショータとなら、やれる気がする」
■戦力増強、復讐の準備
感傷に浸っている時間は短い。魔族マロンという脅威が迫っている以上、戦力強化は急務だ。俺は戦力として未熟なダルをどう育てるか、エリと相談した。
「エリ、ダルには『気功』を教えたい。だが、即戦力にはならないだろう」
「ならば、妾が魔道具で『銃』を開発するのじゃ。迷宮の魔石と鉄があれば、魔力を弾丸に変える殺戮兵器が作れる。ダルのような力のない者でも、魔族を撃ち抜く力が手に入るはずじゃ」
「銃、か……。素晴らしい提案だ。それと、鑑定防止の魔道具も頼めるか?俺たちの正体を隠し通す必要がある」
「材料さえ揃えば造作もない。迷宮の素材を回せば、商会に最高級品を卸せるぞ」
俺はアイテムバッグから迷宮素材を大量に取り出し、エリに手渡した。さらに、ダルの育成プランも固まった。ダルはハルカと共にニャルマル商会の料理部門へ入り、日本風の調味料やレシピを開発する。これが成功すれば、商会と俺たちの資金源は盤石になる。
「転生者の知識をフル活用するんだ。醤油、味噌、米……全てをこの世界に再現する。俺たちはただ強いだけじゃなく、富も支配する」
最後に、通信魔道具を手に取る。
「シャルさん、諸々の報告と依頼だ。これから俺たちは、魔族のマロンを狩りに行く。万全の準備を整えてくれ」
通信の向こうから、シャルさんの頼もしい声が返ってくる。
「承知しましたにゃ。皆さんの復讐、必ずや成功させてみせますにゃ」
宿の窓から王都を見下ろす。魔族の気配が、王都の闇に潜んでいるのがわかる。俺の左にはペロ、右にはダル。エリとハルカも戦闘準備を整えている。『魔抜け』たちが運命を塗り替える。その準備は、整った。




