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Garage Inc.  作者: 鳴海 酒
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50/50

ルーデウスについて思うこと(ネタバレ注意)


 私はいつも執筆中にyoutubeで音楽垂れ流すことが多いのですが、最近は無職転生の考察動画やらが流れてくることが増えました。アニメのせいですかね?

 昔から好きな作品なので、ああ、こういうのあったよねー。と思いながら見てたら、次にまたおすすめを表示されて、いや、ちょっと待て、時間が無くなる!ってなってます。


 でも実は私、無職転生はとても好きな作品ではあるのですが、転生モノとして見たときに気になるところがありまして。

 ファンタジー物として見るときは「おお、すげえ」と思いつつ見るのですが、ふとした瞬間にそのことが頭をよぎり、現実?に引き戻されちゃうんですよね。


 というわけで、今回はそのお話です。



■人は、決意だけですぐに変われるのか?


 転生前のルーデウスさん(これ、名前はたしか明かされてませんよね?)は、34歳ニート引きこもりという設定でした。

 高校1年生のころから引きこもっていたそうなので、引きこもり歴は約18年前後でしょうか。

 彼は自分のことを、クズ人間だと称しています。クズというのは主観的な表現なので、人によって印象は変わるとは思いますが、少なくとも自己評価がかなり低いことはわかります。

 また、プロローグではかなり詳細に、34年間のエピソードが書かれています。主観的な話だけでなく、実際の行動についてもです。

 詳細は割愛しますが、普通はあまりやらないであろうこと、他人に対しての迷惑行為、それどころか明らかな犯罪まで含まれています。

 他責志向の部分も見えますが、ここはまあ、いいでしょう。独白ということを考えると、私はこれくらい普通だとも思いますし。


 とまあ駆け足で紹介しましたが。

 実際にお会いしたことはないのですが、少なくとも開示されている情報からは、あまり褒められた人物、お付き合いしたい人物には思えません。


 このようなクズ人間だった彼ですが、異世界にルーデウスとして転生してから一念発起、新たな人生を頑張る、というお話です。


 ……いや、待て。

 人間ってそう簡単に、変われるのか?


 転生直後のルーデウスさんは、前世の記憶をかなりはっきりと持っています。性格とはそれまでの人生の積み重ねですから、記憶を引き継ぐ以上、性格も引き継ぐと考えるべきでしょう。

 私が読んだ限り、彼は少しずつ変わったというより、突然人が変わったように(いや、比喩ですよ?)思います。

 そしてもう一つ。その変化をずっと維持継続できていることですね。どちらかといえば、こちらが私には引っかかりました。


 注意してほしいのが、彼が第二の人生を頑張ろうと決意したタイミングですね。年齢的には、1歳未満らしいです。10か月くらいですかね? まだ赤ん坊ですが、椅子によじ登れるって、意外と成長早いのかな? まあ、そこはいいんですが。


 彼が「今度は頑張ろう」と決心したのは、自身が転生したことに気付いたからではありません。

 転生先が、剣と魔法の世界であることを確認し、自分が望む世界であることを知って初めて、「頑張るぞ」と意識したのです。


 私がここで気になっているのは、2点です。

 まず、剣と魔法という、いわばご褒美を提示されて初めて頑張る気になったこと。

 動機としてはよくあるパターンですが、これは報酬が滞ればやる気も落ちるのが普通です。

 まあ皆さんご存知の通り、実際には彼は、魔術の才能をメキメキ伸ばしていきました。ですが、幼少期に地味な訓練を続けている間、モチベーションをどう維持していたのかは気になります。


 それと、この決意が心の中だけで行われたこと。これは意外と大きいと思っています。

 彼のように、人が変わることが珍しいとは言いません。ただ、そんなに簡単なことでもありません。

 よくあるのが、何らかの大きなイベントの前後で、「君って人が変わったよね」となるパターンですね。

 この時、ルーデウスにとって外的なイベントは起きていません。あくまでも自分の意識の中だけの切り替えになります。

「決意を口に出す」というのは、それを補完してくれる、それなりに意味がある行為です。

 それらも無しに、変化を「長期間維持継続できたこと」が、私にはすんなり飲み込めないのです。


 そもそも人間が変わる時というのは、大抵は波のように行ったり来たりしながら、少しずつ変わっていくものですからね。そのブレを飛ばして、パッと変化しきってしまったことについての違和感が、ずっとモヤモヤと付きまとっているわけです。

 


■彼の体感時間について。


 皆さんは「ジャネの法則」ってご存知でしょうか?

 子供時代の一年と、30歳の大人が感じる一年では、同じ一年間でも大人のほうが早く過ぎるように感じるってやつですね。

 例えば10歳の子供にとって、一年間は今まで生きた1/10ですが、30歳の大人にとっては1/30です。

 加えて、子供のほうが新しいことに出会いやすい。大人だと慣れてることばかり、変化に乏しい、とかいうことも関係しているかもしれませんね。

 まあ、それはいいとして。


 ルーデウスさんは34歳の時に転生して、0歳になりました。

 ジャネの法則は、それまで生きてきた累積年数が関係します。つまり記憶を引き継いだ関係上、彼の体感時間は34歳時点からスタートすることになります。


 ロバート・I・レムリッチさんという人が、体感時間の速度を計算式で表してます。今回はこれを使ってみましょう。

 【体感時間=1/√年齢】という計算式を使い、0歳から80歳までの体感時間を、グラフにしてみました。

 青が、彼の本来の人生の体感時間速度。緑が、ルーデウスとしての速度です。


挿絵(By みてみん)


 これを見てわかるように、一番大きい差は、20歳までの時間の密度ですね。

 うかうかしてたら、あっという間に幼少期は終わってしまいます。


 AIにお願いして、ちゃんと計算してもらいました。(ちゃんと申告できる私!)

 数字が嫌いな人は、ごめんなさい。


 体感時間は現実の時間とズレがあるので、そのまま比較はできません。

 先ほどのグラフを参考に、まず「普通の人が80年生きたときの累積体感時間」を、【80体感年】として基準とします。

 この場合、普通の人が20年生きた場合の体感年数を計算してみると、【40体感年】となります。


 体感時間で言うと、20歳で人生の半分が過ぎている。みたいなことを聞いたことありませんか? なるほど、計算と一致しますね。 


 次にルーデウスです。

 ルーデウスは74歳で生涯を終えますが、ルーデウスの74年間は、彼にとって何年に感じたのでしょうか。

 計算すると、たった【42.5体感年】になりました。普通の人の約半分で80年を駆け抜けているわけですから、もしかしたら彼は「なんか老けるの早いなあ」なんて思ってたかもしれませんね。


 さて、ここでちょっと考えてみてください。さっき、「特に違うのは20歳までの密度」って話をしたじゃないですか。

 ストーリーで20歳時点ってなるとどこだろう? と思って確認すると、すでにオルステッド戦は終わり、シーローン王国でごたごたが発生してるあたりでした。

 ……けっこう進んでますね。


 20歳までの彼の体感時間は、なんと驚き、【11.3体感年】です。通常の約半分……ではありません。

 普通の人は0歳から20歳で【40体感年】を感じているわけですから、それと比較すると、なんと約4倍近いスピードで大人になっているわけです!

 赤い彗星とか、サラマンダーよりも、ずっとはやい!ですね。

 もしかしてルーデウス、めっちゃ生き急いでません!?


 もちろん体感はともかく、実際には一時間は一時間ですし、一ヵ月は一ヵ月です。

 子供時代のルーデウスは、「なんか一年が過ぎるのが早いなあ」と思いながら過ごしていた可能性が高い。その程度の話です。

 それでも、記憶の定着や性格の改善について、デメリットであることは間違いありません。

 特に私が危ないと思うのは、「ちょっとさぼったつもりが、あっという間に時間が過ぎている」という点ですね。



■で、まとめると。


 ルーデウスは二度目の人生の初期に、人生を変えようと意識し、実際にそれは成功しています。

 環境要因としてプラスの要素が多かったことは、書いておかないと不公平ですね。

 魔術の練習による成功体験の積み重ね、両親始め周りの人の教育、シルフィやエリスとの出会いなどなどです。


 ただ、それらを含めてもなお、私の意見は、

「そう簡単に、彼が人生をやり直せる(た)とは思えない」です。


 このことは私が無職転生について触れる際、今後も小さな違和感として常に残り続けるでしょう。

 ですが、例えば『無職転生』が単なる(転生のない)『ルーデウス物語』だった場合、やはり物足りなさを感じたのではないかとも思います。



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