4:決戦! MΘNΘCERΘS 中盤戦その1
2016/09/08 5:28 序盤戦に合わせて、中盤戦の1回で出そうとしたんですが、1万文字超えたので断念。何卒よろしくお願いします。設定上、まだ摘めていない所があります。御了承下さい。
「ザザッ―――■モノモノモニョモギョ、モノモギョモニョモニョニョ……」
IME入力のくせに、何故か噛み噛みな宇宙服。
可愛らしく舌っ足らずな、音声ライブラリが、一角獣の注意を引く。
「ザッ―――ワルコフは、しなくていいのっ! 作戦狂うだろっ! さっさとソレ並べてくれ!」
宇宙服は制式敬礼をして、■アイアイサーとか言って再び地面へかがみ込む。
足を止めていた一角獣は、再び、ゆっくりと、うろつき始める。
藍色の毛皮の表面を、細かな放電が伝っていく。
「ザッ―――そして、オマエはさっさと、始めろコウベ!」
サイボーグは美少女に指を突きつけた後、自分の手足を注視する。
『右手アタッチ換装小型銃 装弾数 1/1』
『右前腕部アタッチ換装小型銃 装備数 3/3』
『右上腕部アタッチ換装小型銃 装弾数 2/2』
『右肩アタッチ換装小型銃 装弾数 4/4』
『左手アタッチ換装小型銃 装弾数 1/1』
『左前腕部アタッチ換装小型銃 装備数 3/3』
『左上腕部アタッチ換装小型銃 装弾数 2/2』
『左肩アタッチ換装小型銃 装弾数 4/4』
『胸部格納部アタッチ換装小型銃 装弾数 13/13』
『腹部アタッチ換装小型銃 装弾数 16/16』
『腰部アタッチ換装小型銃 装弾数 7/7』
『背中アタッチ換装小型銃 装弾数 14/14』
『右太股アタッチ換装小型銃 装弾数 4/4』
『右脹ら脛アタッチ換装小型銃 装弾数 2/2』
『右踵アタッチ換装小型銃 装弾数 1/1』
『左太股アタッチ換装小型銃 装弾数 4/4』
『左脹ら脛アタッチ換装小型銃 装弾数 2/2』
『左踵アタッチ換装小型銃 装弾数 1/1』
『頭部アタッチ換装小型銃 装弾数 1/1』
ビュワビュワビュワワワワッ!
映像空間の中のサイボーグが、HUDで塗りつぶされた。
「うわゅっ! ……きっしょいなあ、……鋤灼はん」
驗の体の動きに追従して、複雑に蠢く残弾表示。
「ほんと、煩いわね、これ消せないのかしら?」
「映像空間だとぉ、強制的に見えてぇしまうわねぇー」
「これ、放っときゃ消えるんじゃねえか? 前に、重装備な連中にポイントしちまって、HUDだらけになっちまったけど、確か、すぐ消えたっつか……」
「刀風君ー、正解ー! 全員の複製主観で表示し尽くしたら、あとは消えない場合でも、アイコンと残弾数だけに、なると思いまぁす」
しばし無言で、映像空間を見つめる一同。数秒後、刀風の言うとおりに、映像空間の中のサイボーグが再び姿を表した。まだ、体表面に小さく表示が浮かんでいるが、これなら、観戦に支障はない。
映像空間の中で、ピタピタSFコスに身を包んだ美少女が、ナックルガードを片手だけ装填する。
そして、驗ボーグを恨めしそうに振り返った。
「ザザッ―――やれ! 我慢しろ! それに今喰っただろうが!?」
自分の腕の武器弾薬スロットを開け閉めしたりしてた、シルシボーグが、顔を上げて、命令口調で命令した。
一歩前にでる美少女。
僅かに見える顔の輪郭から、苦悩の表情を浮かべているのがわかる。
一角獣は、なぜか無造作に、一歩近寄って来た。
意を決したように、即座に美少女は、スロットから、何か平べったい物を出して、自分と一角獣の間に放り投げた。
「ザザッ―――うぅーーーー、勿体ないっ!」
ボイルした烏賊のような袋の形。
その烏賊そっくりな、同じ特選おやつに囓り付く刀風。
あっ、これ旨ぇー! 中にイカスミで炊いた飯が入ってる。
えぇっ!? それはぁ、手が込んでるわねぇー。
ほんとやなぁ。……ええ仕事やなぁ。
美味しそう! あたしの”手羽先”と交換しなさいよ!
んだと? ふざけんな! ああっ! 頂いたわよ! 手前ぇー! 返・せ・よ!
映像空間越しの喧噪に、目尻を下げ、口の端を上げる少年。
カシュ!
その左脇腹の辺りへ、細い補助腕が飛び出す。
背中の武器弾薬スロットから、小さな拳銃を取り出したのだ。
この流れるような補助腕の動作も、環恩調整の、VRHMDの恩恵だが、誰も気づかない。
一角獣が、一呼吸、足を止めただけだ。あるいは一角獣は、低レベルなサイボーグプレイヤーが、一流のトップランカー並の、動作を見せた事に、気が付いていたのかもしれない。
段ボール質感の地面に引かれた、引っかき傷へ両足を揃えて立つ。左脇腹に突き出された、超小型の単発銃を右手で引き抜く。
シャコンとスロットへ戻る補助腕。
再び映像空間に、釘付けになる『VRE研究部』一同。
なぜか、その周囲が騒がしくなっている。
驗達が映し出されている映像空間の上部に、何か小型のアナログ放送アンテナのような物が突き刺さっている。
そして、環恩達がいる、屋根の付いた休憩所の、横。
かなり広い、タイル張りの広場に、巨大な映像空間が映し出されていた。
それは、驗を映し出している映像空間の複製のようで、周りに群がっている、多種多様な姿のプレイヤー達が、鋤灼驗の一挙手一投足に注目している。その手には、特選おやつが完備されている。皆、観戦する気満々である。
『プレイ初日(LV0×3)パーティー VS レアボス”一角獣”(LV52)! 一大決戦中継中!』と、立体的な手書きのフォントが浮かんでいる。
その下には、『観戦料:超小型銃(単発でも可)1丁。または、特選おやつ2個。』と、書いてある大きな透明のケース。
今にも花が咲きそうな、まるまると肥えた”花の蕾”頭が、着流しの袖から、小型拳銃を取り出して、透明なケースに投げ入れる。
蕾の頭上に文字が浮かぶ。
『スクランブル解除』
ピロン♪
彼? の主観に、今出現したであろう、大きな”映像空間”を見上げ、蕾男は綺麗な大輪のひまわりの花を咲かせる。今度は着流しの懐から、”特選おやつ”を取り出して、観戦に参加した。
「なーんか、結構ヒト増えてるけどいいのこれ?」
海賊剣士が、体育座りする向日葵男を見ながら、不安げな声を出す。
「いーんじゃねぇの? トップランカー同士の有料PVP戦配信なんて、珍しくも無えんだし」
「そおどすなあ。……ちょっと……怖いけど、……単発銃がこの決戦の……肝心なとこで、……こうでもせえへんと……短時間で、計86丁も……集められへん……やったろうしなあ」
作戦に必要な、|超小型拳銃(装弾数1/1)を、短期間で調達するために、驗本人が「配信しよう」と提案したのだ。
大抵のプレイヤーならアイテムボックスに、数個は入っているソレ。提供してくれるヒトは多かった。
金庫と装備スロット以外では、スタック出来ないせいで、インベントリを知らぬ間に圧迫する厄介者なのだ。そこそこ高価なのも煩わしさに拍車をかけている。今回は単発のものを必要としていたが、あえて、装弾数4/4までの物を除外しなかった。要らなさでは単発がダントツだからだ。案の定、開始5分で環恩達が、持ってたものと併せて、86丁が揃った。
すぐに看板と、納品箱を撤去しようとしたが、何かのイベントと勘違いされたのか、周囲に観戦希望者がどんどん集まってきたため、揉めるよりは良いかと放置することにしたのだ。
驗少年の返答はこうだった。
「えーっ? いーんじゃなぁい? うふふー」
女子か! と禍璃に突っ込まれながらも、少年は、せっせと、超小型銃に自動的に弾丸を込めながら、自分の体の中に一つ一つ装填していく。
ちなみに弾丸はワルコフ提供だった。今まで呑み込んだ各種の弾丸が山のようにあって、システム上、数値化されてしまうので、消化できずに困っていたという話だ。




