↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ワルコフに気をつけない  作者: スサノワ
10:VRーSTATI◎N

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
43/153

10:バックヤード1

2016/07/09 17:39 章立ての仕方を模索中です。よろしくお願いします。

 ピピッ♪

 何の変哲も無い壁から電子音。猫じゃらしに反応する子猫のように、一斉に振り向く、VRE(エンジン)研究部一同。

 壁の一部が、スッと上へ持ち上がる。人がゆったり通れる大きさの縦穴(通路)から、巻き毛美人がモデル張りにウォークイン。鍔広(つばひろ)の魔女帽子、クネクネ折れ曲がる魔法の杖、空気で膨らんだ柔らかそうな人工の羽根に、ミニスカートとおそろいのブーツ。彼女は複合アミューズメント施設、”VRーSTATI◎N”のフロアスタッフである。イベント時にはREVOLVER(パワード)ーSWORD(スーツ)のゴツい着ぐるみも居るが、今日は見あたらない。


 まるでPLOTーAN(プロトたん)の様な巻き毛美人は、テーブルからじっと見ている、不審な客(学生+社会人)に嫌な顔一(ひと)つせず、「いらっしゃいませ」とにこやかに挨拶した。

 巻き毛(プロトたん)さんは、魔法の杖を逆さまに持ち、床の1カ所をなぞり始めた。どうも、クリーナーが仕込まれているらしく、床はピカピカに磨き上げられた。唖然とする一同。一番近い位置に座っている驗(シルシ)が、なんとか声を絞りだした。


「……永久(えいきゅう)パ……じゃなかった!……し、白焚(シラタキ)さん?」


「えっ? どなた? あらやだ!? 講師先生と、愉快な生徒さんたちじゃないですかー!」

 やーだ、もう! 駄目ー! 見゛・な゛・い゛・でー。と慌てて太ももを手で隠す、実在型PLOT-AN。つまり、スターバラッド公式メインヒロインのコスプレをした白焚(シラタキ)女史、その人であった。女史は、しばらくジタバタした後(のち)、ヤケクソ気味に、手にしたマジックワンド(フロアクリーナー)を構えて、「き、昨日ぶりですわねー」とワルコフみたいな科白を口にした。


「……おい、鋤灼(スキヤキ)、昨日と、別に変わらねえよなあ?」

「ひざ丈の問題じゃなくて、生地の素材が問題なんじゃねえの?」

「お、そっか、朴念仁のお前にしちゃ冴えてるぜ」

「おれだって、やるときはやるもんだろ?」

 ガシーン! 少年達は腕をクロスさせた。

 禍璃(マガリ)はジト眼で、少年達を見据えたまま、ため息を付いた。



   ◇◇◇



「―――すると、対戦ゲーム筐体1セット(2基)と、量子サーバー”6基(半クラスタ)”の無制限使用権(プロダクトキー)と、フルダイブVRデバイス3台、が、欲しいと……?」


 禍璃(マガリ)が「それ、私の飲みかけ」と止めるが、手探りで缶をひっつかんで一気に飲み干す女史。おそらく、無意識に普段の仕事中の感覚で、手元にある飲み物をあおってしまったのだろう。

 環恩(ワオン)から借りた、厚紙のリストから目を離さない。空になった缶を、背後を見ずに、後ろ手に投げた。缶は、缶入れの丸く斜めのスリットに、一直線に飛び込み、中に入っていた別の缶と当たって、カァーンと軽い音を立てた。おーパチパチ。湧く部員一同。

「あら? あららら? 私、誰かのジュース飲んじゃったかしら?」

 禍璃(マガリ)が手を挙げ、「どうせ、酸っぱくって、飲めなくて残して置いたから」と禍璃(マガリ)。

「……そう」と女史。

 そのまま、沈黙が続き、驗(シルシ)のデータウォッチの秒針代わりのドットが180度(30秒)経過。


「どーやっても、ちょっとだけ、ポイント的にオーバーしてしまいますねえ」

 流石、システム管理者、この状況にももう、馴れたようだ。お祭りのようなコスチュームを通り越して、ピリッとした素の顔がのぞく。

「は、はい。なのでぇ、どれを貰おうかぁ、もう一度ぉ、部員全員で相談(絞り込もうと)してたぁトコなんですぅ!」


「部員って? なにか、ご活動なさってるんですか?」

 顔を上げ、高級厚紙を環恩(ワオン)へ返却する、セクシーな白焚女史(プロトたん)。


「昨日ぉ、設立申請したばかりですがぁ、”VRE(エンジン)研究部”というのを、ここにいる全員で立ち上げましてぇ」


「VRE(エンジン)研究部?」

 巻き毛の奥の表情が、再び冷静で冷ややかな色を帯びる。

「「「「はい」」」」


「そーですかぁ。んーなんとかしてあげたいところなんですがぁ……」

 ピピプルルルル♪ ピルルルルッ♪


「チョット失礼……あ、はい、私です、……はい? ……了解しました。……じゃー、どもー、ピッ♪」

 背中を向け、会話を済ませ、再び、向き直る、メインヒロイン(PLOTーAN)系女史。

「大変失礼いたしました」

「あのぉ、お忙しいのにー、引き留めてしまってぇー、大変申し訳有りませんでしたぁー」

「「「でしたぁー!」」」生徒も慌てて、講師に倣(なら)う。


「いえ、全然忙しくはないです、ほんとに。だって今日、私、非番なんですよ」

「あらぁでもその格好(・・)ぉ……?」

「ここのバイトは趣味でして、まあ、実益もかねてはいるんですが、市場調査の一環と言う意味でー」


「そりゃそっか」「システム管理者(シスアド)が、床磨きまで、やってる余裕ねえぜ」

「いやあ、最近は自動化(・・・)も進んでまして、肩書きと、コツと勘所さえ間違えなければ、結構時間も取れるんですよ~」


「でもぉ、その時間をー、こうしてぇ、市場調査に充てちゃってたらぁ、普通に大変なんじゃぁ?」

 保守管理の大変さが解るためか、環恩(ワオン)が本気のトーン(声)で心配している。


「……はい。……体力的にはともかく、同年代の女子と、お酒飲みたい」

 その独白は、真に迫ったもので、目尻に涙まで浮かんでいる。

 女子(・・)だとっ!? 訝しがる驗(シルシ)少年の背中を尖らせた握り拳でグリグリする禍璃(マガリ)。

「痛って! なにすんだ!?」

「今のは、鋤灼(スキヤキ)が悪いぜ」

 わざわざ、長身を生かし、最大限に拳を突きだし、グリグリする刀風(カタナカゼ)。

「痛って! 刀風(カタナカゼ)、お前は止めろ、マジで骨折れっから」


「ふむ。本当に偶然なんですが、昨日お渡しした目録(カタログ)って定期的に更新されてるんですが、前期の在庫を処分しても良いことになりまして」

「あら? さっきの電話?」

「はい、責任者(私)が現場にいるうちに、全部済ませちゃおうっって事みたいで」

「あー、解ります。私もぉー、VR専門なのに、よく、データマテリアル広告の更新とかさせられますもの」

「どこも、同じなんですねー」「ねー」


 意気投合している。


「じゃあ、規格的に若干、古い物ばかりになりますけど、6掛け(4割引)のポイントで同等のお品が有るかもしれないので、在庫の中から探してみますか?」


「え? 願ったりかなったりですけど? みんなどうする?」


「や、俺たちも、そりゃ、有り難いけど……」

 驗(シルシ)少年と、耀次(ヨウジ)少年は、尖った魔女帽子に露出の多い格好の白焚(シラタキ)女史を一瞬見て目をそらす。


「あらあ? 私(わたくし)、嫌われてしまいましたか?」


「違いますよ、彼らは、そのスタイル(体の線)が良く分かる、コスチュームにドギマギしてるだけです」

 経緯(いきさつ)を知っている、禍璃(マガリ)が助け船を出した(アシスト)。


「あらあらぁ? ほんとですかぁ! キャーッ! 私も、まだまだ捨てたものじゃないのでしょうかーっ!」

 両頬に手を当て、飛び跳ねる白焚(シラタキ)女史。


「あーなんか、生きる勇気が涌いて来ちゃったー」

 女史は両手を顔に当て、天を仰(あお)ぐ。

「じゃあ、近くに倉庫があるので、早速行ってみましょう」

 スタスタと歩いていき、自分が出てきた壁に手を当てる妙齢の魔女っ娘。


 ピピッ♪

 再び、何もない壁の一部が持ち上がり、隠された通路を出現させた。

 通路を少し行くと、通路の幅はそのままで、高さが少し高くなる。

 突き当たりのT字路には、連結された長椅子型のコミューターが停止していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。