9:優等生と小鳥とブラックボックス、その9
2018/07/23 13:52 表記調整。
2016/07/01 15:33 暫定気味です。よろしくお願いします。
「まず、あなた達のぉ、バトルレンダ、限定的に使える余剰リソースのぉ種類ってなぁにー?」
カタカタタ
■私のバトルレンダは量子処理系介入デス_
「ピチュッチチチッ?」
「わかんないよ? そんなの小鳥もわかんないって言ってるよ」
「なんだよ、教室で、難しいことペラペラ喋ってたじゃねーか」
と驗。
「だって、アレは、頭の中のおーーーーっきな紙に書いてあっただけだもん」
とうとう観念したのか、背筋直立魔神が重い顎を動かし、たこ焼きを食む。
そして、禍璃を睨み付けながら、会話に参加する。
「モグモグモグモグ……ゴクリ……そういや、おまえ等、なんで、鋤灼がパントマイムみたいなのやっただけで、撃破《HPゼロ》されて、再生したんだ?」
■ブラックボックス部分ガ起コシタ強制戦闘態勢ナノデ、強制発動条件ヲ解消シタコトデ、戦闘状況自体ガ、リセットサレタト思ワレマス_
「あのー、パントマイムがぁちゃんと効いてたって事みたいねぇー、鋤灼君ー」
手のひらを、上下にワサワサと、面白く動かす美人講師。
「鋤灼のパントマイムって結局何だったんだ!?」
「なんか、リングアイコンが出たっぽいんだけど、そこには何にもセットされてなかったんだよ」
■リングアイコン? 私のバトルレンダとは違ったシステムですね_
「アタシのは、アイツ等とかに出くわして、ギャーッてなったときに、勝手に出るから、シルシの参考にはならないよ」
「そうだな、コウベは天然……いや天才だな。で、アイツ等ってのは、初期フロアの底で出くわした、エリンギを粉砕してガメてた、馬鹿でかい土偶みたいな奴らな」
驗は憎しみに満ちた顔芸を披露する元ハンサム少年と、嘲りに満ちた顔芸を披露する元童顔美少女へ、”コウベエンカウントイン奈落”の補足をした。
自分、刀風、自分、刀風と、交互に食べたり食べさせたりを続けていた禍璃が、アンタも食べる? とたこ焼きを驗にも突き出す。
「俺は、”フルト”が有るからいいよ」
と少年は串に刺さった、赤と黄色で彩られた妙に長くてカリカリに焼かれたソーセージをかじってみせる。
そお? と言って、禍璃は再び、刀風の餌付けに戻った。
フルトォ♪ というのは、カフェテリアのマスコットキャラの口癖である。学園内の至る所で流れているCMである。因みに、3本150円という価格に見合わない大きさで、これ目当てにやってくる客も居るくらいだ。
「ピーチュチュピィー♪」
小鳥は羽根の下から、ゴミ、いやよく見れば、4つに折り畳まれたメモを取りだし、ボスである笹木講師に差し出す。
だが、今の笹木講師は、VRデバイスもなければ、データグローブもない。トレードマークのARメガネも掛けていない状態である。
「指先サイズのマニュピレートは難しいわねぇー」。
笹木講師がコウベに懇願する。
「コウベちゃぁん、それー、開けてみてくれるぅー?」
小鳥からソレをひったくった小さい手。文庫本サイズ相当のメモは、開かれA4サイズ相当になる。
ソレを環恩に向かって広げて見せた。
『小鳥へ。君がピンチの時はぁ、米沢首に”危ない”って3回言って切り抜けてください』だってぇー。
「ンギャッ!? あの、”緊急警報《危ない×3》”ってメモ書きに書いてあったの!?」
立ち上がり小鳥を睨む、卓上の優等生。
一瞬の隙を突き、小鳥が特選おやつを、嘴で千切り取った!
「コウベちゃん達はぁ、いつから一緒に居るのぉ?」
「最初からだよ!? ねーっ! コイツめっ!」
返せ-! ピヒュイ♪と、ドタドタと走り始める小鳥騎士一式。
「じゃ、小鳥の”緊急警報”ってコウベの、バトルレンダ起動承認なんじゃねえの?」
コウベが落とした小さいメモ書きを風で飛ばないように、ペンで押さえながらシルシの話に耳を傾ける環恩。画素対応レベルを問わず、多目的時計の側では、強制的に風向計の詳細なオープンデータが適応されてしまうからだ。
「たぶんー、鋤灼君の言う通りねぇー」
激しくじゃれ合う小鳥騎士一式に全員の視線が注がれる。
「モグ……そんな仕組みになってんのねアンタ達。いっつも一緒にいるとは思ったけど」
と最後の一個を、自分の口に入れた禍璃。
「モグモグ……設計師的には、”小鳥”優先っぽいな」
首を縮め、頭上のコップを難なく取る刀風。
氷の溶けた冷水を一気に飲み干し―――冷てーっ! と頭を押さえ、禍璃を睨む。
「お前ー、1個多く食いやがったな……」
自分の食べたミルフィーユの皿と環恩の平らげたパフェの器を重ね、トレーの上に置く禍璃。
なーんーのーこーとーかーしーらー。刀風が落とした割り箸も拾って、トレーに乗せている。ソコだけ見れば、とても気の付く、良く出来たお嬢さんに見える。
「どうも、この”設計師:たこやき大介”ってのも、フルダイブVRのブラックボックス部分に一枚も二枚も噛んでそうな気がするんですが……」
「そうねぇー、でもぉ―――」
「何となくだけど、ようやく見えてきたか? ……モグ……そうでも無いか?」
シルシは残ってた最後のフランクフルトに齧り付く。
「―――じゃ、ワルさんはぁ、誰に承認してもらってたのぉー?」
はっとした顔でテーブルを見る禍璃。
カタカタカタカタッタンッ
■仮想ノ管理者ヲ作ッテ、準管理者権限ヲネツ造シテイマシタ_
「思いっきりグレーね」
腕組みをし、ドカリと座り足を組む連邦保安官のような禍璃。
■デモ、1体作ルノニ、36時間モカカッタノデ、『余剰リソースヲ直接、パッケージ出力スル方法』ヲ編ミ出シマシタ_
トレーに発泡スチロールの皿を乗せた驗が、何かに気づく。
「……それ、あの、椎茸かっ!?」
■ゴ明察_
「バトルレンダ無くても、ハッキングは出来るのね? さっき健康管理フレームにー侵入してたもんねー」
偶然だろうが、外灯の柱に付いた多目的時計の、外気温が僅かに下がる。
■ハイ通常ノ小手先ノ、ハッキングハ趣味ノ仮想電子戦ノ範疇デスシオ寿司、オ手ノ物デシタシー_
■仮想電子戦デ危険回避ハ出来タノデ、コンナニ大キクナリマシタァ_
「伊達に、最古参のWNPC名乗ってないわねぇ」
しみじみと言った笹木VR専門家。
両手を広げて見せる宇宙服を見て、シルシは声のボリュームを下げて言う。
「なんか、また会話の端々から、ふざけた感じが、滲み出てきてませんか? 一端、お開きにして、こいつ等開放してやった方が良くないですか?」
「ふむ。じゃぁ大体の所は判りましたぁー! 取りあえず、ワルさんの広範囲に及ぶバトルレンダ使用のハッキングは今後、部員プレイヤー2名の了承を得ること。良い?」
■イエス、ミス環恩_
「コウベちゃん達はぁ、様子見としまぁす」
ほっと胸をなで下ろしているコウベと小鳥。もうおやつは無く、喧嘩する原因が無い様子だ。
「余剰リソースってヤツが、貯まりっぱなしにしたとして、なんか問題あんの?」
スグ横の、トレー置き場に食器とトレーを置いて帰ってきた禍璃が、追加の疑問を投げかけた。
「髪の毛が伸びすぎて絡まるでしょー。あと、切れば良いんだけど、初期フロアには美容院ってないしー」
などとクネクネとしながら変な声色で、蝶結びのトコでブツ切れた髪をほどくコウベ。
「じゃあー、コウベちゃんの問題にはぁ、私が対処しまぁす。あとぉ、小鳥はー? 何かあるぅー?」
ピチチュイッチチチッ♪
「小鳥にはバトルレンダ無いから、問題無いけどー、オヤツガ欲しいですー♪ ―――だって、生意気! 全てのオヤツはアタシのモノなの! 決まってんの!」
「決まってないぞー。じゃあ、ソレは俺が何とかしてやろう」
シルシが指先を小鳥に向け、突き返す小鳥。
「「ワルコフは?」」まるで図ったように、重なる刀風と禍璃。マネすんなとガップリと掴み合う。一歩も引けを取らない禍璃。むしろ刀風の額に汗が浮かぶ。ググググッ!
■私ノ場合ハ、自身ノ全長ガ増大シマス_
■縮尺的ニ、初期フロアニ乗ルコトガ出来ナクナリマス_
「何だよ、最後に大問題来たな!」「ほんとね!」
片膝を突きながら、叫ぶ刀風。ググググッ!
靴を脱ぎ、イスに登って、最上段から見下ろすように腕力を振るう禍璃。ググググッ!
「お前等、ほんと、仲良いなー! ……あんまり羨ましくはねえけど」
驗は温くなったお冷やを飲み干し、立ち上がる。
「なんだと!?」「なんですって!?」
そう言う種類の組み体操みたいになってる2人の怒声。
驚いたかのように、小鳥騎士一式が横縞のノイズとともに消えた。




