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ワルコフに気をつけない  作者: スサノワ
6・5:ワルコフ対自動屋台

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24/153

6・5・8:ワルコフ対自動屋台8

2016/11/20 22:18 色の表記を統一。

2016/05/24 2:43 ちょっと調整したら、文字数が倍になったので、6・5・7と分けました。よろしくお願いします。

2016/05/22 16:33 超難航。ワルコフ爆誕が、見えてきそうな。よろしくお願いします。

 俺は、禍璃(マガリ)に引っぱたかれたデコを押さえながら、”自動(ディナー)屋台(ベンダー)”の方を確認。

 まだ、先生達は、コチラに背を向けている。危なかった。騒ぐなよな-。


 先生は、後ろ手に、何度も緩衝エリアの真ん中あたりを指さしている。

「そういやさっき、先生、何か見てたな?」

 俺は簡易AR眼鏡を掛けながら、緩衝エリア中央側を、視(み)た。

 俺はたじろぎ、尻餅を付いた。「ぶっぐひっ!」変な声が漏れる。


「おい、笹(ささ)ちゃんに、ちゃんと説明しとけよな。鋤灼(スキヤキ)は兎も角、俺はお前(妹)に興味無えんだからな」

 刀風(カタナカゼ)は、叩かれた仕返しも含めてか、禍璃(マガリ)の二の腕をツネったりしてる。

「いった。なんて事すんのよ!」

 鬼の形相で、つねり返してる禍璃(マガリ)を見てると、とても笹木環恩(ササキワオン)特別講師の妹とは思えねえ。


「俺は兎も角って何だよ、俺も笹木(ささき)に興味無えよ」

 俺もヒソヒソ声で抗議する。


「なによ、アンタ達、随分じゃないの! アタシこう見えても(・・・・・・)結構モテるんですからね」

 自分の鳩尾(みおおち)のあたりに、開いた掌(てのひら)を押し当てる。


「わかった。マジになるな。お前ら(・・・)がモテるのは俺が一番よく知ってる」

 急に、哀れむような視線を、本気で俺に向けてくる2人。

 悔しい。悔しいので、脅かしてやる。


「いいからコレ掛けて、あの辺、真ん中辺り、視てみろ、大声出すなよ」

 と、簡易AR眼鏡をクイッと持ち上げてみせる。


 刀風(カタナカゼ)もAR眼鏡を掛ける。倣(なら)う禍璃(マガリ)。

「ぶわぁムグッ……!?」

「きゃぁムグッ……!?」

 2人の口を俺がバッと塞いだ。そのポーズだけ視れば、さながら、突っ込んできた巨大牛の角(ツノ)を掴(つか)んで、止めた人だ。

 俺も、首(くび)だけ振り返り、もう一度視る。それは、ココがVR(ゲーマー)特区だと言う事を差し引いても、とびきりシュールだった。


 目の前に、急に天気が良くなったみたいに、ピーカンの青空が広がって……いや、あれは青空じゃない。ふつう、青空には、『Dinner×Vender』なんて楽しげな文字(ロゴ)が、でかでかと横並んでたりしない。


 ”自動屋台(ディープ・コピー)”の筐体側面(・・・・)がそびえ立ってる(・・・・・・・・)。幅は何かもう視界いっぱい、高さも電波塔よりも高そう。

 その下で、対比的に、とても小さく見える宇宙服(ワルコフ)が、ちょこまかと何かやってる。あの長い金属棒を突き刺して、おそらく”悪さ(・・)”を、してる。


 ”自動(ディープ)屋台(・コピー)”の脚が見えないところを視ると金属棒で粉砕、じゃなけりゃ、落とし穴、掘ってズドーンと落とした状態なんだろうか?

 更に、よく見りゃ、スラスターを噴射(ふか)し、軽快に動き回るワルコフの背後を付いて回ってるヤツが居る。後ろ髪ツインテの優等生風の美少女が、キョンシーよろしく、カートに乗って直立不動のままフラフラ動き回ってる。


 口を押さえた両手を、そっと離し、ちゃんと振り向く。ワルコフに向かって怒鳴ろうと息を吸い込んだトコを―――

 「ワぶっ!」

 後ろ頭を禍璃(マガリ)にひっぱたかれた。いかん、ワルコフ事になると、どうも我を忘れ気味だ。

 データ・ウォッチの表示盤を弾き、パーティーチャットコンソールへ会話を打ち込む。

 具体的には手の甲でフリック入力。コレはワルコフの使った、謎ハッ(オープン・)キング(チャンネル)じゃないから、もし視られても、”部員”以外には見えない。まあ、システム管理者がやろうと思えば視られるだろうが、建前上は、”理論上宇宙最(ステガ)堅牢(ノ)の暗号通信(グラフ)規格”だ。無いよか100倍イイ。


 シルシ :ワルコフ 何やってんだ!

 コウベ :あれっ!? シルシだっ!! 生きてる!? キャッホーイ!

 ワルコフ:オヤァ? ゴ無事デシタカ!? ソレハ僥倖(ギョウコウ)!

 シルシ :そんなのどうでも良いから! 何やってんだよ!?

 ワルコフ:モチロン、部員ノミナサマノ、弔(トムラ)イ仮想(A)電子戦(EW)デスガ? 何カ?

 シルシ :今すぐ止めろ!

 ワルコフ:ソウ言ワレマシテモ、現在、バトルレンダ、再スタートシタバカリデ、モッタイナイデスワ

 シルシ :多分、ブレたキャラ作りなんて、やってる場合じゃねえぞ!


 ワルコフもコウベも、瞬時に、全文送信してくるから、俺だけチャットに慣れてない人みたいになってる。

 俺の眼前に表示中の、パーティーチャットログを、刀風(カタナカゼ)と禍璃(マガリ)も、顔を付き合わせるほどの近くで視てる。自分でパーティーチャットコンソール開けよって思ったけど、言ってる暇がねえ。

 この状況、恐らく、どう、都合良く解釈しても、システム(シス)管理者(アド)サイドから見て、喜ばしい光景じゃ無ぇー!


 ワルコフは、気ままに、金属棒を、バックパックから取り外して2刀流とかやって、ふざけてる。こうしてる間にも、白焚(シラタキ)女史、もとい、システム(シス)管理者(アド)に見つかるっつうの!


「では、そろそろ、お暇(いとま)しなくちゃ」

 対外向けの、よそ行きだとしても、白焚(シラタキ)女史の優しげな声が逆に恐怖を駆り立てる。


 カツカツン!

 背後でヒールが振り向く気配! もう、運に天を任せるしか無ぇー!

 スススス。俺は一文入力して振り返った!


 シルシ :シスアド来てる


 500円ショップで売ってる、板っぺらみたいな、ちょっとコミカルすぎる、簡易タイプのARグラスをお揃いで掛け、中腰のまま膝をそろえて振り返る、若者三人組。この様(さま)は、加工無しで、コミックバンドか、ロボットダンスチームの宣材写真に使えると思う。


 青春を謳歌し、じゃれつく若者達を、一瞬怪訝そうに眺めた後、すぐに興味をもつ、VR専門家と、自動機械群システム管理者。


「なあにソレ? 今、流行(はや)ってるのかしら? うふふふふ」

 俺と刀風(カタナカゼ)から見れば仇敵だが、向こうは大人だ。

 俺たちは焦燥(しょうそう)と諦観(ていかん)が同時に押し寄せる複雑な感情に押しつぶされる。


 微動だにできず、不甲斐ない。けど有る意味、それが功を奏した。


「なぁにぃ君たちぃ? おバカみたいよぉ? ぷははぁー!」

 ああ、もう先生め。さっき、自分で、”ワルコフのワルさ”を見て慌ててた癖に。

 自分で、こっちに丸投げしといて、フォロー無しか。つか、本気で、ほんの一瞬前の事、忘れてそうだなおい!


 ふと、何かに気づいたように、空を眺めヘッドセットに手を当てる、白焚(シラタキ)女史。

「「「ああっ!」」」

 白焚(シラタキ)女史は非常にもヘッドセットの、AR(拡張)ボタンらしき物を押した。流石に俺たちの挙動で、なにか不振に思ったのかもしれない。

 いや、レンズっつか、ガラス部分が出てないし、単にヘッドセットのモードを切り替えただけかも―――


 一瞬の沈黙。


「な、なあに!? コレは一体何なの!?」

 叫ぶ白焚(シラタキ)女史。

 レンズとか、ガラスとか飛び出てないけど視えてるっぽい。最先端の技術を惜しげも無く使ってるんだろう。先生の魔女帽子(VRデバイス)のバイザーも視界全部を覆ってるわけじゃ無いモンな。


「このでっかいの、どう言うことなのー!?」

 叫ぶ白焚(シラタキ)女史。

 終わった。コレは怒られたあげく、問いつめられるままに、コウベ登場の件(くだり)から、長々と説明するしかねえなー。

 俺は、諦(あきら)め、両脇のクラスメイトと、大きな溜息(ためいき)をついた。


 「君たち、イイね! 造形はまだまだだけど、このウネリと、逆に枯れてない感じ!」


「は? ほめられてる?」と禍璃(マガリ)。

「何かそう聞こえるな」と刀風(カタナカゼ)。


 3人揃って、振り返ってた上半身を、元に戻す。

 眼前には、なんか、養分を吸われたように、つぶれて小さくなってる”自動(ディープ)屋台(・コピー)”。

 小さいって言っても、小振りの体育館くらいはありそうだけど。

 表面が萎(しな)びて、そういう模様の平たい器(鉢)みたいに見える。とても、あれが”ディナー×ベンダー”のディープ・コピー》”だとは気づかねえだろう。

 そして、その鉢に生けられているのは、巨大な巨大な椎茸だ。

 大きくなりすぎたせいか、所々ほつれるように、枝分かれしてて、作りの雑な、松の木のように見えないこともない。

 何かほんと、盆栽みてぇ。あの曲がり具合なんて、ちょうど俺たちの今のポーズそっくりだ……し―――。あ。3人揃って、再び、振り返る。


「そして何より、この、身を挺した、体現(形態模写)」

 偶然、いやんいやんのポーズのまま固まって、くっつき有っただけの俺たちを、指さす女史。イイね♪ イイね♪ イイね♪ ぽん、ぽん、ぽんと、満面の笑みで、肩をたたかれた。


「先生! 実におもしろ……いえ、有望な生徒さん達ですね」

「常日頃からのぉ、私のぉ教育のぉ賜(たまもの)ですぅ」


 あれか! 良く、公園でやってる、AR技術を使った大道芸とか、創作ダンスみたいなモノだと思ったのか。つか、ワルコフめ、とっさに”自動(ディープ)屋台(・コピー)の全養分(?)を使って、謎椎茸を、促成(そくせい)いや、即製(そくせい)栽培しやがった。

 どっと冷や汗が流れる。


 君たちにも名刺をあげよう、と言って懐から、アジュール・ブルーの地色に、白い文字の書かれたカードを取り出す。さっき、先生が貰ってたのと同じヤツだ。

 禍璃(マガリ)と刀風(カタナカゼ)、そして俺にも、それぞれに、作法に則(のっと)り両手で、丁寧に手渡してくる。

 あれ? これ、くっついてたのか2枚ある。

「あの、これ2枚―――」

 返そうと思ったが、女史はさっさと、”自動(ディナー)屋台(ベンダー)”の縁(へり)に、ぴょんと飛び乗ってしまった。ま、いっか。大して重要な物でも無いだろうし、有り難く2枚貰っとこう。


「シルシー! 良(い)いの持ってんじゃん! くれっ!」

 いつの間にか、スグ側に来てた、”PBC(コウベ)” の乗った(オン) ”簡易給仕ロボ(ラジコンカート)”。

 俺は慌ててカートの腕(アーム)から、”PBC(コウベ)”を引っぺがした。

 野良NPCくらい、特に問題ないだろうけど、なんか、”永久パターン”の事もあって、一応用心しとこうと思ったのだ。後ろ手に隠し、角張った(ヨーグルト)瓶に付いたスイッチを切った。

 「何だよー! ドケチか―――」ブツッ。

 何か言ってたけど、ちゃんと切れた。因(ちな)みに、切断中も、制限は有る物の、AR、又はVR空間内部で、連続性を保ってる(元気な)はず。接続先が無くて(オフラインで)も数日は、自身(保存先)のP(パーソナル)B(・ブレイン)C(・キューブ)保有の僅(わず)かな画素(リソース)だけで保つはず。


「もし又、自動機械群(うちの機械達)が、ヤンチャした時は、機械に向かって、名刺(コレ)を提示(・・)してください。最優先で、その自動機械(個体)に(の)、”特権発動し(コントロールを奪い)”ますので」

 なんか、聴き方によっては物騒(・・)なことを、自動屋台(ディナーベンダー)の上から言ってくる。


「あら、”簡易給仕ロボ(カート)”ソコにあったのね。それ、邪魔じゃ無ければ、差し上げますよ。折り詰め運ぶのに使って下さい。非暗号回線(オープン・チャンネル)で、操作できますので」

 よし、女史はコウベに気づいてない。


「え? 助かるぅ。じゃぁ、有り難く頂きまぁす」

 ”自動(ディナー)屋台(ベンダー)”の天板の上の最高級折り詰めを、持てるだけ抱えて、”簡易給仕ロボ(カート)”に移す先生。

 俺たちも慌てて、手伝う。


「飯櫃2号、お手伝いして。保守課の分と合わせて8個、頂いていきます」

 先生と分け方を決めてあったんだろう。”自動(飯櫃)屋台(2号)”は、産業用ロボットの様にアームを動かし、女史の近くに積み上げる。


 俺たちが、”簡易給仕ロボ(ラジコンカート)”へ、積めるだけ積む。全員手にも数個ずつ持って、ようやく天板上の最高級折り詰めが無くなった。


「では、本日はコレで失礼いたします。先生、今度、飲みに行きましょう」

 ガシッウゥンピピピッ♪、6肢が自分で水平を取り、自動屋台(ディナーベンダー)はゆっくりと歩き出す。

 なんか、ラクダみたいねと禍璃(マガリ)が、又、言い得て妙な事をつぶやく。


「はい是非~♪ では、こんなに沢山、ご馳走様です~」

 先生が両手に抱える、最高級折り詰めは4個。上機嫌である。

 俺たちも、先生に習って、手に抱えた最高級折り詰めをチョット持ち上げ、「「「ご馳走様です~」」」と挨拶した。

 ”簡易給仕ロボ(ラジコンカート)”には、数え切れない程、山積みだ。先生が何故かゴム紐を持ってなかったら、とても乗せきれなかっただろって、くらいの山積み。

 先生も給料日前に、身銭を切らんで済んだし、そこそこ良かった気もしてくる。

 と言う事で、取りあえずの問題は、どうやって食べきるかって事を除けば、たった一つだけだ(・・・・・・・・)。


「いくよ! 飯櫃(めしびつ)2号」

 白焚(シラタキ)女史は、まるでラクダのように”自動(ディナー)屋台(ベンダー)”に乗ったまま、モールドから迫(せ)り上がった両開きの扉の中へ入ってく。

 バタン、ピンポォン♪

 ガチンガチンガチンガッチィン。ズゴゴゴゴッゴ、ガッシイイィイィン! 

 モールドが、溶けるように沈み込んで、元の平坦になるのを待ってから、俺は叫んだ。


「ワァルゥコォフゥ! どこだぁー!」


 シィィィィィィィィィィィィィィィィィン!

 さっきまでの騒々しさと比べると静かすぎて耳が痛ぇ!

 くそっ! ワルコフの野郎め! 逃げやがった!


「管理者怖い怖いって言って、どっか行った」

 んコウベ? どうやって確認用(サムネ)の電源入れやがった!?


 ベルト(腰)に下げた”PBC(コウベ)”が無えので、振り返ると、先生が片手で折り詰めを持ち、片手で、”PBC(コウベ)”を持ってた。


 「ひとまずはぁ、無事難局を乗り切りましたぁ、後はアレをどうにかすればぁ、今度こそぉ、作戦(ミッション)終了(コンプリート)でぇす」


 最高級折り詰めの山を抱えた俺たちの前には、巨大な巨大な椎茸が曲がるように聳(そび)え立っている。……どうすんだコレ。

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