6・5・4:ワルコフ対自動屋台4
2016/05/09 11:20 誤字修正&整頓。NPC説明文追加。
2016/05/08 1:20 整頓。よろしくお願いします。
2016/05/06 18:41 (_ _|||) ワルコフ爆誕前に、主人公を取り巻く状況が決壊してしまいました。よろしくお願いします。
どっから持ってきたんだ、あんな拳銃―――
ブブーーーーーッ!
タイムアップ!? 拳銃ぶっ放しても、効果無しか!?
……っていうか、銃声したっけ?―――
バッカアァァァァン! プラカードが真っぷたつに割れた。
さっきのブザー音はタイムオーバーのじゃなくて―――
「YOUR WIN♪」 どこからともなく、陽気な合成音声が流れた。
パパパッパパパーッ♪ 正解をたたえるファンファーレが鳴り終わった瞬間。
自動屋台の横っ腹が、透明の鉄球に押しつぶされたように凹み、ひしゃげた。ぼむん。小爆発のおまけ付き。
ワルコフの引いたトリガが、リリースしたのはカートリッジが内包した運動エネルギーではなく―――『✕』だ。
ワルコフが早撃ちした、円盤に『✕』が描かれてる。もちろん裏側には『◯』が描かれてる。円盤は寸足らずな拳銃から屹立したアームに支えられてる。
ケーキを平らげ、食い物の無くなった刀風は携帯ゲーム機を持って寄ってきた。
カシャッ! ワルコフはトリガを緩めて◯✕円盤を水平に戻す。
「それ、◯✕銃じゃんか!」
ワルコフの、手の中のオモチャのような拳銃を指さし、詰め寄るイケメン。
その響きには聞き覚えがある。たしか2Dレトロゲーの自機標準装備だった気が。刀風は慌てて携帯ゲーム機を操作してる。
「嘘っマジか!? 無くなってる! ワルコフてめえ! 俺の『クイズ! ◯✕ガンマン!』喰いやがったな!?」
喚く筋骨隆々。
さっき、ワルコフが刀風のゲーム機から引っこ抜いて吸い込んだのはソレか。
ワルコフが2個有るトリガを両方とも引き絞ると、『✕』がブブーーーッと跳ね上がった。トリガの一つは跳ね上げる役で、もう一つは◯を✕に裏返す役っぽい。小さなグリップに縦に並ぶトリガは、決して操作しやすいように見えないが、ワルコフは自在に操ってる。宇宙服の腕周りの不自由さと比べると、指先は器用に動くっぽい。
ちなみに、現在では、印刷された『◯』を『✕』に瞬間的に変えることも当然可能だ。どのみちAR空間上のアイテムなんだから、自在ではあるのだが、元のゲームが発売された時代の技術や、デザインにあわせて、出来るだけ再現してるっぽい。 VR空間で扱うアイテムと比べると、AR空間内で扱うアイテムの方が、”再現度”を重視してるって、先生も言ってたっけな。
元ネタがあると、”再現度”に拘るのは分からなくもねえけど、この場合、元ネタってドット絵だからな~。
刀風は、携帯ゲーム機の表示板を、俺達の方へ向けて突き出した。
『ライブラリ/テーブルゲーム』という見出し。リスト左端に並ぶゲームアイコン。その中に空いた一個分の空白と、その列に書かれた文字。
『データがありません。』
「♪~ <(゜ε゜)>」カタタッ 地面にスットボケた顔文字を出すワルコフ。
パシャコン ブブーッ♪ カシャン
パシャコン ブブーッ♪ カシャン
パシャコン ブブーッ♪ カシャン
小躍りしながら、実にタイミング良く、腰溜めで”✕”を3連射するワルコフ。
「……ふざけてやがる。怒って良いぞ刀風」
「フン」
スカッ。宇宙服の脳天に軽くチョップをくれてやろうとした刀風は、一切の触感を受け無かったらしく、バランスを崩した。
「おっと、やっぱ、データグローブ無ぇと無理か。……笹ちゃんの手前、今回は許してやるが、ちゃんとアーカイブで買って返せよなっ!」
先生がすぐ後ろで、見てるからってのも有るだろが、寛容なところを見せるイケメン。よろけた制服の校章が瞬き―――
ズッチャッ♪
『刀風曜次の所持するゲームアーカイブの総数は13本である。
◯か✕で答えよ。』
歪んだ筐体にムチ打って、斜めになりながらも、毅然と、出題する。
しぶとい。自動屋台さん、超しぶとい。
ワルコフは自動屋台を振り返りもせずに、◯✕銃を向け―――
パシャコン ピポォォォォォン♪
『◯』を提示するワルコフは宇宙服のくせに、アクション俳優っぽくて格好良かった。くそう、ワルコフのくせに。
コウベも、ワルコフ文字を視る前に、内容を把握したりしてたから、NPC同士で、行う処理を、一瞬で相殺したり出来るんだろか。具体的にどうすんのか、判らねーけど、対プレイヤー対策として、”ボスクラス・モンスター”が、そういうのをバンバン使ってくるってスタバのパンフに書いてあった気がする。
バガシャァン! 自動屋台の掲げたプラカードが割れる。
「YOUR WIN♪」 どこからともなく、陽気な合成音声が流れた。
パパパッパパパーッ♪ 正解をたたえるファンファーレが鳴り終わった瞬間。
自動屋台の天板の、まだ平らな部分が、透明の鉄球に押しつぶされたように何カ所も凹み、全体が、まんべんなく潰れた。
ヒュゴン。
自動屋台から光が漏れる。
強い光のせいで、影が強く出て、まるで、黒い光が放射されてるみたいだった。
カカカカカカカカカカッ!
カタタタタンッ!
ワルコフが何か文字を地面に打ち込んでたけど、光と影に埋もれて、とても見えなかった。
ズドドドドドドドドドドドドッドドドッガアァァァァァァァァァァァン!
「うっをわ!」「ぬぁーーっ!」
俺たちはあわてて、ARメガネを外した。あまりの大音量のせいで、手に持ってるだけでもズゴゴゴゴゴって、聞こえてくるから、さっさと畳んでスリープ状態にした。
光と炎と噴煙と、宇宙服と確認用コウベが消える。
かわりに地面に印刷品質の文字が表示されていく。コレはホログラフィー技術を応用した画素表示だから、ARメガネが無くても見れる。
『MISSION COMPLETE:
Dinner×Venderノ残存DeepCopy = 0
仮想電子戦闘終了。_』
びろびろろと表示された文字の、後ろのカーソルが明滅している。
―――えっと、「……と、とりあえず飯の続きだ」
俺はPBCが乗った簡易給仕ロボの、下の段に置かれっぱなしの、とっくに冷めた”地鶏の丸焼き”の皿を慎重に取り出した。
データ・ウォッチの表示板には、自動屋台稼働中の文字と交互に検出NPCのリストが表示されてる。
・DinnerVender<Host>
・米沢首<PBC>
・Warkov<Remote>
「なあ、ワルコフって、金持ってっかな?」
フルダイブVR導入期な今、前時代的なレトロゲーは、その扱いは余り良くは無い。だが、扱いに反して、評価・人気が高いから、実は結構高い。
「爆発収まったら、聞いて見よーぜ」
両手がふさがった俺は、肘で刀風を突く。
周囲を、ふと見渡す。
緩衝エリアの帯中央で、未だ周囲には誰もなく、俺たち四人と自動屋台とPBCの操る簡易給仕ロボだけだ。緩衝エリア外周側モールド近くに、マクデブルクは置きっぱなしだ。
こんな開けた屋外で、鳥の丸焼きの乗った皿を大事に抱えてる。俺一人だったら、相当シュールだったろうな。
俺の側まで、笹木姉妹もやってきた。
「あれ? 君ぃ、良いぃの持ってるねぇ」と、姉の方。
「そうね、姉さん、次の料理まで、3分かかるしー」と妹の方。
舌っ足らずなOLさん然とした妙齢の女性、及び、幼い印象ながらも凛とした現役女子高校生。彼女らは、両手をわきわきさせながら、ジリジリと、にじり寄ってくる。
ARメガネは外したままだ。俺たちの様子から、今まさにココで大爆発中だと分かったのかもしれない。
いや、地面のワルコフ文字が、爆発の影響でブロックノイズを出していれば気づくか。爆発の影響を表現してるワルコフの”芸”は、さっき一回見てるし。仮に、実世界で大爆発にさらされても、画素表示は、暗号通信と同じく停電でも起きなきゃ外部からの介入を受けない。大規模な画素演算発生中に、画素不足で鏡面化する事は有るけどな。
ピッ!
先生と俺の腕から通知音。
再び、禍璃と刀風が俺を睨む。
俺は皿ごと腕を持ち上げて表示を確認した。
『<自動屋台>からのメッセージが 1件 有ります。』
なんだ!? 俺は両手がふさがったままなので「音声入力」で「メッセージ確認」し―――。
『緊急事態発生につき、本日の業務を強制終了させていただきます。ご利用まことにありがとうございました。』
えっ!? 終わり!? なんで? ディナーって名前に付いてるくらいだし、暗くなる位までやってたはず。食材在庫がある限りは、客が途切れるまで営業するのが”自動屋台”の良いとこなのに。まだまだ、食い溜めにはほど遠いぞっ。
ごつい腕時計に指を伸ばした先生も口をパクパクさせてる。
ピピピピ!
警告音。今度は全員のデバイスが鳴ってる。同じ音だが、デバイス環境に因って、ちょっとずつズレていくので、ウネリというか不協和音みたいな感じになる。
今度は、自分たちのウェアラブルデバイスからも同じ警告音が発せられたため、禍璃と刀風も訝しみながらも、手元を確認してる。
そして、先生含めた全員が困惑の表情で、俺を見る。なんだこの状況?
◎ びゅわ
◎◎◎ びゅわわっ
◎◎◎◎◎◎◎ びゅわわわわわわわっ
緩衝エリア内を、実験・催事等で広範囲に使用する際に、2重線で囲われる”エリア内占有”表示。俺の周りの地面を次々と、無数の2重丸が覆い尽くしていく。正確な円で描かれ、直径1メートル程度から、大きいのは直径5メートルくらいまで。
何だ何だ何なんだ!?
再びデータ・ウォッチを見た。今度のは、警告音、つまり自動機械群からの追跡通知だから、アプリよりも優先されて、自動的に表示されてる。
『自動屋台からのお知らせです。<プレイヤー:鋤灼驗>を驚異と認定し、接敵行動に移行します。※この通知が届いた方は、直ちに該当エリアから退避してください。』




