4:ウェイト・ア・モーメントその2
2016/04/13 7:48 細かい所、整頓。
2016/04/13 7:31 大変難航してます。ワルコフ爆誕に3.5では足りなかったので、随時ワルコフ爆誕のナンバーにプラスしていきます。すみません。
■t コッ
■タノsh_ コココッ
■楽シソウデスネ_ コカコカカコカカカ、タン
「ん? なんだこの音?」音に気づいた鋤灼驗は、両手カメラまま、そちらへ向き直る。
”待ち状態”は放電を止めている。球状のUI出力に突き刺さって角が見えているECは、見方によっては”種からでた芽”か、”卵を内側から突くクチバシ”にも見える。 UI出力に、埋もれた部分のECは透明で、その透明球の表面が波打ち、鏡面化した。
「処理が終了したみたい」状況が進んだ事で、安堵の表情を浮かべる笹木環恩講師。 ECが押し出され、フロアに落ちる。笹木講師は慌ててECを回収する。
「よーし、まだ時間は大丈夫ね。屋台行くわよー!」
懸念が晴れたからだろう、実によい笑顔である。
ブウゥゥゥゥゥンと音を立て、鏡面化した球が、形を変えていく。とてもなめらかな変形だったので、二人が見とれてしまっていると、それは高さ2メートル、幅1.5メートル、奥行き1メートル程度の直方体の鏡となった。
踊り続けていた米沢首が、ヒートアップする。
「ワ・ル・コ・フ!」ギャー! ドカドカドドドンカカカ!
「ワ・ル・コ・フ!」ギニャー! ドンドカドドンカドッカッカ!
五月蠅かったのだろう、驗は、腹をさっきの倍のスピードで振り回す。
驗の首(と両手は)まっすぐに、鏡の方を向いている。ちょうど驗の全身が写り込んでいる。
鏡の中の驗は、両手ともカメラのシャッターを押すポーズのまま、腹を一心不乱に振り回している。
鏡の中の驗が、色の付いた霧になって霧散、一瞬後に元の形に凝縮する。
驗の顔がツルンとした滑らかなモノに変わる。
驗の身体が無機質で直線的なモノに変わる。
驗の、いや、もはやソレは驗ではなく、宇宙飛行士と言って差し支えないモノだった。
「わ、俺が変わったっ!? 気持ち悪っ!」
「……宇宙飛行士かしら?」
宇宙飛行士は、驗よりも幾分大きい。
宇宙飛行士は、驗の動きを真似するのをやめ、鏡にぶつかるように、前進する。
バッリリリリリリリリリリィィィィィィィン!
ガシャンガラガララパリィン!
鏡でできた直方体の箱は壊れ、破片は光となって消える。
ソコに残されたのは、白地にオレンジ色のラインや金色のパーツをくっつけた船外活動用宇宙服を着たヒトだ。
「コレがワルコフゥ!?」
驗と笹木講師が声をそろえて驚く。
ヘルメットに付いた丸いバイザーはミラーグラスのように二人を写し込んでいて、中は見えない。
「ワルコフー! ギャー! イェーイ!」ドンカッカッドドドドン!
コウベはまさに最高潮を迎えている。
ワルコフから再びキーを叩く音が聞こえてくる。
■h コ
■ハイ、ソウデs コカカ
■ハイ、ソウデス。私ガワルコフデs コカコカカコカカカカ
「はい、そうです。私がワルコフです」
笹木講師が、突然、話し出す。
「わ、一瞬、先生が操られてるのかと思った。これ現実じゃないんだっけ! いや現実でも、そんなの有るわけ無いけど!」
フルダイブではない、従来の技術を駆使した疑似VRでも、必要十分な水準で仮想現実感を味わう事はできる。
「鋤灼君の制服の袖のところに、文字が流れてる」
笹木講師は、自分の腕に沿って、指を沿わせる。
驗が、カメラ手のまま、手と顔の隙間から袖を見ると、制服の縫い目に沿って、肩口までうねうねと文字が流れては消え、袖口から再び流れ始まる。
文字の前には、四角いアイコンの中に宇宙飛行士のヘルメットが描かれている。
制服の袖には、表示機能が付いている。普段はデータ・ウォッチで事足りるので使用することはないが、フルダイブ・疑似ダイブ両対応なので、VR空間内部でも利用することができる。
「アナタ。 制服の袖は、腕章とか表示するためのモノでオープンチャンネル仕様とはいえ、いきなりハッキングなんて……やるわね」
笹木講師は、専門的なことを誉め出す。
ワルコフはその外見とは裏腹に、かなりの機敏さで、誉められた事へのお辞儀をする。そして、驗の方を向き、ついさっきまで鏡の中でしていた、両手カメラポーズをする。そして、がに股になって重心を落とした。
「ぷっ」笹木講師は吹く。
「っやだ、鋤灼君みたい! あははは」
驗はここへダイブしてからずっと、両手カメラポーズのままだ。
「だってこれ止めたら、接続切れそうで……」と言い訳をし、
「なんだよオマエ、フザケてんのか?」とワルコフへ遺憾の意を表明する驗。
「……いいえ、我が宇宙軍の……正式な、最敬礼には……最敬礼で返さねばと……」と驗の腕を読みあげる笹木講師。
「思う次第であります。……だって」プフーッ。
「鋤灼君さ、言おう言おうと思ってたんだけど、そのVR・ARボタンはもう一段階押し込むと、押しっぱなしにもなるし、音声入力って言った後で、ボタン持続って続けて言えば、手を離しても接続しっぱなしになるよ」
「は、早く言ってくださいよ」
驗の声がうわずっている。
「ポリシーかと思って……」
「そんなポリシー無いですよ!」
驗はグリっと力を込めてから、手を下におろした。
ワルコフからキータッチ音。
「ポリシーは……大事だぜぇ。……へっへっへっ」と驗の腕を読む笹木講師。
■ポリシーハ大事ダゼェ。ヘッヘッヘッ_
声と同じ文面が袖を流れていく。
ワルコフへ首だけ向けて怒鳴る驗。
「うるせえよ! だからポリシーじゃねえ! あとなんでキャラ変わってんだよ!」
ワルコフは凄まじい機敏な動きで、バカにしたようなポーズの最敬礼? を返す。
「あ、先生に言ったんじゃないですからね、ワルコフのやろうに言ったんですからね
驗は大きく向き直り、弁明する。コウベが大きくブレる。
「大丈夫、判る」と驗を宥めつつ、ワルコフの丸い顔? を指さす。
「ポイントしても、プレイヤー名も、NPC名も、表示されないから、スタバの廃棄データか何かが野良化したのかしら」
「ワルコフー、アレくれー! アレくれよー!」
コウベは、たかるように、何かを要求している。
ワルコフは、最敬礼を止め、コウベへ向き直る。
聞こえてくるタイプ音。
「おう! 又、アレくれよ」ギザ歯を見せるこうべ。
「えっと、君は……この間……お会いし……ましたね」
驗は袖をつかみ、笹木講師と自分に見やすいようにし、ワルコフの台詞を読み上げていく。コウベは、明らかに驗が読み上げるよりも早く応答している。
「この間よりも……小さくなりましたね……コレではモノを……持つのも大変でしょう」
ワルコフは、少し屈み、映像でしかないコウベを、手で掴み持ち上げた。
「「んなっ!?」」
便宜上、コウベの姿は表示されているだけで、本来の接続とは無関係な状態である。現に、ついさっき、笹木講師は捕まえることが出来なかったはずである。
驚く二人を後目に、ワルコフは、コウベの頭と踵を摘んで引き延ばすようにして、放り投げた。
グワッっと、実物大のサイズになったコウベは、地面に降り立ち、そのまま床を踏みしめ体の具合を確かめている。ついでに足元の何もない空中も、けっ飛ばす。
さっきの変な舞踏が作用しっぱなしなのか、ドドドンと太鼓の音が響く。
破れていた制服はキレイに元通りになっている。ベリーショートなので、活発な優等生といった感じの美少女がそこにいる。
■コレデ、イインジャネー_
キャラ違いの台詞が、驗の袖を、流れていく。
「どうやって、実世界のPBCにアクセスして、コウベちゃんの接続を確保してるのっ!? わかんない! あとコウベちゃん、カワイイ!」
フロアへ再接続するだけでも結構な手順が必要なのに……ブツブツブツあと、コウベちゃんカワイイカワイイとつぶやきながら、考え込んでしまう笹木講師。
驗に至っては、驚いたモノの、具体的に何を驚けばいいのか判らないのか、口を開けたままだ。
■ソレト、アレヲ、ゴ所望デシタワネ_
次いで流れた台詞もキャラが違っていたが、誰も見ていなかった。
ワルコフは、何もない空中から、木槌と木の杭をつまみ出して、コウベの足元に打ち込んだ。
特別講座で、笹木環恩特別講師が、木の板っぺらにしか見えないフロアの硬度を、理論値最大の立方晶窒化ホウ素と同じと、説明したのは一昨日の事だ。すべての物体構造を分子レベルで再現する事が、売りのトポロジック・エンジンの根底を覆す所業である。ワルコフの持つ、木の杭の分子構造が、同じく理論値最硬だったとしても、一撃でめり込んでは立つ瀬がない。
「先生!? コウベとか、床とかどうなってるんですか!?」
振り向いた驗の目の前で、笹木講師は、フロアにぺたりと座り込み、腕時計に向かって口頭でメモを取りはじめた。
「音声入力」「ボイスメモ」「VRカテゴリ」「リアルタイム通信介入」「分子構造改変」「一攫千金」「悠々自適」
驗は、肩をすくめ、時計をみる。午後2時34分。
■ドウゾ、ゴ査収下サイ_
驗の袖に文字が流れる。
顔を上げた驗の前に、大きく、とても肉厚で立派な椎茸が生えていた。木の杭から生え育った椎茸は、高さ3メートルの幅4メートルくらい。
コウベはその上に、ぺたりと座り、早速千切って、かじり付いていた。




