幻の魚
夕日 葵 (ゆうひ あおい)
18歳
特徴:ミディアムロングヘア シャイニーブラウン 160cm
好きなもの:正直な人
嫌いなもの:嘘つき
幼い頃から母と2人で暮らしている。
高校には通っておらずスーパーでアルバイトをして生活費を稼いでいた。
母が亡くなり、以後椎名探偵事務所の助手として勤める。
11月26日 午前9時
椎名探偵事務所
椎名
「……ふぅ、 やはり寝起きには紅茶が1番」
夕日
「今日は何を飲んでるんですか?」
椎名
「ニルギリって言うインドの紅茶、 さっぱりしててオススメだけど飲む?」
夕日
「あたしはコーヒー牛乳でいいよ」
そう言って事務所の冷蔵庫から1リットルのパックを取り出して飲み出した。
椎名
「……あのさぁ葵さん…」
夕日
「どうしたの要君?」
葵が探偵事務所の助手になってから2週間近く経ち、 2人はお互い名前で呼び合える仲にはなっていた。
椎名
「本当にマンション出てここに住むの?」
夕日
「……だめ?」
椎名
「まぁ部屋も空いてるし駄目とまでは言わないけど…」
夕日
「だってあたしだけの手取りであのマンションの家賃払っていける自信無いもん!」
椎名
「てかスーパーのバイトの方が僕の助手なんかより安定してると思うけど…」
夕日
「そんなん建前だし! 本当の事話すからちょっと聞いてよ! そのスーパーの先輩…ってかおばさんがさぁ!
…
…
…」
椎名
「はぁ…」
あの事件の後、 葵を助手として招き入れようと提案したのは他ならぬ要自身だった。
葵の母になりゆきとは言え、娘をお願いしますと言われたからだと、 本人は言う。
しかしそこには確かに要自身の気持ちも汲んであった。
葵は放ってはおけない、 何故かは分からないがそう感じたのだ。
夕日
「って言う訳なの! だから昨日からよろしくお願いします!」
椎名
「ごめん、 聞いてなかった」
夕日
「なんだと?」
葵が以前住んでたマンションから荷物などをまとめ事務所に居着いたのは昨日のこと。
今日から2人一緒に暮らしていくこととなった。
椎名
「来た時にも言ったけど満足出来るだけの給料は払えるほど安定してないからな…、 最近は仕事ちょくちょく増えたが半年近く全く仕事なかったんだから…」
夕日
「大丈夫大丈夫! それよりなんだけどその半年間どうやって生活してたの?」
椎名
「イギリスの学校卒業祝いにお金貰ったからそれで事務所建てて生活してた」
夕日
「イギリスって前に言ってた探偵学校の…、 ってかそれどんだけの大金!?」
椎名
「まぁいいとこの学校だったからさ…」
夕日
「…ふーん、 あのさ…要君の親ってどうしてるの?」
親、 兄弟と言った身内関係の話題は避けて来たつもりだったがつい聞いてしまう。
椎名
「親が小さい頃にイギリスのその学校に連れてったんだ、 そのまま多分イギリスに住んでると思うけど…、 本当に物心つき始めた頃くらいだからわからない」
夕日
「それ…何歳?」
椎名
「5…かな?」
夕日
「…おー…クレイジー…」
椎名
「馬鹿にしてんのか?」
そんなくだらない会話を繰り返す。
気がつくともう夕方4時を迎えようとしていた。
夕日
「うわっ、もうこんな時間? 買い物してこなきゃ!」
椎名
「肉で」
夕日
「あたしが決めます! じゃーねー!行ってきます!」
慌てて外に出て行く葵を見送る。
椎名
「…やれやれ」
近所のスーパーで一通り買い物を済ませて帰路につく葵。
夕日
「今日こそは美味しいって言わせてやるんだから! …ん?」
ふとある建物が視界に入り足を止める。
夕日
「ここ…確か…」
それは一回り大きく、オシャレな建築物。
葵が立ち止まり見ていると中から女性の声が聞こえてきた。
??
「だから本当だっていうなら証拠を見せてって言ってるの! 前島さんまた嘘をつく気!?」
その迫力に圧倒され中から1人の男性が出てきた。
前島と呼ばれる体は細く、顔はやつれた中年の男性。
前島
「志穂ちゃ〜ん! 勘弁してよ…、俺はただお客さんだけじゃなく君たちにもビックリしてもらいんだよ〜」
志穂
「そんなの必要ない!」
続けて志穂と呼ばれた女性もものすごい剣幕で外に出てきた。
志穂
「館長! 館長もなんとか言ってくださいよ!」
更に中から出てきたのはふくよかな年配の男。
館長
「よさないか志穂くんも、 お客様が驚いているだろう?」
そう言うと立ち止まっていた葵と目を合わす。
夕日
「あ…」
志穂
「……すいません」
前島
「チッ…、 ケチついたな…今日はもう帰りますね〜お疲れ様っす〜」
館長
「前島君!」
ふてくされながらも呼びかけに振り向くと真剣な面持ちで館長は前島を見つめる。
館長
「今度は信じてもいいんだな?」
前島
「……今度『は』ねぇ…、まるで以前は信じてなかったみたいな…? まぁ安心して下さい、また昔みたいに賑うようになりますよ」
そう言い残して前島はその場を後にする。
館長
「すまなかったね、見苦しい所を見せてしまって…」
夕日
「いえ、大丈夫です! それよりもここってもしかして 【珍物展 ホープハウス】 ですか?」
志穂
「ええ、そうだけど…」
夕日
「やっぱり! 私小さい頃何回か来たことがあるんです! 世界中のいろんな珍しい物を展示してるんですよね!?」
館長
「ほう…これはこれは古くからの常連さんだったか、それは失礼しました。
私はここの館長を務めている竹中と申します」
志穂
「あたしは受付や経理、事務を担当してる内田 志穂 よろしく! そしてさっきの男が企画全般担当してる前島… とまぁ3人でやりくりしてる小さなお店なんだけどね」
夕日
「小さいなんてそんな! あたし子供の頃ですけど覚えてますよ! すごいたくさんの人が並んで店の外にまで行列が出来たりするじゃないですか!」
志穂
「…昔はね」
夕日
「え?」
志穂
「前島…あの男のせいで…!!」
館長
「志穂くん! お客様の前だぞ!」
志穂
「っ…! すいませんでした…」
夕日
「あ、あたしは大丈夫ですよ! その…あ、 …今は何を公開してるんですか? せっかくだから見て行きたいんですけど!」
館長
「すまんが夕方5時に閉店してるんだ」
夕日
「そっかぁ…残念」
館長
「今回のお詫びと言ってもなんだがまた今度時間のある時にでも足を運んでいただきたい、その時には入場料は私が負担しよう」
夕日
「いいんですか?やったぁ!!」
志穂
「待ってるわよ!」
館長
「出来れば明後日、金曜日までに来てくれると助かるのだがね…」
夕日
「どうしてですか?」
館長
「あぁ…すまない、こちらの話しだ、 気にせずいつでも来てくれたまえ」
事務所に戻ると要はソファーで横になって爆睡していた。




