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機人戦記  作者: 469
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1/2

祝福の日

昔の話をしよう。

アイファレイ帝国という人間の国があった。

その国では、新しい『人』を作る研究をしていた。

この世界には『竜人』や『狼人』など、(『亜人』と人間は呼ぶが)人間を狩る側が多く存在する。

年々、人間は減少しており、アイファレイ帝国もその影響を受けていた。

そこで国が打った対策が、『人間』を守り『亜人』を狩る新しい『人』...

即ち、『機人』の開発である。

そして、その計画は成功し、ある日一人の『機人』が生まれた。

そして、その国は一夜にして滅びることとなった。


---


「ガオー!人間だぞー!」

お父さんの手は、いつ見ても大きい。

「人間めー!これでもくらえー!ドゴーン!」

弟のミルンは、いつ見ても小さい。

「ぐわー!やーらーれーたー!!」

「次はお兄ちゃんの番だ!行くぞ!人間アタック!」

クラミー、設定がずれてるよ...そこはガオーって言わないと。

「違うよ!人間は喋らないんだよ!お兄ちゃんの馬鹿!」

「ハハ...手厳しい... うぇーんサリアー!!」

「お兄ちゃん泣き虫だ。」

「はいはい、クラミーはちゃんと頑張ってるよ。私の自慢のお兄ちゃん。ミルンもそんなこと言わないの。」

これが私、サリアの声。クラミーとミルンのお姉ちゃんだ。

と言っても、クラミーは自分がお兄ちゃんだと主張してるけど...。数秒しか違わないのに。

「ハッハッハ...おっとそろそろ時間じゃないか?」

「あ!いけない!サリア!行かなきゃ!」

「え?どこに行くの?」

「サリア忘れたの!?今日が祝福の日だよ!」

忘れてた。


今日は祝福の日だ。私とクラミーが12歳になる日でもある。

祝福は、私達に戦う術を授けてくれる。

機神様の祝福を得て初めて、私達は機人と認められるのだ。


見慣れた教会についた。相変わらずボロだ。たくさんの12歳が並んでいる。

「ついに!祝福を受けられるね、サリア!」

「クラミー、街の外に行きたがってたもんね。今日のお別れ会が終わったら一緒に行こうね。」

祝福を受けて機人となったものは、一晩を軒下で過ごした後、街を出なければならない。

それまでは自由なので、私達はお別れ会をするという訳だ。

街の外のことを二人で話してたら、あっという間に私たちの番が来た。


「クラミー、サリア!12歳おめでとうございます!」

「ありがとうございます。シスターさん。」

「サリアー、楽しみだなー!一緒に外を見ようなー!」

「あの小さかったクラミーとサリアが...。なんだか涙が...。ごめんなさい、祝福ですよね。今始めますね。」

「シスターさん泣いてんのー?」

「泣いてなんていません!さぁ、前から伸びてるコードをお腹に差してください。」

このコードを差したら、私たちは機人になるのだ。

「お先ー!お兄ちゃんだからねー!」

サリアはもう差しちゃった。もう少しこの気持ちを感じてたかったけど...

私も、コードを差した。そして眠りに落ちた。


目が覚めても、特に変わった感じはしなかった。

けれど、私たちは確かに機人に成ったのだ。

「サリアー、何かいい気分だね!」

「これで外に出られるね!お兄ちゃん。」

「はいはい、クラミー、サリアもちゃんと祝福授かりました。機人おめでとう。」

「シスターさん、ありがとうございました!これで僕外に行けます!」

「頑張ってね。お別れ会には行きますからね!ほら、後がつっかえてるから!早く出て!」

そして、教会を後にしたのだ。


「せぇの...クラミー、サリア!機人おめでとー!」

「「「「「おめでとー!」」」」」

ミルンの掛け声に合わせて、皆が祝ってくれる。

「みなさん、今日は僕のために来てくれてありがとう!」

「クラミーのために来たのは俺だけだけどなー!」

クラミーの親友のラッツェルだ。毎回ウインクしてきてちょっとうざい。

「私達はサリアの為に来たもんねー!」

「馬鹿のクラミーなんて知らないよねー!」

私の親友のリーシャとラーシャだ。いつも通り、二人とも息ぴったり。

「わ、私はクラミーとサリア、両方のために来ましたよ!」

シスターは、オフの時はちょっとかっこ悪くなる。でもかわいい。

「ハッハッハ、お父さんもどちらも愛しているぞー!」

お父さんが頬擦りしてきた。髭が痛い。けど温かい。


それからは、たくさんご飯を食べて、たくさん喋った。たくさん笑った。


「クラミー!それは俺が取ろうとしてたんだ!」

「へへん!早い者勝ちだよラッツェル!」

「サリア、私たちも祝福を受けたら追いかけるからね!」

「サリア、私たちが祝福を受けた頃になったらゆっくり歩いてね!」

「私は...ヒック!大人なのでお酒を飲みまーしゅ!がぼぼぼぼぼぼぼ」

「お父さんがお前らくらいの時はなー?...


時間はあっという間に過ぎてしまう。

楽しかったお別れ会も、もう終わってしまった。

ラッツェル、うざいけどいいやつだった。

リーシャとラーシャから貰った集合写真は、大切にする。

シスターは、だらしなかった。お守りをくれた。かわいかった。


そして、私とクラミーはリュックサックを背負ってお父さんとミルンにこう言うのだ。


「あ、ミルン。お父さんを労わってあげてね。」

「ふんだ!馬鹿お兄ちゃんがいなくなって楽になるよ!」

「労わってやれってなんだー!お父さんはまだまだ元気だぞー!」


クラミーは一言余計だ。


「ミルン、いっぱい食べて大きくなってね。」

「お父さんも、変わらず元気でね。」

「うん!ミルン、お姉ちゃんをいつか追い越すよ!」

「サリアは優しいなぁ。お父さんもっと元気になっちゃうもんね!」


私も一言余計をしちゃった。


今度こそ。

「「行ってきます!」」



---



うちの軒下で、私とクラミーは今夜を越す。周りの家の軒下にも、たくさんの機人がいる。

そして明日の朝、まだ陽が昇らない頃に街を出るのだ。


「ねぇサリア...。夜って怖いね。」

「クラミー、もう泣きごと?機人はそんなこと言わないよ?」

「だってサリア!この街の伝説知ってる?怖いに決まってるよ!」

「なにそれ、聞いたことない」

「実はこの街の下には、見たこともない生物の骨がたくさんあるらしい!」

「しかも、良く分からない文字で書かれた本も埋まってて!」

「その本には、僕たちのことがたくさん書かれてるらしい!」

「ラッツェルが言うには、これはきっと人間の家が近くにあるってことなんだって!」

「はぁ...クラミー、それラッツェルに騙されてるよ。」

「でもほんとに人間が出てきたら... 怖いよサリアー!」

「えー、ほんとに人間が出てきたらー?私たちは祝福をもらって戦えるようになったんだから、私が追い払ってあげるよ。」


そんなことを言い合いながら、夜は過ぎていった。


「サリア!サリア!起きて!人間が来た!」

「まだ夜だよクラミー...人間...?」

「サリア!人間が来たんだって!こっちに来てる!ほらあそこ!」

光がたくさん、空からこちらに向かってきていた。

「んー...?あれ人間じゃない気がするよ?クラミー。」

「でも街の外から来てるってことは敵だよ!空を飛んでるってことは...竜人かも!」

「竜人!?確かに空を飛んでる...皆に知らせなきゃ!」

「多分知らせてる時間ない!もうそこまで来てる!というか多分僕たちも目をつけられてる!」

「取り合えず逃げよう!クラミー!急いで!」

「でもサリア!ミルンとお父さんが家に!」

「あー!!家に入らなきゃ!」


家の中は、妙に静かだった。

「もしかして...ミルンとお父さんはもう...!」

「そんなこと言わないのクラミー!」

「私はミルンの部屋に行く!クラミーはお父さんを!」


ミルンは、いつも通り寝ていた。

けれど悠長に和んでいる時間はないので、そのまま抱っこして連れ出した。

「クラミー!まだ!?」

「サリアー!お父さんが...お父さんが動かない!」

慌ててお父さんの部屋に行くと、お父さんは丸まっていた。

こんなこと今までで一度もない。

「お父さん、お父さん、動いて!お願い!」

「お父さん!もっと元気になるんじゃないの!?サリアに言ったでしょ!」


光が、そこまで来ていた。


「クラミー、もう時間がない!お父さんは置いていくしかないよ!」

「サリア!?置いていくなんてそんな、出来るわけない!」

「クラミー、お父さんならきっと大丈夫だよ!元気だって約束したじゃん!」

「サリアー!サリアー!」

「...」

クラミーまで、固まって丸くなってしまった。

私は訳が分からないまま、ミルンを抱いて逃げ出した。

きっとあれは防御なのだ。

私は教えてもらえなかったけど、きっとあれは防御なのだ。

だって、クラミーはあのままお父さんを置いていけなかった。

けれど、お父さんは私たちで運べるほど軽くなかった。

あれは、きっと防御なのだ。

そう信じながら、私は走って街の外へ向かっていた。


ほかの家や教会の前にも、丸まった機人がたくさんいた。

私も、教えてもらいたかった。

そしたら、こんなに怖くなかったのに。

時間に身を委ねられたのに。


けれど、ミルンは自分を守れない。

丸まっていないのがその証拠だ。

私が守らなければならない。

そのために私は此処に生まれたのだ。


丸くなっている門番さんを横目に、街の外に来た。

後ろで聞こえる音から耳を逸らしながら、私は森の中へと逃げ込んだ。

枝や葉が私を何度も切りつけた。

ミルンだけは、守らなければ。


そうして、いくら走っただろう。

気付けば森を抜け、山の上へと来ていた。


そこには家があった。粗末な家だ。

その家から緑のローブの人が出てきた。


私は機人だ。もう戦える。


ミルンを守るため、私はその人に殴りかかっていた。

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