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「ふふふ」
「義姉上、新聞見てニヤニヤしない」
「するわよ。だって、アーミューが私の為に動いた件が大々的に新聞に載っているのよ。しかも『魔王』とか言われているじゃない。確かにアーミューはとっても美しすぎるし、強いし、『魔王』って呼ばれるのも似合うわ!」
「なんで婚約者が『魔王』なんて呼ばれて喜んでいるんだよ」
「だってかっこいいじゃない」
あの日から、数日。
アーミューは『魔王』と称され、私に手を出したものは死を迎えるだろうみたいなのが新聞の記事にされていた。
あの日アーミューは、アーミューを取り込もうとしていた隣国の貴族たちの元へと転移で向かった。アーミューはとても優秀なので、そうやって簡単に隣国の貴族の元へ転移なども出来るのよ。すごいわよね。
それでその貴族たちを徹底的に殺したみたい。うん、アーミューだものね。
アーミューはね、どこにだって転移で向かえるの。それでいてとっても強いの。アーミューはね、そいつらを殺した後隣国の王城に乗り込んで、手を出さないようにって脅しつけたらしい。
私のためなの。
他の誰でもない私の為にそれだけのことをしたの!
私は大興奮してしまったわ。
隣国の王族はすっかり怯え切ったらしい。ううん、その隣国の王族だけじゃなくて他の国にもすっかり恐れられているの。あと噂に惑わされ、私に色々言っていた人たちも学園長から注意されたりしていたみたい。アーミューも何か言ったのか、すっかり私にはルトラールやミーガレダ様、後はアーミューが私を守るために配置されている人たちはともかく、他の人たちはすっかり私に近づかなくなっていた。
それはそれで平和だから全然いいのだけど。
それにしても私は前世の記憶があるし、『魔王』って単語にあまり嫌悪感はない。だって美形の『魔王』とかも漫画やアニメに結構出ていたもの。だってアーミューみたいに美しい『魔王』って素敵じゃない?
私のアーミューは素敵だわってほれぼれしている。
「はぁ……私だけの『魔王』様ってそういう響きが素敵じゃない? しかも私のためだけにその力を使うのよ」
「……義姉上は兄上があれだけやらかして虐殺したの聞いてもその調子だよね」
だってほれぼれしているもの。
素敵だわ。
私にとってアーミューが私の為に動いたっていうのが重要だもの。きっと本当に私が害さることがあればアーミューはきっともっと暴れるでしょうね。うん、それを思うだけで心が躍るわ。
「あと義姉上、さっさと兄上と結婚したの何で?」
「んー、早くアーミューのものになりたいっていったら、学生婚してもいいかなって話になって。とっても幸せだわぁ。あれから毎日来てくれるし」
にこにこ笑いながら私が言えば、ルトラールにあきれたような顔をされた。
アーミューと私は、あの後すぐに婚姻届けを出した。元々卒業した後結婚する予定だったけれど、何だか我慢できなくなったのよね。
アーミューはあれから学園長の方とお話して、毎日私の元へやってくるようになったの。アーミューは転移魔法を使えばどこだって入り放題だし、学園長も諦めたみたい。
アーミューはまた同じようなことがあったら嫌だって思っているみたいね。ふふ、アーミューに愛されていると思うととっても嬉しいの。
今日も私は寮に戻ると、「アーミュー」と名を呼ぶ。
そしたらすぐにアーミューが部屋に現れる。ふふ、アーミューが部屋にいると嬉しいわ。
「アーミューとこうして過ごせるとやっぱりいいわね」
「うん。僕もウィネッサと一緒に居られるの嬉しい」
嬉しそうににこにこと笑っているアーミューを見ると、とても嬉しい気持ちになる。
なんだろう、アーミューと離れているよりもずっとアーミューと一緒に居られる方が嬉しいわ。やっぱり卒業後はもっとずっと一緒に居られるようにしないと。
「ねぇ、アーミュー。卒業後はずっとそばにいてくれる?」
「うん。僕も必要な時以外は外に出ないようにするし、そういう風な働き方でいいって言われているからね」
「ふふ、流石アーミューだわ。私のアーミューは優秀だからそういう生活が出来るのね。私もアーミューと一緒に暮らせるように色々動くわ」
「うん」
私とアーミューはそんな会話を交わして笑いあう。
私とアーミューはきっとこのまま死ぬまで一緒に居るのだ。
そして多分、死ぬときはきっと一緒に逝くんだと思う。だって私はアーミューの居ない世界を生きられないし、アーミューだってそうだもの。
アーミューは漫画の世界では自殺する予定で、そのアーミューをこうしてこの世界に留められたのは私が居るから。そして私が人生を一番楽しめているのはアーミューが居るからだもの。
「アーミューが、おじいちゃんになった時も私と一緒に居てね」
「うん。もちろん」
「私はアーミューが死んだら後を追うから、一緒に逝こうね?」
「うん、当然だね。僕はウィネッサがいないと生きている意味がないから」
こんな風ににこにこと笑うアーミューは、一見すると『魔王』と呼ばれる存在には見えないだろう。
だけど、私に何かがあれば、私たちの生活を脅かす人がいたらきっと冷たい一面をすぐに出すだろう。
でも私はそんなアーミューが大好きだなと笑うのだった。
今日も今日とて、私とアーミューは互いに依存しながら生きていく。
元々そんな長くならない予定だったので、此処で終わりです。
依存している関係は、互いに依存している方が好きです。
そういうわけで依存している二人のお話でした。
ちなみにルトラールはこの後、普通に貴族令嬢と婚約して結婚して公爵になります。
ウィネッサが卒業後、アーミューは大体屋敷にいて、魔物退治とか、必要な時に転移で仕事にいってすぐ帰ってくる感じです。大体常に一緒にいていちゃいちゃしながら引き籠ってます。
もちろん、旅行に行く時はでかけますが、それ以外はずっと屋敷でのびのびしている未来が待っているイメージです。
書いていて結構楽しかったので、読んでくださっている方も楽しんでいただければ嬉しいです。
2022年8月22日 池中織奈




