目覚めぬ少女と救援の魔王
明けましておめでとうございます!(今更)
明日から仕事初めでまた更新がのんびりになりそうです。
誤字脱字報告が有りました事に御礼申し上げます。
有り難う御座いました。
読んでくれている方が居ると言う事に嬉しさを禁じ得ません。
此れからも宜しくお願い致します。
−魔国アケーディア−
「何、エルフの隠れ里が炎上してるだと?」
「はい、交易を交わしている集落ではありませんが、唯の火災とは思えません。如何致しましょうか?」
大きく立派な木製の机に座っている(人間で言うなら20代半ば程、髪は短めの銀髪で耳は魔族特有のやや尖っていて貴族らしいスーツに見を包んだ)男に執事服をピシッと着こなした30代前半位の(同じ様に銀髪を流すように撫でつけた)男が伺いを立てる。
「交易で懇意にしている集落では無いにしろ、黙って見過ごすのも後味が悪いやもしれんな。ましてや霊峰のお膝元でもあるし。よし、水魔法が得意な者で二個小隊を組み救援物資を持って現地へと向かわせろ。私も一足先に出る。」
「御身自ら出なくても兵に任せておけば宜しいのでは?」
「唯の火災では無い可能性が高いのだろう?ならばこの目で確かめねばなるまい?」
「差し出がましい口を挟み失礼しました。お赦し下さいませ。」
「良い、半分は私の我儘みたいな物だ。」
言うが早いか、貴族か王族らしき魔族の男は廊下へと出ていった。
どうもきな臭い、人間種族の国が再びろくでもない事を始めたので無ければ良いが。
魔族も偉そうな事は言えんが、被害を受けるのは何時も傍観を決めていた種族だからな。
そもそもエルフをこれ以上閉鎖的になったら妖精族と同じ様に完全に鎖国しないとも限らん。
冗談ではないぞ、千年単位で生きる種族が鎖国したら万年単位で出て来なくなるだろうに!
魔族ですら長生きして500年がいいとこなのに、百年生きるかどうかの人間族の歴史からは完全に消え去るぞ。あ〜イライラしてきた、人間族は本当に学習しない!
兎に角現場を見ない事には答えなど出せん。まぁ、歴史上のパターンから間違いは無さそうだが………はぁ。
◇
レンはコテージのリビングで一休みしていた。
墓を作り終えて2時間程経ったが、エルフの娘は未だに起きる気配が無い。
既に日は落ち掛け、夕暮れと言っても差し支えない時間帯である。
幾ら上級ポーションでも部位欠損や失った血液までは戻らない。
地球の病院の様に増血剤や点滴等があれば多少は安心出来るのだろうが、今は只管少女の生命力に掛けるしかなかった。
「あ、ゲイズさん達の御飯を忘れてた。まぁいいか食料庫は教えてるし、適当に何か作って食べてるだろう。」
〈コンコン、コンコン〉
はて、あの娘起きたのかな?いや、ノックは外のドアから聴こえた。
里を襲った奴らが戻って来た?いや、その可能性は低い。ならば誰が?
そこまで考えて《誰でもいいか、敵なら倒すだけだ。》
ドアの近くまで進み返事を返す。
「どちら様でしょうか?」
「夜分に申し訳ない、エルフの里の惨状を聞き付け駆け付けた者だ。」
人間種族にしては対応が早過ぎる。交易商人が来るのもまだまだ先だったと記憶している。
考えられるのは、別の集落からの者か別の亜人種だろう。何にしても開けてみれば分かる事だ。
「お待たせしました。どの様な御用でしょう?」
「少々尋ねたいのだが、エルフの里が壊滅している理由を知っていたら教えて貰いたいのだが?事と次第によっては只では済まないと思って貰おう。」
現れた男は静かな怒気を孕んだ声で訪ねて来た。恐らくこれでも必死に感情が爆発するのを抑えているのだろう。
「玄関口では何ですから中へどうぞ。」
レンは招き入れた男に山間に煙を見てから今に至るまでの説明をした。
「大変失礼をした!」
男は勢い良くテーブルに頭をぶつけんばかりに頭を下げて来た。
「いえいえ、里の惨状がこんななのに、こんな所でのんびりしてたら勘違いも仕方ありません。どうか頭を上げて下さい。」
「そう言って貰えると有り難い。とは言え、何も無しでは此方の気が済まない。此れを受け取って欲しい。」
男が懐から出した物は紋章を彫り込んだ金属板だった。
「魔族の国アケーディアに来た時に此れを見せれば高待遇で入国出来る。その時には私の名を出せば悪い様にはならない筈だ。」
レンは苦笑しながら告げる。
「まだ、お互いに自己紹介もしてないので、名前を出せと言われても。」
どうやら魔族らしい男もあっ!と言う顔で思い至ったようだ。
「重ね重ね失礼した、私はベルフェ・G・アケーディア、魔族国アケーディアの王だ。」
レンは驚きはしたものの、恙無く自己紹介を始める。
「ご丁寧に有り難う御座います。僕はレンと言います。此処から西の盆地の中に住居を構え住み着いてる者です。」
「レンちゃんでいいかな?随分落ち着いてるね。普通の人間種族なら魔王と聞いただけで半狂乱で逃げ出すのに。」
「そうなんですか?生憎人間種族の街にすら行った事が無いのでその辺の事情も分からないもので。あと、男です。」
一瞬何を言われたか解らずポカンとした表情でレンを凝視している。
「はぁぁぁぁぁ?!その容姿で男の子?てっきり今時の僕っ子少女かと思ってたよ!世界は広いな……いや、びっくりだ。」
ベルフェは人軋り騒いでから疲れた様に椅子に座り直す。
「すいません、怪我人が寝ているのでお静かに願います。」
「あぁそうだったね申し訳ない。して、その娘の容態は?」
「未だ予断を赦さない状態です。一応止血と多少の体力の回復は出来ている筈ですが、圧倒的に血が足りてません。正直良く持ち堪えていると思います。」
「そうか、そろそろうちの救援部隊が物資を運んで到着する筈だから増血剤を融通する様に言って置こう。」
「有り難う御座います。」
「いや何、本来ならエルフの首都から救援が来なければならない筈だからね。未だに来ないって事は、まだ喧々諤々やっているのかも知れないね。」
「近くにエルフの首都があるのですか?」
「近くには無いよ。ただエルフの集落は全てゲートで繋がっているのさ。」
新事実がベルフェの口から齎された。当のベルフェは"ナイショだよ"と人差し指を口の前で立てているが、それならば尚更救援が無かったのも少女が倒れたまま放置されていたのも説明が付かない。
ならば、逃げる間もなく襲撃されたと言う事になる。若しくはゲートのある方向から攻め要られて逃げられなかったか。そもそも簡易的な丸太の木杭を組んで作られた防壁だとしても、逃げる間もない程早く襲撃出来る物だろうか?
「君が考える事じゃない。」
不意に言われ顔を上げるとベルフェが付け足してくる。
「襲撃者の侵入経路、何処の国の者かは此方で受持とう。君はあの娘の回復に集中してやるといい。」
「分かりましたお願いします。ですが、情報は僕にもお知らせ願えますか?」
「恐らく襲撃者は国家絡みだ、それでもかい?」
ベルフェが睨みつける様に威嚇しながら聴いてくる。
「それでもです。」
ベルフェが呆れた様に天井を仰ぐ。
「やれやれ、目一杯威嚇してたんだが、そよ風程にも効果が無いとはレン君君は何者だい?」
れんが苦笑いしながら答える。
「唯の人間関係に嫌気が指した世捨て人ですよ。」
「世捨て人になるには若過ぎると思うけどねぇ。」
「自覚はしてますよ。」
《コンコン》
「おっと、漸く救援部隊が到着したようだ。」
カチャッとドアを開けると魔族の兵士らしき人が立っていた。
「夜分に失礼します。あっ閣下此方においででしたか。二個小隊到着して周辺の捜索に当っておりますが、遺体一つ見付からず指示を仰ぎたく探しておりました。」
「御苦労……と言いたい所だけど、ちょっと判断が遅いんじゃないかな?到着の時点でその判断が出来なきゃ軍人として失格だよ。」
「はっ!申し訳有りません!」
心底情けない者を見た様にベルフェは溜息をつく。
「済まないねレン君、此処数百年戦争も無かったから少し弛んでるみたいだ。帰ったら鍛え直して置くよ。」
それを聞いた兵士は真っ青になって敬礼したまま動かない。
「奥に怪我人が居る。応急処置はしているが、予断を赦さない状態だ。至急治療に当たってくれ。」
「はっ!了解しました。君、案内を頼めるかな?」
これでエルフの娘が助かる見込みが上がった事に安堵するレンだった。
怠惰な日々って幸せです。




