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マガイモノ〈未改訂版〉  作者: 海陽
マガイモノ
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屈辱

満月のあの日、廃ビルの屋上で框矢に部下を倒されてから。ダナニスは表の顔、大手会社の社長として仕事やマスコミの相手をこなしていた。穏やかな物腰の好青年社長として。


どうしようも無かったのだ。あの状況では。框矢の能力を侮り、たった二人しか部下を連れて行かなかったのは自分だ。


その結果が、失敗。あっという間に屈強であるはずの部下は倒され、意識が回復するまで時間が掛かった。廃ビルの屋上、そして唯一の出入口は框矢の後ろと言う逃げ場の無い位置。


框矢は本気どころかその身体能力の十分の一すら出して無い。能力の出し加減など、ダナニスに分かるはずが無いのだ。が、そんな彼でもそれが本気(実力)では無い事くらいは容易に分かる。


鱗片だけでも瞬間移動並みの速度と部下を瞬殺した武力を見せつけられて、武力も身体能力も人並みのダナニスが敵うはずが無い。殺ろうと思えば、框矢は自分を倒す事だって出来たのだ。だがそれをしなかった。


それが自分がここで仕事をしている、今に繋がっている。それも分かって居るから尚更、ダナニスの心中は荒れていた。


今まで小学校も中学校も高校も大学も。更には大学院も全て首席で卒業。赤点なんて有り得なかったし、最低でも必ず90点はとって来た。ハーフって事もあって、容姿もそれなりに整っている所謂勝ち組。


起業だってそうだ。失敗なんて文字、僕の辞書には無かったんだ。それなのに……僕は初めて失敗をした。


手に入れたいと思い、一度で手に入れられなかった事など無かった。己のの為に、投資までして見つけた少年。一回り以上も離れている彼、框矢にダナニスは遅れを取ったのだ。


「次の手を考えなくては……」


「社長?」


秘書の声にハッとして、彼に慌てて笑みを作る。


まさか声に出ていたなんて。僕としたことが気が緩んでいたのか。……だけど、本当に次の手を考えなくてはいけない。

二度と、遅れを取るなんて事は出来ない。もう既に、僕のプライドはズタズタなんだから。



***



「全員、現在自分が持てる武力を更に高めて下さい。剣術、弓術、格闘技、射的……武力となり得れば何でも良いです。今僕が仲間にしたいと思っている少年は、かなりの身体能力を持っています。僕は何としてでも彼を仲間にしたい。その為には実力行使も止むを得ないでしょう。貴方達の力が必要なのです」


ダナニスが裏の部下達に武力向上を命じると、一矢乱れぬ右拳を胸に当てる敬礼で彼らも応えた。


彼らダナニスの下に集められた部下は200人に届こうとしており、全員がダナニスが語る“夢”の為の力になるのだと、堅く誓いを立てていた。それはダナニスの巧みな言葉により、彼らは洗脳された様なもの。


自衛隊やプロスポーツ選手の卵としての華やかな未来。それがダナニスによって閉ざされてしまった事も、今の部下達にはどうでも良くなってしまっていた。


「僕も腕を磨かなければいけませんね」


社長室で外を眺めながら呟いたダナニス。彼は唯一腕がある射的を更に磨く為に国内外を問わず専門の講師を捜した。ライフルだけで無く、拳銃、更には弓道も。


一方で框矢の行方も捜す。あの晩の後、框矢は会社を辞めてしまっていたのだ。


「框矢の行方を捜して下さい。住まいよりも、彼の年で就職出来る職場を洗った方が早いです」


確か框矢は19歳になるはず。未成年でこの近辺で働けるのはアルバイト、就職ではもっと絞られる。


そんな事をめまぐるしく頭で考えながら、部下に指示を出すダナニス。そうして暫くして。ダナニスは框矢の職場を洗い出した。警視庁のSP、第一班Sチームに所属し、班長は鮫島武司と言う事まで全てを。


だが分かった所で、今は何も出来ないのだ。一般企業ならともかく警視庁は国家機関だ。更にSPは警察官と同様に、武器の所持が許可されている職。


素手ですら戦闘センスや武力があると分かる框矢が、武器など持ったらどうなるか。そんなもの、想像しなくとも分かるのだから。


再度框矢の居場所を見つけたと言う喜びよりも、自分が手が届かない所に彼が一足先に辿り着いていたと言う屈辱感が優っていた。そして更には框矢の現在住まいとしている場所すら分からない。框矢は別にダナニスを出し抜く為にSPを選んだわけでは無いが、結果としてそうなった。


そして框矢が一緒に住んで居る影人のお陰で、古ビルの一室を知られずに住んでいるのだった。

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