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マガイモノ〈未改訂版〉  作者: 海陽
マガイモノ
2/60

プロローグ 済

カチッ


その音の直後、爆発音を轟かせて一つの建物が崩れる。『孤児院 FARM』。噴き上がる紅蓮の炎の中で、分厚くそこらの火事になど負けなさそうな木製表札も呆気無く壁から剥がれ延焼し、文字だけが原型を留めていた。その建物の周りで無表情で統一された制服に身を包む男達の右肩には、拳銃をモチーフとした刺繍がしてあった。そしてそこには『GBP』の鈍銀の刺繍も見てとれる。


GBP。


それは、Government Body Policeの略。政府直轄の極秘警察である事を示していた。極秘であるが故に、その存在は日本警察の蓑に隠れて国民すら知らない。

政府の命を受ければ何事であろうともそれに従う。そんな彼らの主な任務は、政府が敵、または国家悪となり得ると指定した者や団体の殲滅と対象物を捕らえることである。そこに情は微塵も無い。眉一つ動かさず、冷徹に相手を刈り取っていく……今回、その対象となったのがFARMだった。


明らかに意思ある異臭を撒き散らす煙火に紛れてGBPの目を掻い潜り、建物内から四方八方に散って行く人影。その数、数十人。中には手を取り去る者も居り速度にばらつきがある。どう見ても大人とは言えない彼らは、表向きは孤児院であったFARMに集められ最低限の教育と生活を受ける一方で、違法な生体実験の検体として人とは言えぬ扱いを受けて来た未成年者達。

多くの仲間を失い人間としての扱いも受けられず育った彼らは、感情に乏しく五感は正常でもその声無き声を無視する事に長けている。言わばFARMの『成功例』。特定能力に特化した者、他物に擬態が可能な者。化学が発展し平和な日本においてその存在は異端の何者でもない。


そんな存在を精鋭揃いのGBPがそれを見落とす筈もなく、即座に追手が掛かったと思えばあっという間に彼らの大半が『保護』の名の下に駆逐されて行く。幹部や研究者達は言わずもがな。

FARMは東京に施設を構えていた。それなりの規模の面積の為に、その敷地は比較的都心に近いながらも密集地を避けた閑散とした場所にある。違法と即露見する人体実験を秘匿する最大の理由だが、表向き良心的な孤児院であるのだと銘打ち周囲に認知されている。そのぼろが出ないようにする為に。


大規模なこの火災は『花火中の職員の監督不届きにより、火花が飛び散ったことに気付かず延焼。既に就寝していた児童や職員も居り多数の死亡者が出た』と尤もらしいシナリオで各社新聞に出回った為、孤児院FARMの真相が世間に広がる事は無かった。

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