話したいこと
「……やばい、はぐれた」
場所は水族館。ついさっきまで二人と見て回っていたんだが……。
「人がトイレ行ってる間にいなくなるか普通?」
いや、別に待っといてと言ったわけじゃないけど。ごめん、ちょっとお手洗い行ってくるって言っていなくなったやつを置いて先に進むだろうか?
(……まぁ別にいいか)
もともとそこまで乗り気ではなかったし。雪奈の面倒も瑞菜がいれば大丈夫だろう。
「……大丈夫だよな?」
検証1:雪奈と瑞菜の仲は良くない。というより雪奈が一方的に警戒してる。
検証2:はたから見て雪奈は美少女と言って差し障りない容姿をしている。
検証3:瑞菜の容姿は幼い。男よけにはならないし、むしろその容姿に近寄ってくる奴のが危険。
「…………探すか」
流石に不安だ。
「でも……ここ無駄に広いんだよなぁ……」
といっても別れてそんなに経ってるわけでもない。急げばすぐに追いつくだろう。オレはそう思い先へと進むのだった。
「どうしてお兄ちゃんを置いていくの?」
「んー、雪奈ちゃんと話したかったから」
場所は俊行と別れた場所からそう離れていないところ。彼と別れた二人は微妙な雰囲気の仲話しだす。
「私と……? 何のようなの?」
「とーくんと雪奈ちゃんを見てられなかったから。どこかで二人きりで話したかったの」
「……だったらお兄ちゃんと話せばいいのに」
「あはは……だってそんなことしたら雪奈ちゃんが怒るでしょ?」
「むぅ……そんな子どもじゃないもん」
子どものようにむくれる雪奈に瑞菜はまた笑う。
(……なんでだろうなぁ。私、この人のこと好きになれないのに……この笑顔を見ると)
自分が今の状況に妙な安心感を覚えているのを雪奈は感じる。
「ねぇ、雪奈ちゃん。雪奈ちゃんって私のことが嫌いだよね?」
「……別にきらいじゃないけど」
ただ単純に、雪奈にとって瑞菜が恋敵だった。そのようにして出会ったから心を許すことができなった。
「じゃあ、許せない?」
「それは…………うん」
瑞菜が俊行を振ったこと。そもそも付き合ったこと。客観的に見てそこに善悪はなく、むしろ悪とするなら俊行のほうだろう。それでも雪奈はそのことを許すことができなかった。
「いきなり現れて、いつの間にかお兄ちゃんを私から奪って、勝手に捨てて……うん。本当はそんなんじゃないってわかってる。それでも私はそうとしか思えないから」
白沢雪奈。この少女のありかたはどこまでも盲目だ。自らの内側にあるものしか見えない限定的な盲目。それは二度と家族を見失わないためなのだろう。それだけを見て、他は理解した上で無視する。
「そうだね。そう考えるのが雪奈ちゃんらしいし、私自身それを全部否定はできない。私が勝手に捨てた……それはきっと真実だから。でもね……」
瑞菜は雪奈がそう考えるのは仕方ないと思う。けど。
「そんな考えだったからこころさんはいなくなったんじゃないかな?」
「……どういう意味?」
「うん。今日はその事を話したくて誘ったの」
そう言って微笑む瑞菜の事を雪奈は理解することができなかった。




