55食目、海老粥
海老粥は、店長である俺が作る。
下処理として海老の頭と剣先を切り落とし、殻を剥く。尻尾を切り落としたら、背中に切り込みを入れ背ワタを取り除く。
背ワタが残っていたら苦味が生じ、不味くなる。背ワタが取れたら、良く洗って水分を拭き取る。
生姜は微塵切り、葉ねぎは斜めにカットすれば、下処理は完了だ。
土鍋をコンロにセットし、カイトから買ってる《水龍の涙》という高級水を注ぎ入れ、冷や飯に海老のガラから取った濃厚スープと蝦油を数滴入れ、火を点火する。
最初は中火で、グツグツと沸騰し始めたら弱火でジックリと焦げないように掻き混ぜながら煮詰める。
煮詰めてる間、フライパンに蝦油を引き、海老と葉ねぎを炒める。同じ海老なだけに海老の香りが凝縮され香ばしく口元がニヤけてしまう。
海老と葉ねぎが焼けた頃、ちょうど粥もコトコトと煮詰め終わり、コンロから引き上げ焼いた海老と葉ねぎを盛り付ける。
最後に蝦油と海老の殻を乾燥した粉を回し掛ければ完成だ。土鍋の蓋を閉め、提供する。
「お待たせ致しました。海老粥になります」
ユカリの前に置かれた土鍋の蓋を開けると、これでもかってくらいに濃厚な海老の香りが漂って脳にズキュンと刺激する。
香りを嗅いだだけで口角が上がってしまう。目元もトロトロに蕩け、一瞬意識が飛び掛けた。
「これが海老の香りなの!香りだけで飛んじゃいそう」
香りだけで、こんなに絶頂に達しそうなのだ。食べたら、どうなってしまうのか想像出来ない。
「い、頂きます」
レンゲで掬い、パクっと1口放ばると海老の旨味と香りがズキューンと脳内に駆け巡る。
これ程に海老を強く感じた事は今までにない。そもそも海から遠く離れてるため海鮮物を食べる機会が、ほとんどない。
いや、ここだけは例外かもしれない。
「エールって、ありますか?」
「はい、ございます。当店では、生ビールと呼んでおります」
「では、それで」
お粥だが、病人食で食べるお粥とは違って、きっと合うに違いない。
「お待たせ致しました。生ビールでございます」
「ひゃっ!冷た!」
キンキンに冷えており、綺麗な黄金色でいて泡も際立っている。これが美味しくない訳がない。
ゴクゴク…………プハァ
「これは美味しいわ。今までのが、まるでションベンと思える位に。エー………生ビールお代り」
「はーい、ただいま」
きたきた。海老粥をレンゲで放り込み、生ビールを流し込む。本当に堪らない。
ただ、まだ試してない事がある。まだ海老の身を食べてない。米だけで、こんなに美味しいのだ。海老そのものを食べたら、一体どうなるのか?
想像出来ない。
「はぐっ!旨っ!香ばしくて、身がプリプリだわ。これは生ビールに合わない訳がない」
ゴクゴク………プハァ
「あぁぁぁぁ、幸せ」
子供2人を見ると無我夢中で幸せそうに食べてる。それに私の血を受け継いているからか?
まだ小さな身体なのにお代りを数回している。私の子供の頃は、貧しいかったため食べれない時もあったが、冒険者になってからは稼いだお金はほぼ食費に消えていったのを覚えている。
病気になってからは、2人に辛い思いをさせた分、腹いっぱい食べて大きく成長して欲しいのが親心だ。
「母ちゃん、それ美味しいのか?」
ユーリが興味津々とビールジョッキを見てる。ちょうど空になり、追加を頼もうとしたところだ。
「これは、子供のユーリにはまだ早いわ。大人の飲み物よ。大人になったら飲みなさい」
「大人って、いつになったら大人なんだ?」
「後10年は経たないとね」
まだ10歳にも満たない子供にエールもとい生ビールを飲ませたら大変な事になる。
それに大人になった子供らと一緒に飲むお酒は格別だろう。恐らく、子供2人もお酒好きになるに違いない。何故なら、自分の血を受け継いでいるのだから。




