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うたへうたえ  作者: うらひと
3章

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9/9

3-C 『わがままなうたへうたえとあなたこそが私に教えてくれたのだから』

禁 複製転載・AI学習

 一曲目、『ラッシュ!!』。

 二曲目、『星の忘れ物』。

 ここまでは、()()の関わった曲。そして、二曲目が終わったとき、しんみりとした空気がメンバーに流れる。

「ええと、『星の忘れ物』でしたー!」

 (かん)(せい)がフロアを満たす。息の上がった()()が次の言葉を探している。()()が意を決してMCを(つな)ぐ。

「――どうする? 私でもいい?」

「……うん!」

 ()()が手を挙げると、スポットライトと共に、視線が集まる。

「二曲目は()()ちゃんの作詞だったんですけど、三曲目は私と、実は色んな人にサポートして(もら)った、私にとって、初の作詞です」

 すると、『おおっ』と期待の声が上がる。

「でも、一番伝えたいメッセージは、私の一番得意な形で、()()ちゃんに送りたくて」

「えっ……」

 ()()が視線を向けると、()()()(じり)にある光が大きくなった。そんな(かの)(じょ)に、()()はふわりと(ほほ)()む。

「こんなに自分の気持ちを出したことがなくて、でも、こうやって(さそ)ってくれた()()ちゃんにはすごく感謝していて、――その気持ちを、以前からやっている『短歌』、『五七五七七』の詩に()えて」

 興味を示した観客の声が()んで、一呼吸置いた。

「『わがままな うたへうたえと あなたこそが 私に教えて くれたのだから』――。最後の曲、『うたへうたえ』。よろしくお願いします」

 ぽろぽろと(なみだ)をこぼす()()(いっ)(たん)置き去りにして、()(うん)の呼吸で、当初の予定とは異なる()()()()から始めた。


――わがままな うたへうたえと

(さけ)ぶあなたはキラキラしてて

分けてほしくて私も(さけ)びたくて

歌いたくてこの歌を送るよ


 (なみだ)をこらえる()()がギターで乗り、歌詞を()みしめる(あん)()のキーボードが()()い、(ごう)(ほう)代わりのドラムを(はる)()(たた)き、ふたりの背中を()す。


――今なら、思い切り歌える。


 体まで()()がるような、どこまでも飛んでいけそうな(ここ)()()いていてぐんぐんと前に進める、そんなフレーズ。

 照明が(まぶ)しい。演奏前の真っ白なノイズの代わりに、()()(いっ)(しょ)(さけ)ぶ。(あこが)れの気持ちが、そんな照明の光に()けていく。バスドラムの音と、自身の()(どう)の区別がつかない。

 どれだけの仮歌詞をゴミ箱に捨てただろうか。(はる)()と飲んだ(かん)コーヒーの香りが鼻を通る。

 ブラック派の(あん)()は、その味に比べてずっと(やさ)しく見守る人で、(ぼう)(とう)のMCの件もライブハウスのスタッフさんに取り次いでくれた。

 従姉(いとこ)(つかさ)には感謝しきれない。(かの)(じょ)自身の複雑な気持ちはあれど、()()の気持ちを()んで作詞を手伝ってくれた。

 そして、()()は――。


――ありがとう これからも よろしくね

 全員で最後の音を()いた。全力で、やかましくて、わがままな音。 顔を上げ、歌奈と目を合わせる。()()(うれ)しそうで、ぼろぼろと泣きはらしていて、それに()()もつられる。

「……もー! ずるいよぉ……!!」

「ごめん、でも、ほんとに――」

――大好きだから。


***


 その日の日記に、バンドメンバーが寄せ書きをくれた。


『姉貴が当ててたペアチケット、(ゆず)ってくれるってよ! (はる)()

『↑現地のおみやげリサーチしといたから、メッセージ送るね (あん)()

『みんなグルだったの?! おみやげあげるもんかー!! ()()


 そのやりとりにくすくす笑いながら、静かに日記を閉じて、ぐっと()さえた。


『見つめあい支えあっても足りないの(うれ)しい気持ちでいっぱいだから ()()


―完―

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