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君と過ごせる魔法のような日常  作者: 菜乃音
第三章:record with you

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百二十六:秘密探し開幕

 秘密探し当日、曇りなき青空が広がり、鮮やかな光が世界を照らしている。

 そんな晴天の中、四人は学校で合流し、絶え間ない笑みを宿していた。


 世界を渡る流星が休みの日と被っていたのもあり、校内に他の学生の姿は見当たらない。


 心寧は誰よりも楽しみにしていたのか、ツクヨの開始の声がかかると同時に、常和の探すものを隠しに行っている。


 またツクヨも、探すものの安全を考慮し、陰ながら見守るように心寧の後を追って行った。


 教室に残った灯と常和と一緒に、清は秘密探しの全貌を再度確認し終えた後だ。


 探す順番は、常和、心寧、清、灯といった感じになっている。そのため、三番手に灯の隠すものを探した後、灯に清の気持ちを探してもらえる形のようだ。


 朝からテンションが高めな雰囲気なのもあり、世界を渡る流星を見る頃には疲弊してしまうのではないか、と清は思ってしまう。


 清としては、秘密探しで灯の隠すものを探すのも楽しみだが、想いを伝えた後に見る星の世界を堪能したいと思っている方だ。


 首を長くして心寧の帰りを待っている常和を横目に、清は机にもたれかかりながら口を開く。


「心寧、楽しそうだな」

「行事類は誰よりも率先して楽しそうにこなすからな……」

「……ああ、過去は一人だったんだよな」

「清があまり気にするなよ? 俺と心寧は今が楽しいんだから!」


 と、明るい笑みを浮かべる常和は、過去は過去と割り切っているのだろう。


 話を聞いている限り、二人はお互いに支えてきたからこそ、今を受け止めて立っているのかもしれない。


 ふと気づけば、灯が清の隣に立ち、こっそりと顔を覗かせて聞いている。


「心寧さんが率先してくれたからこそ、こうやって楽しくできているのですよ」

「星名さんの言う通りだな!」

「心寧には感謝しかないな」

「感謝を忘れない清くん、素敵です」


 灯との会話を聞いていた常和はむず痒そうに、苦笑して表情を誤魔化していた。

 俺を焼け野原にするなよ、と注意してくるほどだ。


 灯との何気ない会話であるが、常和からしてみれば毒だったのだろう。


 灯がうっすらと頬を赤くした時、教室のドアが勢いよく音を立てる。

 音鳴る方向を見てみれば、特徴的なビーズの髪飾りを付けた少女……心寧が嬉しそうに常和へと近づいてきていた。


「おまたせー! 準備できたよー!」

「心寧お疲れ、偉いぞー」

「えへへ」


 さらっと目の前でイチャつける二人は、通称バカップルとでも言うのだろうか。

 常和が心寧の頭を撫でている際に、心寧はちゃっかりとヒントの紙を渡していた。


 イチャついていたとしても、やる事に抜け目ないのは流石だろう。


 初陣は常和になるため、こちらの番になった際の見本と言える。


「ヒントをもらったし、読み上げるかー」

「早くやろうやろう!」


 常和は急かす心寧の言葉にも慌てず、ヒントの書かれた紙を開いていく。


「ヒント内容は……『ヒント―』って書いてあるな!」

「……ヒントってどういう意味だ?」

「清、ヒントはヒントだ……最後が伸びてるから、風の向くままに的な感じだろ」

「さあ、どうだろうね?」

「俺と灯はついて行けそうにないな……」

「清くん、今は二人の番ですし、二人が分かればそれでよいかと」

「それもそうだな」

「とっきーは察しが良すぎるから、変にヒント出しすぎると最速で終わるからね」

「俺の風魔法のようにな」


 最後に星が付いていそうな常和の発言に、三人は笑いをこぼした。

 常和が「とりあえず感覚で探すか」と言った為、四人で教室を後にする。その際、二人一組のようにペア同士で自然と手を繋いでいた。




 数十分後、常和は二つ目のヒントを得て、ようやっと心寧が隠した場所までたどり着いていた。


 清は問題提供者であり、事前に心寧の隠すものと位置を知っており、本当にヒントだけで探し当てる常和には驚かされている。


 一枚目の追加ヒントが『あっちこっちー』となっており、二枚目が『鬼さん音の鳴る方へ』なのだから。


 心寧が隠したのは体育館の中央で、心寧お手製の箱で空間が軽く歪んでいた。


 常和は箱を手にし、疲れたように息を吐きだしていた。


「心寧、やっと見つけたぜ」

「あーあー、ばれちゃったー」

「常和、よくあのヒントで見つけ出せたな……」

「心寧さんのヒント、もはやヒントなのか疑問でしたからね」

「あかりーが言う?」

「はは、二人とも落ちつけって。今までのヒントは、魔法の庭で過ごした箇所になってるんだよ」

「過去となれば、俺と灯が分かるはずもないな」


 常和は「そういうこと」と言いながら箱に手をかけていた。

 ふと気づけば、ツクヨも近づいてきており、本当に遠くから見守ってくれていたのだろう。


 常和は開けた箱の中身を覗き、口角をあげた。箱の中に手を入れ、こちらにも見えるように掲げて見せる。


 心寧が常和に探させたものは『一日中一緒に過ごせる券』と書かれた紙だ。


「心寧、見つけたぜ」

「とっきーおめでとう! あ、その券は高校卒業したら永続だからね」

「当たり前だな」


 そう言って、常和は目の前で、心寧を後ろからぎゅっと抱きしめてみせる。

 目の前でナチュラルにイチャつかれたのもあり「ええ!?」と灯が声を漏らすほどだ。


 普段なら心寧から常和にイチャつく様子が多いため、常和からという予想外の行動に動揺したのだろう。


 常和の腕は心寧のふくらみの近くにあり、また何か言いたそうな目でこちらを見てきている。


「清……恋人同士だから、柔らかさを堪能できるんだぜ」

「恋人ってそういうものなのか?」


 高らかに自慢げにする常和に、流石にため息をつくしかなかった。


 明るく自慢する常和を注意するかのように、心寧がぺちぺちと常和の腕を叩いている。しかし、嫌な顔は一切していない。


「とっきー、あかりーに失礼だよ」

「心寧さん……どういう意味で?」

「まことーがあかりーを抱きしめられない、って意味で言ったんだけど、期待しちゃった?」

「分かりました、後で詳しくお話ししましょうか」

「ええ、今回はあかりーの自滅でしょー」


 清が二人の会話を止めず苦笑していれば「笑ってないで止めてくださいよ」と言いながら、灯は呆れたような視線を送ってきていた。


 灯は灯のままでいいんだ、と言って頭を撫でて宥めれば、灯はとろけたように表情を緩める。


「……あれだけやってて気づかないのがおかしいんだよなー」

「まことーはナチュラル鈍感だからねー」

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