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君と過ごせる魔法のような日常  作者: 菜乃音
第三章:record with you

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百十一:親友式、仲の保ち方

 休日となり、常和と心寧が朝から清の家に訪れていた。


「おはよう」

「よ、清、おはよう!」

「まことー、おはよー! あかり―は?」


 朝から勉強会なのもあり「お昼を作っている」と言えば、心寧は分かりやすい程の笑みを浮かべていた。

 灯の料理は常和や心寧も認める程の美味しさを誇っており、毎日食べている自分は幸せ者だろう。


 二人をリビングに通せば、灯はちょうど仕込みが終わったらしく、心寧と笑顔で話していた。

 そんな灯の様子を見つつ、清はソファ前のテーブルを片付ける。

 それぞれが勉強したい教科の教科書を開き、ノートを置いたところで勉強会は始まりを向かえた。


 清は以前と同じく、常和に勉強を教える形となっている。


「とりあえず、どこからやるかだな」

「常和はまず、やる気があるかだろ」

「今回はあるから安心してくれよ」


 苦笑しながら言う常和は、心配しなくとも大丈夫だろう。


 ふと灯と心寧の様子を、清はちらりと見た。

 お互いに勉強できる者同士であろうと、分からない箇所を徹底しているのを見るに、今回も本気だと窺える。

 どうやって灯を超えようか、と悩んでいれば、常和が肩を叩いて呼んできていた。


「なー、清」

「常和、どうした?」

「今回のテスト、どこまでが範囲なんだ?」

「そう言えば知りませんよね」


 灯も聞こえていたらしく、不思議そうに首をかしげていた。また、心寧も思い出したように「あー」と言っているのを見るに、本当に知らなかったのだろう。

 範囲を把握していない上で勉強を進めていた二人は、ただただ勉強の鬼かもしれない。


 常和は、授業中のほとんどを寝ている為知らないのは仕方ないとしても、起きている三人も知らない状況だ。


「知らないよねー」

「心寧、ツクヨ先生に連絡取れるか?」

「うん、やらかしている張本人に聞いてみるね」

「心寧って連絡先知っていたんだな」

「心寧さん、ですからね」


 心寧の不思議さに苦笑していれば、心寧は早々と席を立っている。

 連絡よりもツクヨ本人に直接聞いてくるらしく「少しだけ時間がかかるー」と言い残してリビングを後にした。


 心寧が戻ってくるまでの間、教科書でも読み進めるか、と思っていれば、灯が清の隣に移動してきている。

 常和の前ですら近い距離感は慣れたものの、常和がにやにやしているのは腑に落ちていない。


 灯は座る場所が安定したのか、不思議そうに常和を見ている。


「あの、古村さんは……どうやって心寧さんとの仲を保っているのでしょうか?」


 清は思わず息を呑んだ。

 灯の控えめながらの疑問に対して、常和は上に腕を伸ばした。

 リラックスしている、というよりも、どう答えようか悩んでいるのだろう。


 魔法合宿時、常和と心寧の過去からの関係を聞かされたものの、今の関係の保ち方は聞こうと思わなかった。

 仲が良い二人の間に水を差すようで嫌気があったのと、清は現在、一人の少女に思いを寄せていたのがあったからだろう。


 未来に向かう間、何があっても大切にしたい……そんな一途の思いだけだったのだから。

 ふと気づけば、常和は考えがまとまったのか、真剣な表情で清と灯の方を見てきている。


「あれだな……お互いに束縛をせず、鳥籠から抜け出してる感じかなー」

「鳥籠、ですか?」


 灯は首をかしげているが、清としては納得がいくような感じはしている。

 心寧の父親と常和は対立するような性格でもある為、心寧の家を鳥籠、と称しているのだろう。


 心寧の父親と一回だけ会ったことがあり、真面目で凛とした人、という印象だ。

 常和は首をかしげている灯に苦笑しているが、こちらを見ている目は気まずそうにしていた。

 清は息を軽く吐き、灯に小さく耳打ちをした。


「常和は心寧のお父さんと相性悪い時があるから」

「え、ああ、なるほど……」


 灯は気まずそうに聞いたことを常和に謝っていたが「良いってことよ」と広い心で常和は許していた。

 常和の場合、ただ単純に心寧の父親と合わないらしく、嫌っているわけではないらしい。


「でもまあ……正直、星名さんは仲を保つ心配はいらないと思うけどな」

「……え?」


 灯は驚いたような声を出し、うっすらと頬を赤くしている。

 常和の言葉が誰に対してかは不明だが、にやにやしてこちらを見てきているあたり、確信犯だろう。


 灯の事は一途と言えるほど好きになっているが、気持ちを言葉にして伝えていない。

 また清としては、なぜ灯がもじもじして頬を赤くしているのかが不思議だった。

 常和の言葉が刺さるのは清だけのはずで、灯には関係ない筈だ。


 常和が、こちらの好きな相手を言わなかっただけいいが、問題はそこでは無いだろう。

 清と灯はお互い、相談相手が常和や心寧であるため、思い当たる節があるのかも知れない。


「常和、何で俺を見る」

「うーん、なんでだろうな?」

「……清くん」


 灯が小さくこちらの名を呼び、服の袖を優しく引っ張り、肩に顔を隠してくる。

 余計なことをしてくれた常和を軽く睨み、空気がひりついた中「聞いてきたよー」と和むような声が玄関から聞こえてきた。


 心寧がリビングに姿を見せれば、何があったの、といった感じで首をかしげている。

 心寧が居なくなった後の話をすれば、納得したように「あー」とうなずいていた。


 心寧は携えていた資料紙をテーブルの端に置き、胡坐をかく常和の上に収まるようにして座る。

 目の前でイチャつき始めそうな二人だが、おそらく大丈夫だろう。


「とっきーとまことーは仲が良いし、まことーとあかりーは本音をいい加減口に……」

「ははは、心寧を震えさせんなよー」


 心寧が余計な事を話す前に魔力を膨大したせいか、心寧は常和の上で怯えるように震えたらしい。

 また、その時に灯も魔力を高めたらしく、それも重なって恐怖があったのだろう。


 清としても、心寧の言っていることはごもっともだと思っており、灯に本音を伝えようと考えている。

 灯が誰かほかの人の手に渡る前に、自分の傍に居てもらうためにも。


「二人とも、冗談だからね」

「ふふ、分かっていますよ」

「あかりー、目が笑ってない」


 灯は微笑んでいるが、明らかに雲がかかっているような笑みだ。

 それでも、勉強になればいつも通りの笑みになるあたり、臨機応変に対応しているのだろう。


 心寧から渡された資料に目を通していれば、常和がにやにやした様子でこちらを見てきていた。


「……なんだよ」

「お二人さん、微笑ましいですのー」

「……心寧を抱きしめながら言われても、信用性ないぞ」

「じゃあ、まことーはあかりーを抱きしめればいいんだよー」

「なんでそうなる」

「そうそう、心寧は俺の、だからな」


 ふと気づけば、灯がこちらをじっと見てきていた。


「抱きしめますか?」

「灯は話に乗るなよ」

「ふふ、冗談ですよ」


 灯から心臓に悪い冗談を受けたところで、勉強会は再開となった。

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