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君と過ごせる魔法のような日常  作者: 菜乃音
第三章:record with you

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百一:罪になりうる鈍感さ

「え、花畑の場所?」


 花畑の所在地を心寧に聞いてみたところ、開口一番に不思議そうな反応をされた。

 四人は現在自主学習の時間で図書室を使っており、周りに人が居なかったのは幸いだ。


 唐突に問いかけたこちらも悪いが、空間に軽く声が響き渡るとは思わないだろう。

 清が前ぶれを一切無しで聞いたのもあり、隣で見ていた灯が苦笑いしている程だ。

 心寧が首をかしげている中、常和が呆れたように口を開いた。


「あれか? 結構前に心寧が行ってきたって言ってた、花畑の場所か?」

「あ、すまない。その場所がどこなのか聞きたくて」

「それの話ね! 肝心なところが抜けてるから困惑しちゃったよ」


 主語が抜けて話してしまったこちらが悪いため、心寧から呆れた目で見られるのは仕方ないだろう。

 そして、心寧は花畑の場所がどこにあるのかを丁寧に教えてくれた。


 花畑に名前はないらしく、魔法世界でも唯一無二の観光スポットとしても有名らしい。

 清達が住んでいる町から隣町のはずれに、広々と花が咲き誇っている場所が存在する、と心寧が教えてくれた。

 清と灯はこの町から外の町には出たことが無いため、聞くだけでも興味が湧いていた。


 そして、近くには大型ショッピングモールみたいなところがあるとまで言っており、ありがたい情報だ。


 心寧は一通り話し終えると、清をじっと見てくる。


「前にさらっと話した事なのに……まことー、よく覚えていたね?」

「ずっと気になっていたからな」

「え! 教えた代わりにさー、なんでいきなり聞いてきたのか教えてよ」

「それは俺も気になるな」


 常和と心寧がニヤニヤして迫ってくる中、清は困惑しかなかった。

 灯と一緒に見に行きたい、という理由を言ったところで、二人を加速させる燃料になるのは目に見えている。

 灯は目を逸らすように、ノートにペンを動かして一定の音を刻んでいる。


 清は逃げられないな、と思いつつも、心にある素直な気持ちを言葉にした。


「期末前の息抜きとして、灯と一緒に見に行きたいと思ったんだよ」

「……え、それってデ――」


 心寧が何か言おうとした瞬間、物と物が当たる小さな音が聞こえてきた。

 音の出どころに目をやれば、灯が顔を赤らめ、手からペンを落としている。

 聞こえてきた音は、灯がペンを机に落としたからだろう。


 清はなぜ灯が顔を赤らめているのか分からず、常和と心寧にニヤニヤされているのが不思議でしかなかった。


(……なんか不味いこと言ったか?)


 灯と一緒に見に行きたいのは事実であり、それ以外の考えは無いのだから。

 心寧は灯の顔の熱を冷ますように手で扇ぎつつ、こちらを見てくる。


「この時期の花……まことーも罪な男だね」

「……なんでだよ」

「花を目にすれば、あかりーなら分かるかもねー」

「清、鈍感でもいいけど、あまり星名さんをのぼせさせるなよ?」

「のぼせさせてない」

「清くんの、鈍感」


 灯が清に呆れたような視線を送ってきているが、清には理解が出来なかった。

 のぼせさせたという自覚が無い清は、隣に座る灯の手を静かに取り、落ちつかせるように優しく手の甲を撫でる。

 常和や心寧から角度的に見えていないが、この場でするような行動ではないだろう。


 そう思っていても、清は気づけば行動に移している。


 灯の頬に白さが戻ってきたころ、常和が口を開いた。


「てかさ、なんで祝日じゃないんだよ?」

「祝日だと、人が多いかも知れないだろ? ……灯と二人の時間を過ごしづらくなるのも嫌だからな」

「真面目なのか天然なのか、不思議な奴だな」


 常和から感心されているようで、貶されている気もするが、清からしてみれば事実を言っただけだ。

 灯との時間を大切にしたい、それ以下でも、それ以上でもないのだから。


「まことーって、案外ちゃんと計画立てているんだねー」

「案外ってなんだよ」

「え、うん……鈍感だから?」


 鈍感イコール計画を立てない、は明らかに違うだろう。

 人混みの中で見る花よりも、静かに咲き誇る景色を堪能したい、という思いも存在している。

 そして、灯の性格上あまり人混みが多いところは好まないだろう、という清の考えだ。


 清と灯は、祝日は家でゆっくりしていたい派のインドアでもある。

 わざわざ人を見るために出かける必要もないだろう。


「清……世間ではそう言うのをデート、って言うんだけど、知ってるか?」

「デートは付き合っている者同士で成り立つものじゃないのか?」

「デートの意味間違ってるし……変なとこで本当に鈍感だねー。いい意味でも」


 心寧にどういう意味か尋ねても、さあね、と流されてしまった。


 清は、デートはお互いが好きでないといけない、と思っている為違いがわかっていない。

 隣でしっかりと自主学習をしていた灯でさえ、軽くため息を漏らすほどだ。


「あかり―はどう思う?」

「……もう、大丈夫ですから」


 灯はそう言って、顔を赤らめながら、再度ノートに目を移していた。

 意味が分からないままではあるが、雑念を捨て、清も灯を見習って勉強に集中する。


「まあ、うちらはやじ馬に行く気もないから、二人で楽しんできなよ。休日なら花畑に人は居ないだろうしね」


 心寧がくれた耳寄りな情報に感謝しつつ、四人は勉強に集中した。

 その後のお昼休憩で、常和と心寧が場所の詳細を教えてくれたのは、言うまでも無いだろう。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 相変わらず微笑ましいけど、清鈍感すぎ!(笑) 常和たちもきっと、いつになったらくっつくんだ、って思ってますよね。 この時期の花畑に何が植わっているのか楽しみです。 [一言] また読みに…
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