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10/10

~仏

「チェリー、いい子でお仕事しているかにゃん?」


 マリエーロが、そう言って入ってきた。

 思わず自分の持っているペンを落とした。

「ふ、副隊長・・・?」

 ストレス・・・やばいんですね!?隣の部屋での事が、ストレス過多になり過ぎたんですね?!

 マリエーロの顔は異様なほどのふにゃふにゃな笑顔であった。

 はて、先ほど真剣な話という名のストレスをしていたはずなんだが、切り替え早すぎじゃないですか?副隊長・・・。

 いや、だからこそ心の安息を求めてそうなったんですね・・・。そうしないとやってられないですよね・・・!。

 それにしても、『にゃん』とか言ってなかった?!

 それって赤ちゃん言葉みたいな『いい子でちゅねー』みたいな感じなの!?

 確かにそこまで小さくないけど・・・。

「・・・。はい、こちらの書類まとめておきました」

「ありがとう!いや~仕事が早くてさすがだね~」

「いえいえ、仕事なのでお礼言われる事ではありません。お話は終わったのですか?」

「あー、そーなんだけど、ねえ、まあ、とりあえずという所かな・・・?隊長が・・・」

 またしても、一悶着あったようだ。

 確かに隣の部屋から、騒がしい音が聞こえ続けていたけど・・・。

 さわやかな薔薇隊長の笑い声とともに。

『いい加減にしようか?ペンラ?』

『・・・ぎゃああああああああ!のおおおおおおおお!!だが、しかーし!まだまだ・・・ゴふっ』


『ご苦労サマンサー』


脳筋隊長のすっごい悶絶するような苦痛の声が響いてきたけど、その後ものすっごい音が聞こえて隊長の声が途絶えたけど。

しかもよく分からないギャグがぼそりと聞こえて来たけど・・・???。

一体誰が言った!?

かなり気になったけど、スルー・・・するしかない・・・するしかっ!

まあ、隊長はかなりいい気味なんて思ったけどそれは内緒です。

 薔薇隊長はかなりの実力者なのだろう。

 まあ、隊長だしね。

 それにこっちの脳筋隊長と比べ者にもならない程、頭キレそうだし。

 薔薇隊長の腹の中は何を考えているのか皆目見当もつかないけど。

 関わらない様にしようと再度思った。

「それはいいとして、チェリー!おやつにしよう!ルル隊長がエルクシーナ店のケーキを持ってきてくれたんだよ!」

 なんだってケーキっ!やった!!甘味ラブ!

 いつ振りだろう。もしかして、前世振りか・・・?!

 今までは結構な頻度でワイルドな食だったような気がする・・・。

 それにママさんはあまり細かいモノが作れなかった・・・。

 ケーキなんて細かいモノは、真っ黒な得体のしれないモノへと退化を遂げていた・・・。

 遠い目・・・。

 そ、それにしてもエルクシーナ店!?

 それって、あの有名な城下の秘密のお店!?

 並んでも、手に入れる事が難しいと言われているお店?!

 何でも、一発芸して気にいってもらえないと売ってくれないって言われている・・・。


「・・・。・・・。・・・」


 ちょっとまって、なんか色々とおかしい。

 なんでケーキ屋さんなのに、そんな入手審査がなくちゃいけないの?

 今さらながらに、かなりおかしいよね!

 う、噂だよね・・・?!

「ルル隊長が買うとき大変だったって、言っていたよ~」

 え?薔薇隊長自分で買って来てくれたの?!

 ぶ、部下が買いに行ったんじゃないの?

「あそこのお店は、なんか変わった入手審査があるらしいですけど・・・」

 マジであるのかなそんな審査方法!

 ちょっと気になったから、何気なーく聞いてみた。

「えー?そうなの?俺はあまり甘い物に興味ないからね。あ、そうそう!ルル隊長がなかなかな出来だったって、すがすがしい笑顔とともに言ってたよ~。意味分からなかったけど、そう言う意味だったのかな?あ、チェリー見て見てきれいだよ、このケーキ」

「・・・。・・・」

 思わず、口元が引きつった事は許してほしい。

 本当に許してほしい・・・。

 薔薇隊長は一体どうやってあの、へんてこりんな審査を通過したのだろうか?

 分からない。全くもって分からない。

 マリエーロが柔和な笑顔で、どのケーキがいいか聞いてくる。

 嬉しそうな顔が見たいのだろうけど・・・。確かに、確かにケーキや甘いものは好物ですよ。

 けどそれよりも、それよりも!

 薔薇隊長はさわやか笑顔で、一体どんな一発芸をかましたのだろうか?

 心底気になります!!


「まあ、あいつのおやじギャグは、本当にくそつまんねーがな」

 いつの間にか脳筋隊長がそこにいて、何食わぬ顔でチェリーが選んでいたケーキを一口で食べてしまった。 

「・・・。・・・」

 ケーキを横取りされたことに多少、むかっ腹が立ったがそんなことに一々目くじらを立てるほど子供ではないですよ・・・?

自分にそう言い聞かせる。見た目は十分子供だけど。

それよりも今は、

え?薔薇隊長・・・。おやじギャグ言うの?!

それが、重要である。

ありえない。

だが、さっきちらっと扉の向こうからありえないギャグが聞こえたのは、現実だったらしい・・・。

「しかも、あの笑顔で言うからさらにこえーんだよ。あそこの隊の奴がどうにかしてくれって、泣きつくほどにな?ギャグ言う暇あるなら俺と戦えって!本当にどうしよーもねー奴だぜ」

 お前が、言うなや!

 心底どうしようもないお前が言うな!

 ほら見ろ、副隊長の何とも言えない表情を!

自分の事心底分かっていないそんな人の、尻ぬぐいしている副隊長の事も考えろ!

 副隊長が涙目じゃないか!!

 そして、ケーキを全部食べようとするな!

 さすがに、そこまで食べるとこっちだって、黙っておけないよ!

 いくらなんでも人の分まで食べるな!

 せっかくの糖分接種を今生での初めてのまともなケーキを!!

 むかついたから、フォークで隊長の手にぶっ刺した。

「ん?おい、おい、チェリー。俺の手はケーキじゃねーぞ?ははは、まちがえちゃったか?かわいい所もあるもんだな~」

 ああ、何てことだ!馬鹿がいる。心底馬鹿がいるよ!

 手に故意に刺したことも分からないらしい。

 しかも結構な勢いで刺しても、貫通しないなんてどんな筋肉なの?!

 あんたもう、人外だよ!

 こっちの人間だよ!

 いろんな意味でどうすればいい?

 どうしたら、色々と分かってくれるの?!

 この調子だと、色々と何度言っても意味ないんじゃないの?


 どうしよう・・・。


 このままじゃ、こっちの血管がまたしてもぶち切れてしまうよ。

 その内、心の中で言っていることがダダ漏れになるよ。

「ほーら、チェリーこれ、おいしいぞ?」

 そう言って、

「隊長、無理やり口に入れなくても自分で食べれますからね!」

「ほーう?そうか?」

「ですから・・・。丸ごと一個、口の中に押し込もうとしないでください。どう考えても入りませんから!」

「何、言ってんだ?こんなにちいせぇ菓子だったら一口で入るだろう!」

 いやあんた、どう考えても無理でしょう?

 口の大きさ見てください。

 こっち、幼児です。

 隊長、あなたは大人です。

 体格がちゃいます!

 かなりの勢いで違いますから!

 そんなやり取りをしていると、副隊長が無言で見つめてくる。

「・・・」

「ど、どうされましたか副隊長・・・?」

 あまりの凝視にたじろぎながら

「それ『あーん』だよね!俺が食べさせたかったのに!!!」

 何とも悔しそうに言った。

 ちょっと待ってください。

 どこをどう取ったら、『あーん』になるんですか?

 ほぼ口の周りからはみ出していますしむしろ、顔面にケーキを罰ゲームのように被ってまいすから!

そんな甘ったるい感じは全くないです。

 ほぼ、無理やりに押し込んでいる状態です。

 しかも、もうちょっと柔らかい感じで言うと単に、幼児にご飯を食べさせているだけになるんだが・・・。

 いや、副隊長的はそれを望んでいるのか・・・?

 けど、さすがにそれは恥ずかしいんですが・・・。

 だって、もっと小さい頃ですら骨付き肉(多分魔獣もどき)を丸焼きにして渡されてひたすら食べていたし。もちろんパパさんとママさんに笑顔で渡されましたが・・・?何か?

 今思えば、あれも色々とNGだったと思う。

 幼児に骨付き肉・・・。

 ワイルドだ・・・。ワイルド・・・。

 そういえば、ママさんにすら直接『あーん』などしてもらっただろうか・・・?

 離乳食・・・あっただろうか・・・?

 いや、覚えてないだけだろう、そう思いたい。

 ワイルドな食べ物しか思い出せなかった。

「どうした~チェリー?なんだ、もう一度食べさせてもらいたいかぁ?アマちゃんだなあ~」

「・・・。・・・。・・・」

 ムカついたのでさらに、フォークを隊長の頭にぶっ刺しました。

 今度は、先ほどよりかなり強めに。

 顔に付いたケーキをふき取りながら、残りのケーキを隊長の届かない所に移動させました。

 最後の一つ位は死守したいのです。

 こんな事なら大人ぶらないで、最初からケーキを死守しておけばよかった・・・。

 それを見ていたマリエ―ロは、ほっこりとした笑顔を向けながら自分の分をチェリーのお皿に移動させた。

 副隊長マジ天使!!

 などと感動していたら、マリエーロがいい笑顔でフォークに刺さった一口サイズの小さなケーキを差し出してくる。

「チェリーはい、あーん」

 えーっと、食べるべきですか?

 いや、ケーキは大好きです!ですが・・・。

 邪気のない笑顔が断りにくいです。

「あ、チェリー頬の所、怪我してるよ?大丈夫?痛くない?」

 はっ!さっきいつの間にか怪我したのか?

 やばい。さっき色々とやらかした事がばれちゃう?!

「ちょっと待っていて、確かここに・・・」

 ばれて・・・ないかな?

「あー・・・、あんまり無茶しないでね。色々大変だけど、無理しないようにね」

 そう言って、カットバン的な物を這ってくれた。

「・・・。・・・。・・・」


 バレテーラ。(←古い)


 え?やっぱりこれってばれてるよね?

 マリエーロに優しく頭を撫でられ、困ったように微笑まれました。

 ワオ。器が大きいよー!

 副隊長い・け・め・ん!

 おっとこまえ!

 惚れそうです!!

 そんな新たな、感情が芽生えようとした時、

「あれ~フォークどこ行った?」

 隊長は刺さったフォークの事を気づいていませんでした。

 頭にぶっ刺さったまま。

 恐ろしいぞ隊長。

 手を刺した時よりも気づいていない。

 頭が鈍い。

 いろんな意味で鈍いからなのか!?


 もう、どうすればいい?!


 念仏唱えても、聞かない・・・よね?・・・。

 実力行使必須。

 けど、ファイトしたら返って喜びそう・・・。

 それも否だ!


 馬の耳に念仏。


 念仏様よ、特殊能力でも発動してくれ!(洗脳)で、もういいよ!


読んでいただきありがとうございます!

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