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狐の嫁入り  作者: 七星瓢虫
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『ぁあ!、心配したんだよ!、お前さん!』


入り口を潜った途端

内所に居た花車さんが二階の遣手部屋に居た遣手さんが同時に、声を上げる

履き物を突っ掛けた花車さんが、小さな肩を抱く

入り口奥の暖簾を潜り、土間に入る


『びしょ濡れじゃないか、寒かっただろう!』


私は、首を振る


『手もこんなに冷たくなって…』


両の手の平で包み込む小さな手に、番傘が握られている

言葉を呑む、花車さんの背後

土間を上がった板敷きから見下ろし、遣手さんが言う


『どうしたんだい?、その傘』

『師範さんに借りたにしても番傘とは、どうも不釣合いだねぇ』


遣手さんを怖がらない、遊女は居ない

私も、特別じゃない


だけど、花車さんにとって私は特別?


『話シタラ、殺ス』


暗闇の中で、男が言う


『オ前デハ、ナイ』

『話シヲ聞イタ者ヲ殺ス、ソシテ喰ッテヤル』


くつくつ、笑う男の声が社内に響く

なすすべもなく立ち尽くす足元に、番傘が放られる


『暫クハ止マヌ、使ウガイイ』

『ダガ、クレテヤル訳ジャア、ナイ』


『返シ二来イ』

『必ズ、一人デ』


地を這う様に

低い、抑揚のない男の声が響く


本気

きっと本気


だから、私にとっても花車さんは特別


小鳥の様に首を傾げ、花車さんを見つめる

その仕草に花車さんは繰り返し頷き、目を細め笑う


『いいよ、もういいよ』

『無事ならいいんだよ、さあ、湯にお入り』


履き物を脱ぎ、板敷きに上がる

畳敷きの広間に入る前に泥塗れの着物の裾を、たくし上げる

直ぐ様、遣手さんが言う


『ずぶ濡れなんだ、脱いでお行き』


なんの躊躇もなく、脱ぐ

幼い体付きの真っ白い肌には痣も傷も、シミ一つない


遣手さんの右口角だけが、上がる


『母親譲りなのかねぇ』

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