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俺の書いたキャラが現れた。そいつを消さないと世界が終わるらしい。―グロキシニアの凱旋  作者: ひろほね
グロキシニア顕現

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第五十七話:グロキシニアの凱旋

夜。


静かな都市。


戦いの痕はまだ残っている。


だが、崩壊は止まった。


灯りが、少しずつ戻っている。


人の気配も。


日常が、戻ろうとしている。


屋上にユウリが一人で立っている。


風が、静かにほほを撫でる。


目を閉じ、内側を感じる。


“いる”。


確かに。


消えていないグロキシニア。


だが前とは違う。


暴れず、静かにそこにある。


ユウリが小さく言う。


「……ただいま」


誰に向けたか分からない言葉。


だが返ってくる。


「遅い」


低い声。だが、敵ではない。


もう、対立していない。


共にある存在。


ユウリが少し笑う。


「そっちこそ」


軽く返す。


その時。


「一人で何やってんだ」


後ろから声。


カイトが屋上の扉にもたれている。


ユウリが振り向く。


「ちょっと確認」


曖昧に答える。


カイトが近づいて隣に立つ。


同じ景色を見る。


夜の街。


静かな光。


カイトが言う。


「……まだいるんだろ」


核心。


ユウリは隠さない。


「うん」


カイトが少しだけ笑う。


「こっちもだ」


自分の胸を軽く叩く。


ユウリが見る。


「分かる?」


カイトが答える。


「なんとなくな」


完全じゃない。


だが、確かに感じる。


グロキシニアの“欠片”が自分の中にある。


ユウリが言う。


「怖くない?」


素直に聞く。


カイトは少し考える。


そして。


「……最初はな、でも今は」


夜空を静かに見る。


「悪くねえ」


完全に受け入れている。


ユウリが少し驚く。


「そうなんだ」


カイトが肩をすくめる。


「消すよりマシだろ」


軽く言う。


だがその言葉は重い。


“消さなかった選択”それが、ここにある。


その時、足音。


レンとファリンが来る。


「ここか、探したぞ」


ファリンも続く。


「こんなとこでサボり?」


少しだけ、いつもの調子。


空気が、少し柔らかくなる。


レンがユウリを見る。


「どうだ」


ユウリは答える。


「大丈夫」


「でも、終わってない」


全員が理解する。


「カイト、物語の続き書けそう?」


ユウリが聞く。


「この世界で物語を書くことは、俺の存在意義に影響する。物理的に書けないだろ?」


ファリンが言う。


「当然ね。創造主がこの世界にいること自体がイレギュラーなのよ。」


冷静に。


「その通りだ」


全員が振り向く。


エヴァは静かに言う。


「今回の件で証明された。物語には”正しい”続きがいる。」


核心。


ユウリを見る。


そして、カイトも。


「カイトを元の世界に返し、続きを書かせるしかない」


この世界のルール。


レンが笑う。


「面倒くせえな」


だが、否定しない。


ファリンも小さく頷く。


「でも、それが現実」


受け入れる。


ユウリが空を見る。


静かに、息を吸う。


そして言う。


「じゃあさ」


全員が見る。


ユウリは、少しだけ笑う。


「一緒にやろう」


レンが言う。


「上等だ」


ファリンも続く。


「やるしかないわね」


エヴァが静かに頷く。


「任務として受理する」


あわただしい足音がする。


「見つけた!」


デイジーが駆け寄って来る。


「カイトを元の世界に戻す方法、見つけた!」


全員がデイジーを見る。


「マジか、どうやって?」


レンがタブレットを覗き込む。


「一番初めにユウリがカイトを見つけた条件、”強い歪み”を再現するの。」


「コア・シンクロニクスのターミナルならできる。」


エヴァがいぶかしげな表情で見つめる。


「期待値は?」


「プラスよ。ただどの世界につながるかが未知なの。」


カイトが言う。


「どの世界につながるかくらい、物語固定使ってもいいんだろ?」


デイジーが答える。


「この世界の存在値が減るから、戻ってこれないけど。」


「急にさみしくなるな」レンが言う。


ユウリが聞く。


「カイトとは、もう会えないの?」


「二度と会えないだろうな」エヴァが冷静に答える。


「そこらへんは向こうの俺が決めることだな。」カイトは笑う。


「世界の概念を変えられるのは向こうのお前だけだが、もう干渉するな」


その言葉で全員が覚悟を決める。



――コア・シンクロニクス ターミナル


強く脈打つような青い光が高速で回転している。


アルトがモニターを見つめている。


「一度歪み始めたら、戻すまでに時間がかかる。奴らが出てくるぞ。」


「ラスボス討伐済みだから、大したことないって」レンが言う。


「油断するな」エヴァがくぎを刺す。


デイジーがタブレットで数値を計算している。


「いけそう。カイト、準備して。ユウリは途中までカイトを誘導して」


二人とも頷く。


「私が無理やり連れてきて、また戻しに行くって、なんかごめんね。」


「振り回されてはいるな。でも楽しかったし、会えてよかった。」


「私も、会えてよかった。続き、待ってるね。」


エヴァが近寄って来る。


「カイト、少しいいか。」


「どうした。さみしいってわけじゃないだろ?」


エヴァは動じない。


「いじるな。いいか、お前が何を書こうがお前が創造主だ。すべて正しい。」


「だから、迷わず書け。お前が書きたいものを。私たちはどんな結末でも受け入れる。それが物語だ。」


「わかった。」カイトはただ頷いた。


「歪みが不安定になってきた。そろそろ来るぞ、全員準備しろ。」アルトが叫ぶ。


レンとファリンが戦闘態勢をとる。


「カイト、またな」


「また会いましょう」


「ああ、また。」


青い光が激しく散らばる。耳鳴りがして、周りの動きが止まったように見える。


「カイト!いくよ!」


ユウリだけなぜか普通に動いていて、体を支えてくれている。


均衡装置だった影響だろうか。


意識がはっきりとしないまま、ペンを動かす。


「物語固定:カイトは元の世界に戻る。」


―また会おうね、カイト


最後にそう聞こえた気がした。


気が付くと自分の部屋で寝ていた。


ガラスは割れてない。


何もかもがいつも通りの部屋。


日時を確認するが、数時間も経っていない。


ただの居眠りで、全部夢だったのか。


机の上のグロキシニアが揺れる。


急に思い出して、洗面台の鏡を覗き込む。


「ちょっと黒い…マジか」


部屋に戻って、窓を開ける。


その瞬間、風が吹く。


優しく。


夜の空気が、流れる。


風で机のノートが開く。


「凱旋だな」


心のどこかで聞こえた気がする。


カイトは少し考えてから、ペンを走らせ始めた。


物語の続きを忘れないように。


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