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俺の書いたキャラが現れた。そいつを消さないと世界が終わるらしい。―グロキシニアの凱旋  作者: ひろほね
第三章:再開と亀裂

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第十八話:残された歪み

静かだった。


さっきまでの激動が、嘘のように。


リアクター中枢。


光は安定している。


ターミナルも、正常に稼働している。


流れている。


ちゃんと、循環している。


「……成功、だよな」


カイトが呟く。


誰もすぐには答えない。


視線は、一箇所に集まっている。


ユウリの腕。


ヒビ。


止まっている。


だが消えていない。


「……なんで」


カイトの声は小さい。


「止まったのに、なんで消えない」


デイジーが端末を見る。


何度も、確認する。


「……数値は安定してる」


「リアクターも正常」


「ターミナルも問題なし」


顔を上げる。


「なのに、残ってる」


矛盾。


エヴァが静かに言う。


「残留しているのか」


カイトが首を振る。


「違う」


即答。


ノートを見る。


さっき書いたもの。


間違っていない。


「……あれは“流れなかった”やつだ」


デイジーの目が見開く。


「……どういうこと?」


カイトはゆっくり言う。


「意味を与えて流した感情は消えた」


「でも」


ユウリを見る。


「“意味を持てなかった感情”が残ってる」


静寂。


重い。


ユウリが小さく言う。


「……ある」


全員が見る。


ユウリは自分の腕を見つめる。


ヒビに触れる。


「流せないの」


「どうしても」


カイトの心臓が跳ねる。


「なんでだよ」


ユウリは少しだけ迷う。


でも、言う。


「……分からない」


「でも」


目を閉じる。


「すごく、重い」


「動かない」


その言葉に、ファリンが反応する。


「……それ」


一歩近づく。


ユウリの腕を見る。


「事故の時の……」


レンも顔を上げる。


「……まだ残ってんのか」


空気が変わる。


カイトが聞く。


「事故の感情って、そんなにヤバいのか?」


沈黙。


そして、ファリンが言う。


「違う」


首を振る。


「感情の量じゃない」


「質」


カイトが眉をひそめる。


「質?」


ファリンは静かに言う。


「“行き場のない感情”」


その言葉が、深く刺さる。


「伝えられなかった」


「届かなかった」


「終われなかった」


一つずつ。


「そういう感情は、流れない」


デイジーが呟く。


「……閉じてる」


ファリンが頷く。


「外に出られない」


「だから、ユウリの中に残る」


カイトの手が、強く握られる。


「……じゃあどうすんだよ」


答えは重い。


ユウリが言う。


「……受けるしかない」


静かに。


「最後まで」


カイトが即座に否定する。


「ふざけんな」


強く言う。


「それじゃ意味ねえだろ」


ユウリが少しだけ驚く。


カイトは続ける。


「さっき分かっただろ。流せるんだよ、ちゃんと繋げれば」


ユウリは首を振る。


「違う」


小さく。


「これは、繋げられない」


重い沈黙。


その時、エヴァが口を開く。


「一つ、可能性がある」


全員が見る。


エヴァはリアクターを見る。


そして言う。


「感情の“起点”に触れる」


カイトの目が変わる。


「……起点?」


デイジーが理解する。


「……元の持ち主?」


エヴァが頷く。


「発生源に戻す」


「あるいは――」


一瞬の間。


「直接、意味を与える」


カイトの鼓動が速くなる。


「直接……?」


エヴァはカイトを見る。


「お前なら可能だ」


静かに言う。


「創造主」


その言葉に、空気が変わる。


カイトはノートを見る。


白いページ。


だが、今回は違う。


これは、ただの処理じゃない。


“誰かの人生”に触れる。


ユウリが小さく言う。


「……怖い?」


カイトは少しだけ黙る。


そして、すこし笑う。


「当たり前だろ」


正直に言う。


「でも」


ペンを握る。


「やるしかねえ」


ユウリを見る。


「絶対、終わらせる」


ヒビを見る。


残っている歪み。


これが、最後の壁。


リアクターが、


静かに脈打つ。


まるで、次を待っているように。

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