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俺の書いたキャラが現れた。そいつを消さないと世界が終わるらしい。―グロキシニアの凱旋  作者: ひろほね
第三章:再開と亀裂

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第十六話:足りないもの

静かだった。


さっきまでの戦闘が、嘘みたいに。


リアクター中枢。


ターミナルは、今も淡く光っている。


流れは、確かに戻った。


歪みも、消えた。


なのに。


「……なんでだよ」


カイトが呟く。


視線の先。


ユウリの腕。


ヒビは、止まっていない。


むしろゆっくりと、確実に広がっている。


「……流しただろ。ちゃんと分散した」


「なのに、なんで壊れるんだよ」


誰もすぐには答えない。


重い沈黙。


デイジーが、ゆっくり口を開く。


「……ねえカイト」


「さっきの、どうやって書いたの?」


カイトは少しだけ考える。


「……均等に分けて流す、って」


「偏らないように」


デイジーは頷く。


「それ」


少しだけ間を置く。


「“綺麗すぎる”」


カイトの眉が寄る。


「は?」


デイジーはリアクターを見る。


揺れている。


さっきよりは、安定している。


でも、どこか不自然。


「感情ってさ」


静かに言う。


「均等にならないんだよ」


カイトの思考が止まる。


「偏る、ぶつかる、混ざる」


「だから、人間」


一つずつ、落としていく。


「均等にした瞬間、それはもう“人の感情じゃない”」


その言葉が、深く刺さる。


カイトの手がわずかに震える。


「……じゃあ、どうすればいいんだよ」


答えは、すぐには出ない。


その時。


「……受け止めないといけない」


ファリンだった。


全員が見る。


ファリンは、リアクターを見つめたまま言う。


「流すだけじゃ足りない。誰かが“意味”を持たせないと」


カイトが眉をひそめる。


「意味……?」


ファリンは目を閉じる。


一瞬だけ。


そして開く。


「感情は、ただのエネルギーじゃない。誰かのもの」


「記憶で、理由で、想い」


静かに言う。


「それをただ流すだけじゃ、どこにも届かない」


その言葉。


どこか、痛みがある。


レンが小さく呟く。


「……だから、あの時」


ファリンの肩がわずかに揺れる。


だが、振り返らない。


カイトが聞く。


「……何があった」


重い沈黙。


そして、ファリンが言う。


「事故の日」


空気が変わる。


ユウリの目が揺れる。


レンの拳が握られる。


「歪みが暴走した。感情が溢れて、制御できなかった」


一つずつ、言葉を置く。


「ユウリは全部受けた」


「私たちは――」


一瞬、詰まる。


「……逃げた」


静寂。


カイトの目が見開く。


レンが低く言う。


「違うだろ」


ファリンが遮る。


「違わない」


はっきりと。


「守れなかった」


その一言に、全てが詰まっている。


ユウリが小さく言う。


「……違うよ」


ファリンが初めて振り向く。


ユウリを見る。


「私が選んだ」


静かに。


「全部、受けるって」


カイトの中で、何かが弾ける。


「……それだ」


全員が見る。


カイトはノートを見る。


震えが、戻っている。


でも、止まらない。


「流すだけじゃダメなんだ」


「受けた感情に、“意味”を与えないといけない」


デイジーが目を見開く。


「……それって」


カイトは言う。


「物語だ」


静寂。


全てが、繋がる。


感情。


流れ。


意味。


「ただ分けるんじゃない。ちゃんと繋げる」


「どこから来て、どこへ行くか」


ノートを強く握る。


「それを書かないといけない」


エヴァが静かに言う。


「処理ではなく、解釈か」


カイトは頷く。


「そうだ。ただのシステムじゃ無理だ」


リアクターを見る。


揺れている。


まだ、不完全。


その時、アルトの声が響く。


『……非効率だな』


冷たく。


だが、どこか興味を含んでいる。


『感情に意味など不要だ』


『結果だけでいい』


カイトは笑う。


少しだけ。


「それで失敗してんだろ」


アルトは数秒沈黙する。



そして言う。


『……興味深い』


わずかに。


初めて、変化する。


『ならば証明してみせろ』


『それが最適だと』


通信が切れる。


静寂。


カイトはノートを見る。


次に書くべきものが見え始めている。


ユウリを見る。


ヒビは、まだ止まらない。


でも、確信がある。


「……次で止める」


小さく言う。


物語は、もう一段、深くなる。

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