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俺の書いたキャラが現れた。そいつを消さないと世界が終わるらしい。―グロキシニアの凱旋  作者: ひろほね
第一章:窓の外の少女

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第一話:書けない男の窓を叩くもの

カイトはノートを見つめていた。


途中までの文章。


「―彼女は”すべて”を引き受ける」


時計の音が部屋に響く。


もうどれくらい経ったのか分からない。


そこから先を書こうとして手が止まる。


考えては、言葉が消える。


「……こんな終わり方、ねえだろ」


そこから先がどうしても進まない。


小さく息を吐いて、椅子にもたれた

書きたいものはある。


頭の中には確かにある。


でも、どこかで“違う”と感じてしまう。


――それじゃない。


そうやって何度も消してきた。


カイトは目を閉じる。


浮かぶのは途中で止まった物語。


剣を持った少女、感情の薄い目。


何かを背負っているような、それでいてどこか空っぽな―


「・・・消えるのかよ」


誰に言うでもなく、つぶやく。


その時だった。


風が吹いた。


カーテンが揺れる。


カイトは顔を上げる。


窓は閉まっている。


なのに、揺れている。


「は?」


パキッ。


音がする。


ガラスにひびが入る。


あり得ない。


次の瞬間、窓が割れた。


だが、破片は落ちず、空中で止まっている。


時間が止まったかのように。


その中を”何か”が通る。


少女だった。


ショートカットの、黒い髪。


無表情、感情の読めない目。


カイトより少し年下に見える。


なのに、空気が思い。


まるで、そこにいるだけで世界が歪むように。


息が止まる。


少女は当然のように部屋に入ってくる。


ガラスの中を歩いて、止まる。


カイトを見て第一声「…遅い」


カイトは固まる。


「は?」


少女は気にしない。


部屋を見回すと、ノートに目を止める。


一瞬だけ、目が揺れる。


「…やっぱり」


小さく呟く。


「ずれてる。」


カイトは思わず聞く。


「お前、誰だよ」


少女は言葉を選ぶように、少しだけ考えた。


「ユウリ」


それだけ言う。


「助けてくれ。世界が終わる。」


あっさりと言う。


沈黙の後「…は?」


やっと出た言葉がそれだった。


ユウリは「時間がない」


淡々と、事実を並べるように言う。


「歪みが広がってる。このままだと、全部壊れる。」


理解はできないが、嘘ではないことは分かる。


理由はわからない。


「待て、一回整理させろ。」


「なんでお前がここにいる」


「なんで俺に頼む?」


ユウリは一瞬だまり、ゆっくりと答える。


「…一番、歪んでたから。」


「は?」


ユウリは続ける。


「流れない感情は、歪む。」


「行き場のないものは、溜まる」


一歩近づく。


「だから分かる。」


カイトの目を、まっすぐに見る。


「一番、あんたが歪んでる。」


カイトは思わず視線を逸らす。


「…意味わかんねぇよ」


その時、ユウリの腕がわずかに光る。


青い線、細いヒビ。


一瞬だけ見えた。


カイトの視線が止まる。


「それ、均衡のヒビか?」


思わず口に出る。


ユウリの目が、変わる。


「…なんで、知ってんの」


低い声、警戒。


言った後で、気づく。


「いや、わかんねえ」


頭を押さえる。


だが、言葉は出る。


「ただ…それ」


ユウリの腕のヒビを見る。


「引き受けすぎたときに出るやつだろ」


沈黙。


ユウリはカイトをじっと見つめる。


やがて、小さく呟く。


「…やっぱり。外側。」


カイトが顔を上げる。


「は?」


ユウリは答えない。


代わりに一歩近づく。


近い。


その目の奥に、何かがある。


感情を押し殺したもの。


「…来て。」


手を伸ばす。


「止めないといけない。これ以上、壊れる前に」


カイトは動けない。


理解が追い付かない。


だが、一つだけはっきりしている。


このままだと、本当に何かが終わる。


取り返しがつかない形で。


カイトはノートを見る。


途中までの物語。


「……」


ユウリの手に触れる。


その瞬間、世界が歪んだ。


光、音、感情。


全てが混ざる。


カイトの視線が揺れる。


最後に見えたのは机の上にあるグロキシニア。


まるで、何かを知っているかのように、揺れた。


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