始まり
「――はどうするんだ?」
「さあ? そこまでは言われてないし、適当にここで飼ってる魔獣の餌にでもしたらどうだ?」
「それもそうか」
……なんだろうか。近くから、人の声が聞こえる。
「よいしょっと」
一瞬の浮遊感と共に、今まで感じていた壁の硬質な感触から、何かネチャリとしたところに移される。
「それにしても、コレって百年前の魔道具なんだろ? 結構な値打ちのあるものなんじゃないか?」
「そうだろうけど、何があるか分からないから迂闊に触るなって話だったろ。触った瞬間爆発したらどうするんだ。その魔道具ごと魔獣に処理させようぜ」
……魔道具? 魔獣? 何を言っているのだろうか。よく分からないが、俺はまだ眠い――。
◇◆◇◆◇
「グオォォォォォ!」
「ッ!」
突然の獣の咆哮に、俺は飛び上がるように起きる。
「なんだ!?」
前を見上げると、そこには二メートルは優に越える狼のような魔物が、こちらを見下ろしていた。
……なんだ、この魔物は? こんな魔物は見たことがないぞ。
「グルルル……」
魔物が小さく呻り声をあげる。
ハッと我に返った俺は、すぐに魔法を発動させようと腕に魔力を込め――腕輪のことを思い出す。
しまった、これじゃ禄に動くことも出来ない。数回程度なら噛まれても大丈夫だとは思うが、未知の魔物の攻撃を喰らうのはさすがに避けたい。
ふと視線を周りに廻らせると、ちょうど魔物の後ろに、巨大な鉄格子がはめられていることに気付いた。
ここはこの巨大な魔物の檻の中なのだろうか? いや、そんなことよりもここは一か八かに賭けて――。
「グルァ!」
魔物がコチラに踏み込んでくる、と同時に俺も魔物に突っ込む。
「ガルァ!?」
俺の行動に、魔物が一瞬戸惑ったように動きを鈍らせる。一瞬でも隙が出来ればこちらのもんだ。
俺は、咬もうと口を開いた魔物の下に潜り込み