シーン1 月曜日 朝のゴミ捨て場
つくづく俺の魔術は魔術っぽくないと思う。
自分の体調管理と自分の体の強化の二つを応用して目覚まし代わりしてるやつは俺ぐらいだろう。体内時計はきっちり[管理]されてて、一気に覚醒状態に[強化]。おかげで目覚めは最高だが、何か間違ってる気がする。
とりあえず洗面所に行く。一人暮らしなので洗濯の量は少ないが一日一回は洗濯機を使う。ほっとくと臭うし、綺麗好きなの、俺は。鏡の前に立ち、気合いをいれる
「っ、展開……クアックドクター(ヤブ医者)…」
診断中………
後ろ髪に寝癖あり
指のつめが伸びすぎているので切る必要あり
空腹、主に炭水化物、たんぱく質が不足、鉄分も必要
脚部、スネ毛が伸びす……診断終了
とりあえず身だしなみを整えて飯を食べる。朝健気にご飯を作りに来るような幼なじみの女の子は俺にいるはずもない。妄想だと分かってても、男ならメイドさんとか憧れるだろう?実際よぉ。
ていうか、魔術師より希少なんじゃないの?そんな子いたら。
まぁ、代わりにヒューマノイドタイフーンと肩を並べるような災害野郎はいるが、ね
現在、朝の六時。いつもの起床時間は七時なのだが、コレには理由がある。
今日は[宝探し]の日なのだ。
家の近くの廃棄物処理場、処理場って言っても処分場なんだがね。要は埋立地。ここにはぶっ壊れたテレビだのクーラーだのがゴロゴロ転がってる。毎週、日曜日に業者が来て粗大ゴミを置いていく。なので月曜日は新商品がわんさかあるのだ。
まぁ、衛生上はよろしくないが、背に腹は替えられん。我が家の最新電化製品は、ほとんどここから運びこんで、修理したもんだ。修理とかの魔術が使えればらくなんだが、ね。俺はそんな気の効いた魔術なんざ使えねーし。俺の修繕技術は電気屋のおっちゃん並だと自負してるぜ。
まぁ、侵入禁止ってなってるけどルールは破るためにあるって誰かが言ってたし。前に一度、無傷のパソコン拾ったときに味を占めて通っているんだが……
「さながら、俺はインディージョーズ……いや、ふぁいとー一発ッのCMに出てるにーちゃんかねぇ…」
多分天国にいるお父さん、お母さん、あなたの息子、夕夜は断崖絶壁をロッククライミングしてます。調子に乗って自分でも降りられないところまで登っちゃいました。
恐る恐る下を見る。
深い。
高さ四十メートル弱。電化製品が積み重なってできた大地、山、海なので足場が悪い。この辺りは精密機械関連のゴミが多い。今の俺は命綱なしなので、今手でつかんでるテレビが崩れてきたら一発でミンチだ。地面と挟んでサンドイッチだ、畜生め。最悪、雪崩かもしれん。
こんなところで遭難はごめんだ。今日はこの辺にして学校行くか……っておおっ!ズルッって、ちょっとヤバイ手応え。崩れる、崩れる、崩れる〜っ!
「ぎゃああああああっ!」
あっ、落ちた。
あんだけ苦労して登ったのに落ちるときは案外あっけない。
最後に掴んだのは……鎖?いや宝石?いやネックレスか……?ああ、俺、こういうのに目が無いんだよ、ね。まぁ、現実逃避してるだけだけど
「だあああっ、展開、ジャンクドーピング[欠陥強化]、っ」
とりあえず落ちながら体を強化。さらば俺、生命保険は誰の手に?
結果的には無傷。打ち身やら、強化が失敗して筋肉がボロボロになったぐらい。さすが、俺。
手に掴んだネックレスを見る。
赤い宝石に洒落たチェーンがついたやつだ。けっこう掘り出し物だ。まぁ、体はボロボロになっちまったが。
時間は七時五十分。そろそろ学校行くか……。
「展開……オートリジェネ[自動修復]……」
管理と強化の応用で傷を治す。ちなみに俺が唯一自慢できる魔術だ。コレは一回も失敗したことはない。ただ、腹が減るのがちょっと欠点。
「そんじゃま、行きますか」
立ち上がって、ネックレスをつける。なかなか似合ってんじゃないの?俺。
ん?宝石とチェーンの止め金に文字か?……Sakura Y……あああ擦り切れて読めねーな。でも夕夜のYがあるし、あとでYuuyaって彫っとこう、っと。
宝石は朝日の光で炎のように輝いていた。
勝手に自分のもんにする俺も俺だけど、な。
駆け足、遅刻してたまるかっ、目指せ皆勤賞!




