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986.筆洗篇:小説と絵の話

 今回は「小説」と「絵」の話です。

 文字だけで綴っていく小説ですが、ライトノベルだと表紙絵に人物画が描いてあることが多い。

 小説に与える絵のインパクトは強いのです。

小説と絵の話


 あなたは「小説を書く」行為に「絵を描く」必要を感じているでしょうか。

 おそらく「小説を書く」だけで手いっぱい。「絵を描く」時間なんてない。

 そう思っていませんか。

 しかし執筆中のあなたの脳内には明確な「絵」が思い浮かんでいるはずです。




登場人物のキャラクターデザインをしていますか

 小説の書き手で絵も描ける方はあまり多くいません。

 そもそも絵が描けるのなら、わざわざ読むのに時間のかかる「小説」を書く必要なんてないのです。パッと見で面白さがわかるマンガを描けばいい。マンガは連載が当たれば億単位の部数が出ます。『ONE PIECE』『名探偵コナン』など億単位の発行部数を誇るシリーズもあるのです。

 それに比べて小説は通常初版初刷で三千から五千部。完売しそうなら増刷されて「重版出来(じゅうはんしゅったい)」となりますが、それはプロデビューしたばかりの方にはまず無理です。しかもどれだけ売れた小説であろうと、日本では百万単位しかいきません。ハードカバー小説の価格はマンガの四倍と見積もっても、明らかに桁違いです。

 絵が描けるのにあえて小説を書いている方もいます。

「絵には描けない」もの、たとえば人間の内面に焦点を当てようとすれば、小説を書いたほうがはるかに楽に書けます。

 よく「絵にも描けない美しさ」と言いますよね。まさにそれです。

 絵で描けないのであれば、文字で表現すればよい。マンガも「モノローグ」の形で心の声を表現できますが、そのキャラが感じていないものを際立てるには「モノローグ」ではどうにもなりません。

 マンガを描ける方が、あえて小説を書いている。

 であれば、あなたにも絵を描く才能はあるわけです。

 それなら、登場人物のキャラクターデザインもできます。

 外見を明確に規定して作中でブレさせないためには、小説であってもキャラクターデザインに手を抜いてはなりません。

 背丈は、体型は、顔や瞳の色は、髪の色やスタイルは、鼻や耳や口の形は、普段どんな服装をしているのか。

 これらをすべて文字情報で残しておくのもたいせつです。しかし、パッと見でわかる人物画が描かれていれば書き手はひと目見ただけで、そうだこんな人物だったと思い出せます。

 まかり間違って(失礼ですが)あなたが「プロの書き手」となったとき、挿絵や表紙絵を担当する絵師さんにあなたの描いたキャラクターデザインを素にクリーンアップしてもらえば、負担もかなり減ります。 

 また仮にアニメ化まで行った際は、あなたが「キャラクターデザイン」となって収益を分配してもらえるかもしれません。

 絵が描けるのなら、キャラクターデザインをしておくことをオススメします。

 絵が描けなくても、すべて文字情報で履歴書(キャラシート)を書いておけば、絵師さんにそれを渡すだけで書き手がイメージしたとおりのキャラクターデザインをやってくれます。勝手に仕様を変えるような絵師さんはいません。




細部まで決めても書くのは三割

 人物の特徴は可能なかぎり細かく設定してください。

 体つきや相貌、目の形に虹彩の色、眉の形と濃さ、鼻や耳や口の形、顔の輪郭に頬の肉付き、髪の毛の色や長さなどのスタイルは決めておきたいところです。

 さらに全身に見える傷痕やシミやホクロ、身長と足の長さや靴の大きさなど、顔や頭以外のところも留意します。

 ひとりの人間として明確なイメージがつかめるまで、細部へ徹底的に頭を使ってください。

 現実世界の履歴書(エントリーシート)よりもさらに細かい履歴書(キャラシート)を作成するのです。そして履歴書(エントリーシート)ではバストアップの写真を添付しますが、履歴書(キャラシート)では全身の絵を描きましょう。

 どんなスタイルでどんな服装をしているのか。どんな顔立ちでどんな表情をするのか。

 そういった、言葉だけではイメージしにくいものを絵にして描いておきましょう。

 絵は言葉以上の情報を詰め込めます。逆に言葉は絵以上の細部を作り込めます。

 だから、絵が描けるのであれば登場人物のイメージを描くべきです。それでは表せないことを文字にして書きましょう。

 人物は可能なかぎり細部まで詰めてください。しかし小説に書くのはそのうちの三割もあればよいほうです。大部分は使いません。それでも絵を描き、文字で設定するのです。

 あふれ出る情報を整理して文章に書けるようになれば、人物描写は今までよりももっと引き立ちます。

 使わない設定も決めておく。たとえば今は亡き祖父母の設定だって、ないよりもあるほうが人物をより明確にしてくれます。

 ペン回しや鼻筋を撫でるなどのなにげないクセも設定できるのであれば設定しましょう。

 声質も甘い声や爽やかな声やだみ声など、目に見えない項目は文字情報として履歴書(キャラシート)に書いておけば書き分けられます。

 でもすべての設定を書く必要はありません。

 先ほども述べましたが、七割は本文には書かない設定です。




地図はつけるべきか

 現実世界が舞台であれば「○○市が舞台です」とするだけで、地図を書く必要はありません。

 しかし異世界が舞台であれば、どんな大陸があるのか、どんな島々があるのか、どんな山やどんな海があるのかどんな砂漠があるのかなど、読み手に伝えたいものが多くなります。

 そこで問題となるのが「地図」です。

 地図がなくても小説は書けます。田中芳樹氏『銀河英雄伝説』には、銀河の星々の明確な位置関係を示す地図は存在しません。それでも大宇宙を舞台にした小説は書けるのです。

『銀河英雄伝説』において、アムリッツァがどこにあるのか、ティアマトがどこにあるのかが実はよくわかりません。それどころか銀河帝国と自由惑星同盟の首都星やイゼルローン、フェザーンといった重要拠点の位置関係すら不明なのです。これが「地図」のない弊害でもあります。

 異世界を舞台にしたファンタジーなら、少なくとも「世界地図」くらいは書きましょう。国々の位置関係が定かでないのに国家間紛争を書こうとして、間に他国が存在するのにそこが戦場となってしまう愚を犯さなくなります。

「地図」も「書かない情報」に含まれるかもしれません。ですが「地図」を作らずに小説を書くよりはるかにましです。

 司馬遷氏『史記』も当時の中国大陸の地図を持たずに読むと、話がちんぷんかんぷんになります。良心的な訳書なら当時の大国がどこに存在したのかの「地図」が必ず付いてきます。

 テキストベースの『小説家になろう』でも手間を掛ければ文中に画像を挿入できるのです。とくに異世界の戦記ものを書こうというのであれば、地図を掲載したほうがよりよい。

 ただし地図があるからと、どこに街があり、北に山がある、東に海がある、南に川がある、西に谷があるといった情報を文中へ書かないのはただの怠慢です。

 基本的に文字情報だけですべてを表現できなければ、それは小説ではありません。

「地図」がなくても矛盾せずに具体的なイメージを持って読める。そのうえで「地図」があれば、街と街の間に森がある、切り立った崖があるため直線距離は短くても遠回りをしなければならないといった情報に説得力を持たせられます。

 創作過程では必ず「地図」を書いてください。それを読み手に見せるかどうかはあなたの自由です。基本的に「地図」を載せなくても読み手がわかるように描写してください。それができていれば、十全な文章が書けます。





最後に

 今回は「小説と絵の話」について述べました。

 表紙絵を付けられる小説投稿サイトでは、すでに用意されているテンプレートの表紙絵は避けてください。差別化が図れずに埋もれてしまう原因になります。絵が描けなくてもロゴくらいは作れるはずです。ちょっとの手間ですが、テンプレートより確実に読み手が増えますよ。

 登場人物の全身絵も描けるなら描きましょう。文字情報としても残しておきますが、絵なら見た一瞬で設定を思い出せます。これは連載小説では大きな利点です。

「地図」は現実世界の実在する都市が舞台なら設定しなくてもかまいません。現実世界の仮想の都市や誰も知らないような土地のことであれば、頭がこんがらがらないように「地図」を必ず作成してください。異世界が舞台ならなおさらです。




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