980.筆洗篇:場面展開の仕方【回答】
今回もご質問にお答えします。
場面展開について悩まれる方もおられるでしょう。
たいていの場合、場面を切り替えることで先へ進みます。
場面展開の仕方【回答】
小説には場面があります。
これをどう展開してよいものか。悩んでいらっしゃる方もおられるでしょう。
とくに連載小説を書いているときは、展開で行き詰まることが多い。
そこで今回は「場面展開の仕方」について見ていきましょう。
あらすじと箱書きは書き直しましたか
場面展開で悩んでいる方の中で、きちんと「あらすじ」を書き直している方はどれほどいらっしゃいますか。
連載途中で本筋から離れた場面を書いてそこへ派生していくと、当初書いていた「あらすじ」が通用しなくなります。
だから事前に「あらすじ」を考えるのはムダだとは思わないでください。
「あらすじ」は出来事の流れをざっくりと捉えるのに便利です。
そして場面を書くために「箱書き」を作ります。
この「箱書き」も軽視している方がいらっしゃるのです。「箱書き」を執筆前に書かなければ、どんな出来事を付け加えようとしているのかわからなくなります。
だからまず「あらすじ」を書き直していなければ、出来事が決まらないまま思いつきで場面展開について考えなければならなくなるのです。
「あらすじ」のリライトで「箱書き」も当然書き換える必要が生じます。
エピソードをいくつの場面で構成するか。場面の展開をどうするか。それを決めるために「箱書き」を書かなければなりません。
「箱書き」が出来あがらなければ、場面展開を考えられないのです。
箱書きで場面を固める
「箱書き」はひとつの場面の状況をまとめて一枚の紙に書いたものです。
物語の進み方により、必要となる場面、不要となる場面が生じてきます。これを決めるのが「あらすじ」の役割です。
「あらすじ」で出来事の順番をきちんと定めておけば、次に起こるのがどの場面かはひと目でわかります。
どんな場面か決まれば、状況を明確にしましょう。そのために「箱書き」が有効なのです
「あらすじ」「箱書き」さえうまく書ければ、「支離滅裂な小説」にはなりません。
では「箱書き」を用いてどのように場面を設定すればよいのでしょうか。
主に場所・時間・気象・参加するキャラを固めます。
これらが変化したら、そこでその場面は終了です。
たとえば今は東京駅にいますが、新大阪駅にいる人たちについて書きたい場合も、別の場面となるのです。
今の場面から一時間後の出来事を書きたいなら、場面が分かれていないと読み手に「時間は続いている」と誤解されます。
晴れていたのに雨が降ってくれば、新たに情景を書かなければなりません。
登場人物が減ったり増えたりすれば、新しいやりとりも可能になります。
物語の展開は、場面単位で考えるとわかりやすい。
そこで、場所展開・時間展開・気象展開・人物展開の四つに分けてご説明致します。
ただし、これらは単体で用いられることは少ない。たいていふたつ以上を組み合わせて用います。
場所展開
場面展開で最も使用頻度が高いのは「場所展開」です。
前にお話した「カットバック」も「場所展開」のひとつに当たります。
同じ時間で別の場所に、場面を移します。
たとえば『三国志』において劉備と諸葛亮が新野で話し合いをしている後に、呉の建業で孫権と周瑜が話し合いをしている姿を書く。
これで場面は明確に切り替わります。
ただし、場面が切り替わるごとに時間も進んでいきますので、あまり「カットバック」を過信しないようにしてください。
「一方その頃こちらでは」が最もよく用いられる「場所展開」の手法です。
しかし場所だけでなく時間展開を含むこともあります。
上記の例では「劉備と諸葛亮が話し合い」した後の時間に「孫権と周瑜が話し合い」をしていることもあります。諸葛亮は劉備と話し合ったのち呉を訪れるのです。そして「孫権と周瑜の話し合い」に参加します。劉備と呉で連合軍を結成して大軍を率いる魏の曹操を迎え撃つ策を巡らせることになるのです。
時間展開
場面展開で使用頻度が高いのは「時間展開」です。
前にお話した「フラッシュバック」も「時間展開」のひとつに当たります。
同じ場所の別の時間に話を展開させます。
たとえば『三国志』において劉備が呉の孫権と手を組んで、黄河を渡河せんとする魏の曹操軍を迎え撃つことになります。しかし連合軍には矢が足りない。それを集めるために諸葛亮は一計を案じます。ここで時間が隔たるので場面が分かれるのです。
気象展開
小説において最も使用頻度の低いのが「気象展開」です。
土砂降りから晴天へと気象が変わったら場面を分けます。
たとえば『三国志』において連合軍は諸葛亮の策で足りなかった矢が集まりました。しかし火矢を放っても連合軍側に被害が出るような気象であったため、風向きを変えなければなりません。そこで諸葛亮は「東南の風」を吹かせるために祭壇で祈祷するのです。するとそれまで西北の風が吹いていたのに、突如として「東南の風」が吹きすさび、連合軍はこの機を逃さず魏軍へ水上戦を仕掛けました。この戦いは対決した地名をとって「赤壁の戦い」と呼ばれます。
人数展開
場面はひとりだけのものもありますが、たいていは多人数で構成されています。
ひとりで待ち合わせ場所にいる場合。群衆はいるでしょうが、物語に関係するのは主人公ただひとり。であれば、待ち合わせ相手が現れるまでは「主人公だけの場面」となります。
逆に合同コンパが終わってマッチングした相手と帰途に着くとき。五対五の十人で合同コンパをしたのなら、主人公は男女ふたりになります。ふたりきりになるところで場面が変わります。
このように人数が変わることで場面を切り替えるタイミングで状況は変わるのです。
たとえば『三国志』において呉の建業で孫権と周瑜が話し合いをしているところへ、劉備軍の軍師・諸葛亮がやってくる場面を書きます。「赤壁の戦い」のために呉と連合同盟を組むためです。孫権と周瑜の場面に、諸葛亮が加わりました。これで場面は明確に切り替われます。
場面の展開は切り替えの連続で
場面を展開させるには、場面を切り替えることです。
人数展開を見てみましょう。
ふたりで話し合いをしていて、そこにひとり加わる。とうぶん三人で話します。その後ひとりがその場を去り、再びふたりになるのです。
どうでしょう。場面が先に進んでいませんか。
もちろん場面を進めることで時間も経過していますが、人数の出入りだけでも場面は先へ進むのです。
展開のさせ方がわからなくなったら、とりあえず場所・時間・気象・人数に変化をつけましょう。それだけで物語は展開し先へ進むのです。
最後に
今回は「場面展開の仕方【回答】」について述べました。
初心者のうちは、場面展開のさせ方がわからないと思います。
そのときは、今の場面から場所・時間・気象・人数を変えてみてください。
驚くほど簡単に物語が先へ進むようになりますよ。




