表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
961/1500

961.筆洗篇:好きは知識の幅を広げる

 今回は「趣味が身を助ける」ことについてです。

 小説を書くときに欠かせないのが現実味つまりリアリティーです。

 リアリティーを支えるのはあなたの知識だけ。

 あやふやなことも区別できるようになるには、そのことを好きにならなければなりません。

好きは知識の幅を広げる


 あなたには好きなことがありますか。

 なにかに集中してのめり込むほど好きなことです。

 小説を書くのが好きです。という模範解答を聞きたいのではありません。

 そんな人はえてして大成しません。




私の好きなこと

 かくいう私には好きなことがあります。

 オーディオ、ビジュアル、コンピュータです。

 しかしこれらは断捨離をいくつか経て、ビジュアルだけが尖っていて、オーディオとコンピュータはまろやかになりました。

 コンピュータはWindowsからMacに乗り換えましたし、オーディオもiPodに統一しています。実は先にiPodを興味本位で買って、それからMacへ移行しました。

 iPod以上に音質の良い携帯音楽プレーヤーはいくらでもあります。iPodではハイレゾ音源もそのままでは聴けませんしね。専用のプレイヤーアプリとハイレゾヘッドホンが必要になります。

 逆に言えば、普通に聴くだけならiPodでもじゅうぶん事足りるのです。だからもうオーディオにはこだわらず、iPodだけに絞りました。これでオーディオ機器に余計な出費をせずに済みます。とはいえ他機種の情報は欲しいんですけどね。

 コンピュータをMacに切り替えたのは、ソフトウェアの互換性に疑問を持ったからです。Windowsのソフトウェアは、マザーボードやDRAM、ストレージなどの構成を整えないと走らないものがいくつかあります。そのため、使いたいソフトウェアに合わせたハードウェアを構築しなければなりません。

 しかしMacは基本的に同じ年に発売された機種は同じ構成をとっています。だからソフトウェアの互換性も、OSをアップグレードしてサポート対象外になるかどうかだけを気にすればよいのです。だから安心して使い続けられます。またMacはシステム設定が扱いやすく、電話サポートも充実していますので、やりたいことは初心者でも難なくできる。しかも憶えることはほとんどなく、感覚だけで使いこなせてしまいます。ソフトウェアの誤作動やOSの不安定さとも基本的に無縁ですので、ハードウェアとOSとの齟齬によるトラブルとは無縁でいられるのです。

 だからコンピュータはMacに切り替えました。おかげで小説やコラムを執筆するだけならMacのほうが断然快適です。

 このように、オーディオやコンピュータの知識があるおかげで、それらの情報に詳しくなりました。

 小説でオーディオやコンピュータを出すときに、圧倒的な情報量を詰め込められるのです。これは大きなアドバンテージだと言えます。

 もし釣りが趣味な方は、主人公がサバイバルの状況に陥った際、釣りで魚を捕まえられます。どのようにすれば魚が食らいつくのか。釣り竿さばきや餌のつけ方、魚がいそうな岩場のくぼみなどを見極めて糸を垂らす、ということを圧倒的な知識量で書けるのです。サバイバル小説のはずなのに、この部分だけが「釣り小説」として成立しています。

 あなたが好きな小説にもこんなものがありませんか。


 田中芳樹氏『銀河英雄伝説』は銀河帝国と自由惑星同盟の、政戦両略を絡めた一騎討ちの様相です。しかしここにフェザーン自治領と地球教が暗躍することで、複雑な国際関係を演出しています。田中芳樹氏はその後の著書を鑑みると、世界の戦争と歴史、哲学に関する知識がひじょうに豊富です。趣味として多数の歴史書や軍略書、哲学書の知識を蓄えたであろうことは疑いようもありません。

 その趣味が高じたからこそ、『銀河英雄伝説』に始まる政戦両略の物語を数多く執筆できたのではないでしょうか。

 趣味って侮れませんよ。




ビジュアルは今でも趣味です

 私の三つの趣味であるオーディオ、ビジュアル、コンピュータのうち、今でも好きなのは「ビジュアル」とくに「アニメ」です。

 小説はあくまでも「アニメ」を楽しむために読みます。

 アニメの小説化はよく読みますが、小説のアニメ化は意外と読んでいません。

 短い時間で物語を味わうには、アニメが最適だからです。

 小説はアニメ一話ぶん読むだけでも一時間はゆうにかかります。

 しかしアニメ一話はOPとEDと予告を飛ばせば、正味20分程度で物語が味わえるのです。

 物語のパターンを増やすには、小説を読むよりもアニメを観たほうが速い。しかも間や掛け合い、場面の見せ方などは、やはり映像として見せてもらったほうがイメージが湧きやすいのです。

 中には小説やアニメのマンガ化作品もあります。こちらはさらに短い時間で物語を味わえます。


 私がライトノベルを好きな理由もやはり「アニメ」にあるのです。

 ライトノベルと最初に意識した作品が、水野良氏『ロードス島戦記 灰色の魔女』でした。

 TRPG『Dungeons & Dragons』のリプレイとしてコンピュータ雑誌『コンプティーク』で連載の告知が出た段階から目をつけていました。

 テーブルゲームのリプレイというだけで、なにかワクワクしてきませんか。

 現在でこそ「ゲームの世界で戦う」物語が主流になりました。ゲームのリプレイを物語にした小説はその源流なのです。

 だからこそ、多かれ少なかれ今の「異世界ファンタジー」は『ロードス島戦記 灰色の魔女』の影響を受けています。

 そしてテーブルゲームが趣味だからこそ、深く調べようと思いますし、正しい知識が欲しいと思うのです。本コラムの「事典篇」なんてその最たるもの。集められるだけの資料を集めて、できるだけ正確な知識を持っておきたい。正しい知識があれば、新しい物語も生み出せます。

 趣味は身を助けます。もちろんハマりすぎて身を滅ぼすこともあるのです。

 適度にたしなむ程度の趣味は、物語に現実味(リアリティー)をもたらします。


 軍事小説でパラシュート部隊の降下訓練を書きたければ、スカイダイビングを経験してみましょう。さすがにそれはお金がかかりすぎると思ったら、遊園地のバンジージャンプでもかまいません。高いところから落下する体験をすれば、落下しながらなにを感じているのかがわかってきます。命を預けるパラシュートは、使用する本人が畳んで収納することで信頼感が生まれるのです。もしパラシュートが開かなければ、畳んだ本人が悪かったと諦めもつくでしょう。そのパラシュートをすぐに切り離して、予備のパラシュートに託すこともできます。パラシュートはふたつ背負うのが常識です。ひとつ開かなくても、予備があるというだけで精神的にゆとりが持てますよね。

 読み手はそういうところに現実味(リアリティー)を感じるわけです。


 ガンアクションを書きたいと思ったら、軍事(ミリタリー)の知識が必要になります。だから銃火器の知識も増えますし、戦略戦術も身につけようとするのです。

 たとえばマンガのモンキー・パンチ氏『ルパン三世』で次元大介の愛用する銃はS&Wスミス・アンド・ウェッソン社製の「M19」です。.38口径の拳銃ですが、改造なしにそのまま.357マグナム弾を撃てるという変わり種でもあります。もちろん.38口径弾の使用を想定しているため、.357マグナム弾を連射するとフレームがすぐに壊れてしまうのです。.357マグナム弾は切り札にとっておき、通常は.38口径で戦うことになります。.357マグナム弾を撃てるということで「M19」は「コンバットマグナム」という愛称を冠するのです。アニメの『ルパン三世』シーズン2にも、「M19」で.357マグナム弾を使用するエピソードがありました。使い勝手のひじょうによい拳銃なのです。

 とここまで書いてしまうと、私に「ガンマニア」の一面があることがバレてしまいましたね。

 趣味として銃火器の知識を集めるきっかけを作ったのが、マンガの北条司氏『CITY HUNTER』です。主人公の冴羽リョウが使用するのが、コルト社製の「.357パイソン」通称「コルト・パイソン」。ひじょうにカッコよい拳銃なので、初めてのエアガンとして買いました。リョウの同業者・海坊主が使うのはS&W社製の「M29」。.44マグナム弾を使用することから通称は「.44マグナム」です。この拳銃はハリウッド映画のクリント・イーストウッド氏主演『ダーティハリー』のハリー・キャラハン刑事が用いたことで世界的に有名になりました。『ダーティハリー』ではのちにオートマグ・コーポレーション社製の「.44オートマグ」も使われたのです。これは.44マグナム弾を使用する自動拳銃という変わり種でした。

 ああ、語り始めると止まらない。これが「趣味」であり「好き」であるということです。


 私は写真も好きで、一眼レフカメラを主に絞り優先モードで使っています。絞り(1/F値)に関する知識や、シャッタースピード、ISO感度、明るさ調整といったことも体験しながら憶えました。

 だから、高校で写真部の人間を登場させても違和感のない表現ができるはずです。

 なにせフィルム時代から一眼レフカメラを使っていた世代なので、現在のデジタル一眼レフカメラ、ミラーレスカメラについても相応の知識があります。


「好き」が知識の幅を広げることはおわかりいただけたでしょうか。





最後に

 今回は「好きは知識の幅を広げる」ことについて述べました。

「趣味」の域まで「好き」が高じれば、必ず知識を知りたくなります。

 そうして集めた知識が、小説の現実味(リアリティー)を高め支えるのです。

 小説を書く者として、あらゆる物事に興味を持っていただきたいのですが、資金を考えればそうもいきません。

 であれば、自分の書こうとする小説についての知識を集めることくらいは注力しましょう。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ