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936.鳳雛篇:専門的な単語には注意する

 今回は「専門用語に注意する」ことについてです。

 読み手の中には、その世界に詳しくない方が必ずいます。

 そういう人たちにその世界のことを理解してもらうには、専門用語をどう伝えるかが重要です。

専門的な単語には注意する


 小説にはジャンルがあります。

 ファンタジー・ジャンルであれば、さらに「異世界ファンタジー」と「現実世界ファンタジー」に分けられるのです。

 この中でとくに「異世界ファンタジー」では「一見さんお断り」の作品を数多く見かけます。

 どのような作品が「一見さんお断り」なのでしょうか。




ロングソードとショートソードの違いってなに?

 まずよく見られる単語に「ロングソード」と「ショートソード」があります。

 初歩的な英語ができれば「長い剣」と「短い剣」だとわかるのです。

 しかし、なにに対して「長い」のか「短い」のか。「異世界ファンタジー」に詳しくない読み手にとっては理解できません。

 実は「ロングソード」と「ショートソード」の間には「ノーマルソード」が存在します。そして「ノーマルソード」は刃渡り六十センチメートルほどが基準となっているのです。

 一般的な剣士が使っているのは「ノーマルソード」だと理解している方が意外と少ない。

「ロングソード」は刃渡り七十センチメートルほどで、重心が剣先側に偏っています。これは騎士が馬上から歩兵を斬り殺せ、かつ扱いやすい長さが七十センチメートルだからです。中世ヨーロッパでも「ロングソード」を使うのは騎士がほとんど。歩兵で「ロングソード」を使う人はまずいません。

「ショートソード」は刃渡り五十センチメートルほどで、密集していたり狭い空間などで扱うのに向いた剣です。中世ヨーロッパでは槍兵(ファランクス)が補助武器として腰に佩いていました。槍ぶすまを突破してきた歩兵と乱戦になりますから、「ノーマルソード」では振り回しづらいのです。だから「ショートソード」が重宝されました。

 しかし現在の「異世界ファンタジー」では、「ノーマルソード」のことには触れず、「ロングソード」「ショートソード」をどんな人が用いているのかに関してすら無頓着です。

「異世界ファンタジー」ばかり読んできた方なら区別できる「ロングソード」と「ショートソード」の違いですが、門外漢が読んでも理解できるように説明していますか。

「刃渡り七十センチメートルのロングソードを腰からすらりと抜いた。」

 これなら「ロングソード」って刃渡り七十センチメートルもあるのか、と門外漢でもわかるのです。(異世界の単位がメートル法である点は、それはそれで問題がありますけど)。

 この気遣いひとつで、あなたの小説はより多くの方に読んでいただけるようになります。

 あなたは読み手を気遣っていますか。




ファイヤーボールってなに?

「異世界ファンタジー」の魔法で最も有名なのが「ファイヤーボール」でしょう。

 しかし有名だからといって、「ファイヤーボール」の魔法がどのような変化を起こすのかを忠実に書いている小説はほとんどありません。

「ファイヤーボール」はTRPGテーブルトーク・ロールプレイングゲーム『Dungeons & Dragons』で多くのゲーマーに知られるようになりました。

「異世界ファンタジー」小説ではだいたい、鬼火のような炎の塊が十〜二十メートルほど飛んでいき、半径五〜十メートルほどの「炎を爆発させる」魔法と定義されています。

 しかしこの説明をしている小説もほとんどありません。

 もう「ファイヤーボール」なんて皆知っているのだから、今さら説明する必要なんてないだろう。

 これでは先ほどの「一見さんお断り」と同じです。

 きちんと、

魔法杖(スタッフ)を構えて呪文を唱えると、魔法杖の先に直径三十センチメートルほどの炎の塊が生じた。そのまま詠唱を続けて呪文が完成すると、俺は魔法杖を横薙ぎにして『ファイヤーボール!』と呪文名を叫ぶ。すると炎の塊は前方二十メートル先へ一直線に飛んでいき、炎の大爆発が起こった。その場にいた者は皆爆発に巻き込まれ、衣服が発火して慌てふためいている。」

 くらいは書きましょう。

「今さら『ファイヤーボール』の説明を書くなんて、ただの字数稼ぎだ」と言う方もいらっしゃるでしょう。

 そんな方の作品は、往々にして閲覧数(PV)が多い割にブックマークが少なく、評価も低いはずです。

 それは「一見さんお断り」をしているから。

 その事実に気づくまで、いくらあなたが小説を書いたところで、ランキングに載ることはまずないでしょう。




あなたの小説がこのジャンルで初めて読む作品かもしれない

 読み手にとって「異世界ファンタジー」はまったく読んだことのないジャンルかもしれません。

 検索をして試し読みしたご新規さんがわかるように書く。

 これが最低限必要な「説明」なのです。

 なぜあなたの「剣と魔法のファンタジー」では「ノーマルソード」がないのか。

 どうやって魔法使いが使った「ファイヤーボール」で敵にダメージを与えられるのか。

 あなたは作品の中で、これらの疑問に答えていますか。

 答えていなければ、読み手が置いてけぼりにされているのです。

 これで作品が評価されると考えているのなら、あなたには一生「小説賞・新人賞」は獲れません。

 初めてこのジャンルを読む方にも、わかるように書くこと。

 それができていて初めて、小説は正当に評価されます。





最後に

 今回は「専門的な単語には注意する」ことについて述べました。

 読み慣れているジャンルの小説を書くとき、とくに気をつけたいのが「専門的な単語」です。

 この単語はわからない方もいるだろうから、詳細に「説明」しておくべきだろう。

 そう考えられれば、あなたの作品は劇的にわかりやすくなります。

 とくに初心者にもわかりやすいというのは、最高のアピールポイントになるのです。

「説明」する手間を惜しんで評価を落とすか、「説明」を尽くして評価を高めるか。

 どちらをとるかはあなたが自由に選んでください。




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