1474.質疑篇:長編小説のペース配分
今回から、皆様のご質問にお答えしていきます。
ご質問・ご要望・ご不明な点が尽きたときに、システム上の「連載終了」となります。今のうちに聞いておきたいことがございましたら、遠慮なさらずコメントやメッセージや感想などで手を上げてくださいませ。
今回は「七十五日で長編小説を書くには、どのような配分がよいですか?」というご質問にお応え致します。
とはいえ、その方の問い合わせは別に行なっているので、今回は「六十日で長編小説を書く」ペース配分についてです。
長編小説のペース配分
以前にお寄せいただいたご質問にお答え致します。
「企画書」「あらすじ」「箱書き」「プロット」と「執筆」はどのくらいのペースで取り組めばよいのか、についてです。
「小説賞・新人賞」を獲るには長編小説を応募しなければなりません。
最初から開催を見越して書きためておくのも一手ですが、案内されて期限が決まってから書き始めても間に合うのかどうか。
賞レース開催はたいてい二カ月
すべての「小説賞・新人賞」の募集期間は把握しておりません。
『カクヨム』の看板とも言える『カクヨムWeb小説コンテスト』は十二月一日から一月三十一日までの募集期間でした。
他の賞もたいていアナウンスから三カ月、開催二カ月が多い記憶があります。『小説家になろう』は現在「小説賞・新人賞」が開催されていないので、こちらは開催され次第ご自身で確認してください。
二カ月で長編小説を書くには
本当なら七十五日つまり二カ月半は欲しいのですが、どうしても『カクコン』に応募したくて二カ月で長編小説をでっち上げなければならなくなったら。
そこで「二カ月で長編小説を書く」スケジュールとペース配分について述べます。
まず「企画書」はコンテスト開始前から、大量にストックしておいてください。
「どんな物語を書こうかな」と募集が開始されてから考えていては遅いのです。
「企画書」はあなたが得意なジャンルのほかに、あまり書かないジャンルも何本が立てておきましょう。いざ開催された「小説賞・新人賞」すべてに「異世界ファンタジー」が応募できない可能性もあります。
どうしても「異世界ファンタジー」で受賞して「紙の書籍」化を目指したいなら、「異世界ファンタジー」の「企画書」だけでかまいません。ただそれだと応募できる「小説賞・新人賞」の数が減るので、チャンスを棒に振る可能性が高くなります。
「企画書」といっても会社で求められるようなものではなく「どんな主人公が、どうなりたくて、なにをなし、どうなったのか」を書くだけです。
それを導くために「どんな主人公がどうなった」を発想すればよい。そのうえで「どうなりたい」が結果として「どうなった」に落ち着くのか。その差を読ませるのです。
そして主人公は「どうなる」ためにどんな能力を有しているのか。極端な話「どんな主人公」はどんな「悪魔の実」を食べたのかを決めればよいのです。
「あらすじ」は「企画書」に対して「どんな出来事があると面白くなるか」を考えます。
正直に言って「出来事」が一時間で複数思い浮かばないのであれば、事前に「あらすじ」まで決めてストックしておくべきです。
「紙の書籍」化してプロデビューしたら、担当編集さんと二人三脚でヒット作を量産しなければ戦力外通告されます。つまりクビです。
一度クビになると、また「小説賞・新人賞」からやり直しです。まぁ一度プロになっていますから「新人賞」は応募できませんが。
クビにならないよう「企画書」の厚さと「出来事」の多さで「面白い」と思わせる「あらすじ」を見せられるかどうかが問われます。
ですので「企画書」「あらすじ」は一日で何本も作るようにしてください。
可能であれば毎日一本でもよいので作ると、恐ろしいほどの引き出しを持てるようになりますよ。
箱書きは一週間で創る
というわけで「箱書き」から先を「小説賞・新人賞」の開催アナウンスがあってから作り込んでいきます。
まず「箱書き」ですが、「あらすじ」ができていれば、あとはそれが映えるような場面割りをしていけばよいので、それほど時間はかからないはずです。
主人公と「対になる存在」以外にどんな人物が必要となるか。それぞれの関係線・相関図はどうなるか。それが物語を動かすエンジンになりますので、必ず設定してください。
主人公とサブキャラクターが幼馴染みなら出会いのシーンはカットできます。主人公が旅立ってから加わったのなら出会いのシーンが必要です。
では物語をどう始めれば「主人公」が映えるのか。これを真っ先に考えて第一の「箱」を創りましょう。
あとは「出来事」に沿ってどんな場面が必要か考え、都度「箱」を創るのです。
「箱」には「いつどこで誰と誰が」の場面で「どんな行動をするのか、どんなセリフを発するのか」をメモ書きしていきます。
この「箱書き」がすべて揃うのに一週間かからないはずですが、学業や仕事をしている方だと作業時間も少ないので、移動時間や休み時間を利用して「箱」を創るようにしてください。
「箱書き」は「プロット」を書いているときに追加したり取り除いたりするので、この段階ではあくまでも「仮に決めればよし」としてください。
けっして完璧な「箱書き」は目指さないように。
「箱」の数は最低でも四部構成「起承転結」をさらに四つの区切った十六あればなんとかなります。あとは話の展開に従って場面が増えれば「箱」も増やしていきましょう。
プロットは十日、十日、三日で仕上げる
「箱書き」ができたらいよいよ「プロット」です。
「ト書き」ドラフト、「散文」ドラフト、「視点固定」ドラフトの三段階ありましたよね。
まず「ト書き」ですが、これは単にシーンで起きる「出来事」を会話文とト書きだけで表現してください。ここで表現に凝る必要はありません。そもそもここで凝ってもあとで「この箱要らないや」と取り除くのもよくあります。
「ト書き」ドラフトは、イメージが湧いていたらそれをつらつらと書くだけですので、かかる時間はPCへの入力速度次第です。
一分間に百字入力できるのなら、一シーンの「ト書き」二千五百字を書くのに二十五分かかります。ここにイメージを喚起する、会話文を拾い上げる、ト書きを挟み込むを加えて一時間ちょっとかかる見込みです。
最低十六シーンですので、すべての「箱」を「ト書き」ドラフトに変換するのに十六時間かかります。多少の余裕を見て二十時間。一日二時間を執筆に当てたとして十日間で「ト書き」ドラフトは完成します。
「散文」ドラフトはすでに存在する「会話文」はそのまま引き継ぎ、ト書きを小説の文章である散文に変換していきます。実はこの段階がかなりの時間かかるのです。一シーン二千五百字を六千字ほどにまで膨らませますので、単に書くだけでも一シーン一時間、十六シーンで十六時間。「ト書き」ドラフトを別名保存していれば、「ト書き」ドラフトのト書きだけを変換すればよいのでもう少し短くできます。ただ「散文」化はかなり経験が必要なので、こちらでも全シーン合わせて二十時間、十日間を目安にしてください。経験がなければ倍の四十時間、二十日間は見てください。
「視点固定」ドラフトは、主人公の一人称視点か、誰にも持たせない三人称視点にするかで、地の文の表現が変わってきますので、そこを手直しすればよい。「散文」ドラフトを別名保存していれば、小説を頭から読み直すのにかかる時間に手直しする時間を加えるだけで終わります。
「プロット」の「視点固定」ドラフト完成までに三十日、つまり一カ月で漕ぎ着けられます。もちろん慣れも必要です。慣れていなければもう少し時間がかかるはずです。
だから慣れないうちは将来開催されるであろう「小説賞・新人賞」に向けて一年かけて完成させるつもりでいましょう。
執筆に二十日かける
「視点固定」ドラフトが完成したら、凡人の「完成原稿」レベルに達します。
このレベルで応募しているから凡人なのです。受賞する方はここからさらに磨きをかけます。
「執筆」では表現に磨きをかけ、比喩も取り入れて極力わかりやすくなるよう配慮します。六千字だったものをここで七千五百字にまで膨らませます。つまり十六シーンで十二万字と、長編小説の上限です。
「執筆」をしていると、どうもシーンのつながりが悪いと思うはずです。
そこで「箱」を追加して滑らかにしたり、蛇足になっている「箱」を取り除いたりして調節します。また話の流れはよいけど移動しながらの場面にしてはどうか、演出面も考えてください。
かなりの慣れが必要です。しかし二十日と少しで「執筆」は終えてください。
細かな書き直しは次の「推敲」で行ないますので、今は書きっぱなしでだいじょうぶです。
推敲に十日かけて脱稿する
多くの書き手が「執筆」が終わればかるく「推敲」して応募しますが、より上の選考を通過するには「推敲」にもじゅうぶんな時間をかけてください。
長編小説であれば十日は欲しいところです。
もし「箱書き」からここまでに六十日直前だとろくに「推敲」できません。
「推敲」も慣れの問題です。
なので、もし六十日に達して募集期限間近になったら、ろくに「推敲」せずに応募して玉砕するか、次回の「小説賞・新人賞」へ回すか決断してください。
できれば五十日間で「執筆」まで終わらせましょう。
「執筆」「推敲」に時間をかければかけるほど、文章のレベルは確実に高まります。
だからこの執筆方法とスケジュールに慣れてください。
慣れればこれほど短期間で質の高い長編小説を完成させられる手法はありませんよ。
最後に
今回は「長編小説のペース配分」についてお答えしました。
長編小説はだいたい七十五日で完成させるのがよいのですが、「小説賞・新人賞」の募集期間が短い場合は六十日ででっち上げなければなりません。
そこで「六十日」のペース配分を例に挙げました。
私が提唱する「企画書」「あらすじ」「箱書き」「プロット」は期限までの半分の時間を費やしてください。残りの半分を「執筆」「推敲」に当てます。
もし期限内に完成しなければ次の機会に応募すればよいのです。毎回タイム・リミットと競争して、この手法に慣れていけばどんどん速く完成させられますよ。




