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三百枚書けるようになるお得な「小説の書き方」コラム  作者: カイ.智水
端緒篇〜小説を書くためのご質問にお答えします
1442/1500

1442.端緒篇:序破急による構成

 今調べてみたら、No.「××64」が百回の区切りになっていますね。

 ということはまだ1400日連続ではなかったのか……。残念です。

 ぬか喜び致しました。きちんと過去の投稿を見ておけばよかったですね。もう毎日書いては投稿するなので、日付感覚が疎くなっています。そめそろ終わりどきですね。

 今回は「序破急」による「あらすじ」の書き方です。

 とはいえ、実は「起承転結」の「結」抜きとさして変わりません。分割ポイントは異なりますが。

序破急による構成


 前回は四部構成「起承転結」をもとに「あらすじ」を創りました。

 今回は三部構成「序破急」をもとに「あらすじ」を創っていきます。




序破急の基本

 まず「序破急」について。

 元々「序破急」は、雅楽のひとつ「舞楽」の様式です。無拍子・低速で始まる「序」に続き、拍子が加わる「破」、それを経て速度が最も速くなる「急」で構成されます。

「序」は「いとぐち」つまり「物事の始まり」です。スピード感はありません。人間関係や世界観などをお膳立てして受け手を惹き込むべき「そろりそろりと立ち上がる」パートです。

「破」は「序」の静けさを打ち破って出来事・事態が発生し、展開はスピーディーになります。

「急」で物語は「佳境(クライマックス)」へと急加速し、速やかに締めくくるのです。

 なんか難しそうだなぁ。そう思った方も多いはず。

 実は「起承転結」の「起承転」までとほとんど同じなのです。最後に「結末(エンディング)」の「結」をとるかとらないかが違います。そう考えればわかりやすいですよね。

 もちろん構成上の違いもあります。でもほとんどの場合、「起承転」と同じ解釈でも通用するのです。

「序」で主人公のキャラクターを立てる。「破」で主人公に出来事・事態が発生する。「急」で一気に「佳境(クライマックス)」を迎え、ストンと幕を落とすように物語が終わる。

「序破急」は「ジェットコースター」のようなもので、動き始めこそゆったりしていますが、そこからいきなり加速して、読み手をぶんぶん振りまわします。

 動き出すと加速度をつけて構成が切り替わるのです。

「序破急」は「三段ロケット」とも考えられます。一段目で地上からリフトオフ、ある程度上昇したら一段目を捨てて二段目に点火しさらに加速、大気圏を半ば過ぎてから二段目を切り配して三段目に点火して大気圏外へと脱出していきます。つまり一段終わるとさらなる加速が加えられる「三段ロケット」なのです。


 多くの方が「序破急」で長編小説を書こうとしますがそれは誤りです。「序破急」が最も活きるのは短編小説。長くて中編小説まで。「急」で主人公と「対になる存在」の最終決戦が終わったら物語もそこで終わりです。

 一般的な「序破急」の物語は「序」登場人物の人となりと世界観の紹介、「破」主人公が「対になる存在」から襲撃されて敗北、「急」主人公が復讐戦を挑んで勝ち、そこで物語が終わります。勝ったらそれまでです。

 そもそも「序破急」では十万字ももちません。大きな出来事・事態が「破」「急」二回しか起こせないからです。しかも「破」で「主人公の負け」、「急」で「主人公の勝ち」が確定した出来事・事態になります。主人公が負けて終わる「バッドエンド」の物語もありますが、退廃的な読み物になってしまうためあまりウケがよいとはいえません。

「序」で主人公たちのキャラクターを立てたいときは小さな出来事・事態を起こして対処するさまを見せて人となりを伝えるとよいでしょう。

 また本来の「序破急」では「急」のあとの話はとりません。バッサリと打ち切ります。あとを書く場合は四部構成「起承転結」にするのが賢明です。




序破急のあらすじ

 前回用いた『ロードス島戦記 灰色の魔女』を「序破急」で構成し直してみましょう。

————————

「序」:小さな失敗を経て生まれ育った村からパーンたちは出立する

 聖騎士の父を持ち、自らも聖騎士になりたいと願う一介の村人パーンは、親友のエトを伴ってゴブリン退治へと出かける。しかしゴブリンの数が予想以上に多く、二人は窮地に陥る。そこへドワーフのギムと魔術師スレインがやってきてなんとかゴブリン退治に成功する。


「破」:大きな出来事・事態(ヴァリス軍とマーモ軍の正面対決)で双方が敗れる

 パーンたちは聖国ヴァリスへ向かう道すがらハイエルフのディードリットと盗賊のウッドチャックを仲間とし、成り行きで誘拐されたヴァリス国王女フィアンナを助け出す。フィアンナ姫救出に赴いていた聖騎士たちと出会い、父の汚名を晴らしたパーンは聖騎士見習いへと組み入れられ、マーモ帝国の皇帝ベルドとの一大決戦に駆り出される。しかし双方の総大将であるファーン王とベルド皇帝が一騎討ちの末死んでしまい、ヴァリス軍とマーモ軍は撤兵を余儀なくされた。


「急」:ロードス島を裏から操る灰色の魔女を倒す戦い

 大賢者ウォートのもとを訪れたパーン一行は、ロードス島の善悪の天秤を影から釣り合わせていた「灰色の魔女カーラ」の存在を知る。古代魔法王国の生き残りであるカーラに対抗するため、パーンたちはサポートアイテムとカーラの倒し方を譲り受ける。

 そしてウォートから教えられたカーラの居城へとパーンたちは乗り込んでいく。すでに戦闘準備を整えていたカーラに、挨拶は無用とばかり総攻撃を仕掛けるパーンたち。スレインは魔法封じのアイテムを使ってカーラの魔術を封じ、ギムが危険を顧みず突進してカーラの注意を惹きつけ、パーンとディードリットがカーラのスキをついて連携するもカーラに傷ひとつ付けられない。カーラはまず突進してくるギムを仕留め、パーンたち前衛に気をとられていたスキを見逃さずウッドチャックがカーラの意志を封じ込めたサークレットを外すことに成功した。

 カーラのサークレットを破壊すれば任務完了だったのだが、古代魔法王国の知識に興味を覚えていたウッドチャックが自らサークレットを装着してしまう。カーラの意志に抗おうとしたが叶わず、ウッドチャック・カーラとなり歴史の闇へと消えていった。


「結」:カーラに勝ったものの残された者たちの結末

 パーンは闇に消えたウッドチャック・カーラを追う旅に出立し、ディードリットを供とする。エトはヴァリスへと帰還して国を立て直す力となる。残されたスレインは、ギムが命を懸けて守り抜いた、カーラに肉体を乗っ取られていたレイリアを彼女の母が待つ村まで送り届けることにした。

————————

「起承転結」と「序破急」で構成のポイントがズレているのに気づきましたか。

「序」:小さな失敗を経て生まれ育った村からパーンたちは出立する

「破」:大きな出来事・事態(ヴァリス軍とマーモ軍の全面対決)で双方が敗れる

「急」:ロードス島を裏から操る灰色の魔女カーラを倒す戦い

 物語が緩やかに流れている「小さな戦い」の場面と、そこから大きな出来事・事態が起こって物語にスピード感が生まれる場面、そして物語はさらに加速して「対になる存在」との決戦で大盛り上がりして終止符を打ちます。

 前回「起承転結」で「起」と「転」の出来事・事態はリンクするべきだ、と述べました。「序」と「急」も同じです。

『ロードス島戦記』の例だと「序」ゴブリンの大群に辛くも勝利と、「急」灰色の魔女カーラに辛くも勝利。敵の強さは桁違いですが、勝ち方がともに辛勝です。

 経験則からいえば、どちらも圧勝してしまうと「そんな都合のよい結果があるかいな」と読み手に(いぶか)られます。

 だから最近流行りの「主人公最強」の場合「序破急」が使えないのです。圧勝しても実際スカッとするには「結末(エンディング)」でそれまで見下してきた勇者パーティーと主人公とのその後を書かなければなりません。そうなると「序破急」では収まらないのです。

 どうしても「結末」を書きたいのなら四部構成「起承転結」を採用するべきです。





最後に

 今回は「序破急による構成」について述べました。

「結末」をとらないだけで、物語は短編小説、よくて中編小説にしかなりません。

 分量が少なくなるほど効果を発揮するのが「序破急」の特徴です。

 それでは次回からお待ちかねの、ハリウッド式「三幕法」のおさらいをします。




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