1360.物語篇:物語104.重要なアイテム
今回は「重要なアイテム」についてですが、物語に登場して「重要でないアイテム」を書く必要はあるのでしょうか。
ですが物語の結末を左右するような「重要なアイテム」は限られています。
「剣と魔法のファンタジー」であれば「聖剣」が多いですね。
物語104.重要なアイテム
あるアイテムが重要な役割を果たす物語は数多くあります。
「剣と魔法のファンタジー」なら聖剣や魔剣、マジックワンドや聖痕など。
「青春」ならスポーツ道具や楽器、手紙や花束など。
およそ「重要なアイテム」が登場しない物語などないと思われます。
政権に聖剣、魔剣に負けん
『アーサー王伝説』に登場する聖剣といえば、アーサー王が自ら所有していた「エクスカリバー」です。円卓の騎士たちもそれぞれ銘のある聖剣を身につけていましたが、「エクスカリバー」はその中でも「湖の乙女」から拝領した特別な聖剣。その刃はどんなものでも切り裂け、その鞘は所有者の傷を癒すとされています。つまり「無敵の聖剣」です。
そんな聖剣を所有していたアーサー王はなぜ死んだのか。傷を癒す鞘を何者かに奪われてしまったからです。「エクスカリバー」をアーサー王に授けた「湖の乙女」は「絶対に鞘を失ってはならない。肌身離さず持っているように」と忠告していました。にもかかわらず知らぬ間に奪われてしまったのです。いかにもご都合主義だと思いませんか。聖剣を抜いたとき、鞘を捨てたのならわからないでもないのですが、「肌身離さず持っているように」と言われていたのに腰から鞘を外すでしょうか。
ですが「エクスカリバー」の鞘が失われなければアーサー王は死にません。それこそ「不老不死」です。
だから鞘を失うのは物語上の必然となります。
水野良氏『魔法戦士リウイ ファーラムの剣』最大のキーアイテムである「ファーラムの剣」は、世界を崩壊させる「魔精霊アトン」を倒せる唯一の「魔剣」です。その実は「魔精霊アトンを倒せる魔法戦士に鍛える魔剣」。つまり使い手の技能を極限まで引き出します。
このような強大な「聖剣」「魔剣」の類いは、失われて初めて存在価値に気づくのです。
ラスボスを倒すには特別な武具防具が必要。というゲームはけっこうありますよね。
ファルコム(現日本ファルコム)『Ys 〜Ancient Ys Vanished』ではラスボスのダルク・ファクトは最強から1ランク下のシルバーソードでなければ傷つけられず、シルバーアーマーとシルバーシールドでなければ魔法の威力を弱められなかったのです。
他にも探せばかなりの組み合わせが見つかります。
『ドラゴンクエスト』にせよ『ファイナル・ファンタジー』にせよ。必ず特定の組み合わせでなければ勝てない敵が登場するものです。
物語の鍵を握るアイテム
特定の中ボスやラスボスには特別な武具防具が不可欠なのは、ゲームを単調にしない工夫です。その時点で最強の武具防具で戦っても勝てないから、あれこれ知恵を絞ります。
ジョーダン・メックナー氏製作『プリンス・オブ・ペルシャ』ではあるときプレイヤーキャラクターが通過した鏡から、もうひとりの自分「鏡の敵」が現れます。もうひとりの自分ですから「鏡の敵」はまったく同じ動きをして立ちはだかるのです。いくら攻撃しても相手の攻撃のほうが速くて負けてしまう。どうすればよいのか知恵を絞りました。試しに納刀してみたら、鏡の敵も納刀してプレイヤーキャラクターと一体化して元に戻るのです。
物語の鍵を握るアイテムとして最も有名なのはJ.R.R.トールキン氏『指輪物語』に登場する「一つの指輪」でしょう。強大な魔物の軍隊を率いて「中つ国」の征服に乗り出した冥王サウロンの力の源である「一つの指輪」をホビットのフロドが破壊する物語です。
補給線を断たなければいくらでも回復されてしまいます。補給線を断てばいかに冥王といえどその魔力には限界が来るのです。
『アーサー王伝説』の後半は円卓の騎士たちが呪いの傷を癒すとされる「聖杯」を見つけ出す旅に出ます。多くのすぐれた騎士たちが投入されましたが、発見するにはかなりの時間を要したのです。
それもそのはず。「聖杯」は汚れのない人物にしか見つけられなかったからです。多くの円卓の騎士は女性関係が派手で、潔癖ではなかった。「聖杯」を発見した騎士はたった一度の同衾だけでも後悔し、以後潔癖を貫いていたのです。だから彼だけは「聖杯」を見つけられたのです。
話せるアイテム
中には「話せるアイテム」も存在します。
とはいっても「電話」を指しているわけではありません。「知能が宿ったアイテム」です。
「剣と魔法のファンタジー」なら呪いの剣で「人の血を吸いたい」と囁くなんていうのもありますね。日本では妖刀の斬れ味を試したくて辻斬りに及ぶ武士も多かったようです。
意志を持つ剣はときに勇者の相棒ともなります。たとえ勇者の単独行であっても、愛剣があれば寂しくない。ちょっと内向きな勇者像が思い浮かびますね。
水野良氏『ロードス島戦記 灰色の魔女』の「対になる存在」カーラは、額に着けているサークレットに意志を封じ込めています。だから「カーラ」を倒した相手へ次々と乗り移って魔法王国時代から生き続けてきたのです。本作では六英雄のひとりニースの娘レイリアに取り憑いており、倒されたのちパーン一行の盗賊ウッドチャックに乗り移り、歴史の闇へと消えていきます。
たとえ肉体が滅んでも、アイテムに意志を移してあれば、ある意味「不老不死」になったとも考えられるのです。
事典篇でも述べましたが、アンデッドの王であるリッチは、魂を香箱に封じ込めて「不死」となりました。だからどんなにリッチの肉体を破壊しても、香箱が無事であれば何度でも蘇ります。まぁリッチの特徴は『Dungeons&Dragons』で規定されたものなので、小説に出すわけにはいきませんが。
カーラの意志を封じたサークレットのように、魔術師が儀式を行なってアイテムに魂を移した場合、アイテムそのものを破壊するまで「」不老不死」でいられます。実際カーラを倒すにはサークレットを破壊しなければならないと大賢者ウォートから聞いていました。それでも盗賊のウッドチャックは、日の目を見ない境遇から「力」に興味が湧いてしまってサークレットを破壊せず装着して「ウッドチャック・カーラ」となったのです。
現代劇ならアメリカのドラマ『ナイトライダー』の「K.I.T.T.」も話せましたよね。こちらはコンピュータのAIですが、主人公マイケル・ナイトのよき相棒として、ともに悪を挫く戦いに挑んでいくのです。
「話せるカーナビ」の遥か先を行く技術が載せられたナイト2000ですが、今ではそれに匹敵するような自動車も登場していますよね。スマートフォンと連動したり、自動走行システムを搭載したり。真似できないのはターボブースト(ジャンプ)とスピードと防弾防爆仕様くらいなものでしょうか。
話せるアイテムはじょじょに現実味を帯びてきました。そう遠くない日に「しゃべる剣」が実用化されるかもしれません。まぁしゃべるとしても今どき剣を買う人がどれだけいるかは不明ですが。
最後に
今回は「物語104.重要なアイテム」について述べました。
『指輪物語』『魔法戦士リウイ ファーラムの剣』のように、物語に欠かせない重要なアイテムがタイトルになる作品はかなりあります。
タイトルになるほど重要なアイテムですから、それを巡る物語になるのは必定です。
逆に言えば、重要なアイテムを巡る物語になるのなら、タイトルにアイテム名を入れましょう。そのほうが読み手も作品を選びやすいですからね。




