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三百枚書けるようになるお得な「小説の書き方」コラム  作者: カイ.智水
物語篇〜どのような関係になるか
1358/1500

1358.物語篇:物語102.不老不死

 これほど人間を惹きつける物語もあまりないでしょう。

 誰もが「老いず」「死なず」を望んでいます。

 時の権力者も、その権力があるかぎり「不老不死」を追い求めるのです。

物語102.不老不死


 多くの人は「不老不死」を求めます。

 現実がツラいからといって死を選んではならないのです。死ななければいつか状況が好転するかもしれません。「不死」の誓いはいつか終わりますが、それでも人は「不死」を追い求めます。それが人間の業でしょう。

「不老」もまた多くの方が求める概念です。年老いて体の変化を感じたら、誰だって「あの頃に戻りたい」と思います。そもそもアンチエイジングの化粧品やサプリメントが売れるのも「不老」を求める方が多いからです。

「不老」と「不死」は本来別物ですが、たいていはまとめて「不老不死」と呼ばれます。

 今回はそんな「不老不死」の物語についてです。




秦の始皇帝

 私が「不老不死」ですぐに思い浮かべるのが古代中国・秦の始皇帝です。

 彼は中国史上初の「皇帝」となってから、東の海の向こうにあるという「不老不死」の仙人が住む「蓬莱」へ徐福一行を送り出し、なんとしてでも「不老不死」になろうと躍起になっていました。「死」は中華統一を成し遂げた始皇帝でも恐れるものだったのです。

 しかしいくら待てども徐福一行は戻ってこない。徐福一行は日本列島にたどり着いて、始皇帝の手が伸びてこないのをよいことに、そのまま日本に定住したとされています。

 そもそもなぜ徐福は日本に来たのでしょうか。実は始皇帝に「不老不死」を吹き込んだのも徐福だったのです。そして「海中に蓬莱(ほうらい)方丈(ほうじょう)瀛洲(えいしゅう)という三神山があり、仙人がおります。私は斎戒して汚れなき童男童女を連れ、不老不死の仙薬を得たいと思います」と言って、うまく始皇帝から逃れる口実にしました。

 始皇帝をだました徐福は富士山を「蓬莱山」と認識して、そのまま日本に住み着いたのです。おそらく富士山信仰のおおもとでしょうね。

 始皇帝の命により、東方海上に不老不死の仙薬を求めて三千人の少年少女を引き連れて船出し、熊野に上陸したと伝えられています。つまりひとつの村がそのまま日本へ引っ越してきたようなものです。

 ですが徐福にだまされたとは思いたくない始皇帝は、年老いるまで徐福の帰りを待ち続けました。

「不老不死」を追い求めた結果、抗えない「死」に招き入れられたのです。

 そういう意味では、現代日本で詐欺集団にだまされたお金持ちのお年寄りを彷彿とさせます。




ツタンカーメン

「不老不死」のため、古代エジプトではピラミッドを建造し、死者の身体を防腐処理して包帯でぐるぐる巻きにしています。

 その代表は王「ファラオ」であるツタンカーメンです。

 ミイラはおそらく史上最古の「不老不死」思想でしょう。

 いつか「ファラオ」が復活して、再びエジプトの民を率いる姿を託したのがミイラなのです。つまり一回死んでしまっても「蘇って再び私たちを指導してくれるだろう」という人々の思いが詰まっています。

 この「ファラオ」のミイラ思想を受け継いだのが、ソビエト連邦であり北朝鮮なのです。

 ソビエト連邦ではヨシフ・ヴィッサリオノヴィチ・スターリン氏の遺体が冷凍保存され、北朝鮮では金日成氏と金正日氏の遺体が同じく冷凍保存されています。

 いつか再生医療で蘇生できるかもしれないから、死後すぐに冷凍して腐敗を防ぎ、「復活の日」まで保存しておくのです。

 田中芳樹氏『銀河英雄伝説』の自由惑星同盟元帥ヤン・ウェンリーは、暗殺されてすぐにイゼルローン要塞へ連れ帰られ、冷凍保存されて長い眠りを続けました。ヤンの先輩であるアレックス・キャゼルヌ中将は妻のオルタンス・キャゼルヌから「フレデリカさんはヤンさんを惑星ハイネセンに埋葬したいから」とその理由が語られています。

 つまり「不老不死」の遺体処理としての冷凍保存ではなかったのです。




不死はアンデッドでもよい

 単に「不死」を目指すのであれば、アンデッド・モンスターになってもかまわないのです。むしろアンデッドになろうとするのが当たり前。それが「剣と魔法のファンタジー」での共通意識です。

 たいていは吸血鬼「ヴァンパイア」になろうとしますね。わかりにくい方は「ドラキュラ伯爵」を思い出していただければと存じます。

 弱点は太陽の光、十字架、にんにく、白木の杭、銀ですね。

 太陽の光は神聖なものであり、不浄な存在であるヴァンパイアが浴びると灰になってしまいます。

 十字架は聖なるものだから効果があるとされていますが、それはキリスト教布教の一環でそうなっただけでしょう。十字架そのものには神聖さはありません。もし神聖であれば、十字架で磔にされたイエス・キリストは不浄な存在だったことになりますからね。もし十字架が苦手なのであれば、キリスト教への信仰心が怖いだけではないでしょうか。不浄なものに抗おうとする心の強さがヴァンパイアを警戒させる。だから十字架は苦手なのかもしれません。

 にんにくはにおいが効くとされています。であればネギや玉ねぎなども効果がありそうなものです。単に血がにんにく臭くなって吸っても不味いから寄りつかないというだけかもしれません。

 白木の杭をヴァンパイアの心臓に打ち込むと再生できなくなるとされています。これは白樺に代表される「白木」の類いが東欧では神聖さの象徴だからです。

 ヴァンパイアは銀を嫌います。これは銀の「特定の毒に反応して変色する」特性が「邪な者をあぶり出す」点からの発想でしょう。ヨーロッパの貴族が銀食器を用いたのも、毒を盛られないようにするためだったとされています。もちろん毒見役はいるのです。いても今ひとつ信頼できない貴族は、念のため銀食器を使っていたのです。贅沢がしたいからではありません。当時の貴族はそれだけ命懸けだったのです。贅沢をしたかったのならより貴重な金で食器を作るべきですからね。銀の変色の特性が貴族に安心感をもたらしました。ちなみにヴァンパイアは銀を嫌いますが、銀では殺せません。ここは勘違いしませんように。

 このようにヴァンパイアになれば「不死」に近づけます。

 だから「ドラキュラ伯爵」の存在がまことしやかに囁かれていたのです。




不老はアンチエイジングに

「死」は避けられないものと観念しても、死ぬまで若く見られたい。多くの人はそう考えています。だからアンチエイジングの化粧品やサプリメントが売られているのです。

 今ならごまの成分である「セサミン」や、肌の成分である「コラーゲン」がアンチエイジングに効果があるとされていますよね。でも誰も効果はわからないのが実情です。

 コラーゲンは確かに肌の成分ではありますが、胃腸から吸収されるものではないとされています。また乳液などにコラーゲンを使っているものもありますが、肌とくに角質は排泄器官であって吸収するようにはできていません。いくらコラーゲン入り化粧品を使っても、肌がプルプルになるわけではないのです。

 セサミンはいまだ効能がわかっておらず、アンチエイジングに効果があるかは微妙だとされています。脳内物質の活性化には寄与しているような話は聞いたことがあるのですが、それがすなわちアンチエイジングかといえば難しい。セサミンはまだ研究途上の成分であり、「セサミンを摂取しているから若々しい」が成立するのかは不明です。

 現在さまざまな成分が関節に効くとか肌がプルプルになるとか血流を潤滑にするとか言われていますが、いずれも胃腸から吸収されるものなのか定かではありません。

 青魚の成分として有名な「DHA(ドコサヘキサエン酸)」も、胃腸から吸収されるのか疑問を持たれています。マウス実験ではDHAを体内に直接注入して効果を検証しているだけで、食べ物として摂取して胃腸で消化されても効能に変わりはないのかがわかっていないのです。

「コラーゲン」にしても青魚にしても、タンパク質が豊富な素材ですから、実際にはタンパク質が肌を構成するのを助けてプルプルの肌にするだけなのかもしれませんね。

 人間の胃腸でどんな成分が消化吸収されるかは定かではないのです。だから今日までさまざまな成分が「アンチエイジング」として商品化されています。それが本当に胃腸から吸収されるのかはわかっていないのにです。




剣と魔法のファンタジーの不老と不死

「剣と魔法のファンタジー」であれば、万能なる「マナ」が「不老」に効果がある場合が多い。自然界にあふれる大量の「マナ」を取り込んで生命力を蓄えれば見た目が若いままでいられる、という考え方ですね。これは魔術師が長命である理屈のひとつではあります。だから多くの「剣と魔法のファンタジー」では「マナ」が存在するのです。

 また神の力によって若々しくいられる場合もあります。こちらは「神気」によって「細胞が活性化されて若々しくいられる」理屈です。女性神官に美人が多い理由ともなっています。これは看護婦のイメージをそのまま神官に当てはめただけでしょう。

「マナ」と「神気」というふたつの存在を取り込めれば、まさに「不老不死」が叶うわけです。でも魔術師と神官の才能を同時に持てる作品はあまりありません。もちろんRPGには魔術と奇跡が使える「司祭(ビショップ)」もいますし、スキル制にして双方のスキルを持てる作品もあります。不滅の王道RPGであるSir−Tech『Wizardry』では、メイジ魔法とプリースト魔法が使えるニンジャが最強の存在です。メイジ魔法の最高峰である核爆発「TILTOWAIT」と、プリースト魔法の最高峰である死者蘇生「KADORTO」を使え、さらにニンジャなので防具を着けていなければレベルが上がるほどAC(アーマー・クラス)が下がり、隠れてから不意討ちもでき、武器による攻撃にはクリティカル・ヒットつまり一撃必殺の能力すらあります。私はかつて六人全員をこの「万能ニンジャ」にしたことがあります。それでも死んでしまうときもあるのが『Wizardry』の怖いところです。そのたびにリセットボタンに手を伸ばしましたね。

『Wizardry』で最強の存在は「万能ニンジャ」ではなく、実はリセットボタンとディスク複製だったのです。これさえマスターすれば、プレイヤーキャラクターを死なせずにいつまでも育て続けられます。『Wizardry』では魔法の習得もランダムなため、「TRAINING GROUNDS」でキャラのレベルアップをする際にもリセットボタンが活躍しました。

 ゲーム系異世界ファンタジーなら、ぜひリセットボタンとディスク複製も取り入れてもらいたいのが「オールドゲーマー」の願いです。なかなかないんですよね。両方兼ね備えたゲーム系異世界ファンタジーって。

 なければ自分で書けばよいわけですが。長編四部作の次はリセットボタンとディスク複製のあるゲーム系異世界ファンタジーを書いてみようかな。あの八〇年代のゲームの雰囲気が出せたらいいですね。





最後に

 今回は「物語102.不老不死」について述べました。

 赤ん坊まで巻き戻って新たな人生を歩む「超人ロック」のような存在もいます。そう考えるとロックって本当になんでもありですね。超能力で無双するし、赤ん坊まで巻き戻るし、若い姿のまま長く生き続けるし。ロックを生み出した聖悠紀氏こそが「不老不死」のような気がしてきました。

 現実世界では古代エジプトの王「ファラオ」や古代中国・秦の始皇帝のように「不老不死」を追い求めた存在もいます。

 一度死んでもいつか蘇生させられるのではないかと東側諸国では建国の祖が冷凍保存されているのです。電力が不足しているはずの北朝鮮でも金日成氏と金正日氏が冷凍保存されています。

 現在最も「不老不死」に近いのは、スキー中での事故により冷温処理を施された元F1パイロットのミハエル・シューマッハ氏かもしれません。2013年の事故から現在も治療が続けられているのです。今どのような状態にあるのかはいっさい不明ですが、8年も低温で新陳代謝を抑えられているので、もしかしたら自動車は運転できないまでも、生き返る可能性もゼロではないでしょう。漏れ伝わる情報では、現時点で会話ができる状態ではないそうですが。




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[気になる点] エジプトのミイラは現世での復活を前提としたものではありません。エジプトの宗教観では遺体を正式な手順で保存(ミイラ化)し、儀式を行うことであの世で魂が復活し、現世と同じ生活ができるように…
[一言]  スッポンポンの最強忍者懐かしいですね。  全裸忍者は良く話にはでますけど、実際のところ、ACが下がっても魔法耐性がザルでは使い物にならないので、自分は忍者も魔法耐性装備で固めてましたけどね…
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