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三百枚書けるようになるお得な「小説の書き方」コラム  作者: カイ.智水
物語篇〜どのような関係になるか
1329/1500

1329.物語篇:物語73.誰もが世界を救いたいわけではない

 今回は「剣と魔法のファンタジー」によくある「世界を救う」について考えます。

 なぜ主人公は「世界を救う」ために「魔王」を倒さなければならないのでしょうか。

物語73.誰もが世界を救いたいわけではない


 個人的な理由で「勇者パーティー」に加わる仲間も多くいます。

「親の仇をとりたい」から勇者パーティーの力を借り、仇討ちしたら離れていく。

「世界の敵を倒す勇者パーティーを、私怨を晴らすために使う」

 そういう物語もありますよね。




世界より自分のために

 価値観は人によってさまざまです。

「世界を破滅させないために魔王を討伐したい」人ばかりではありません。

 ときに「たいせつな人を殺されたから、殺した相手に復讐したい」という人物がパーティーに加わります。

 得難い人材ほどそういった理由で勇者パーティーに参加するのです。

 一度加入して実力を見せつけられると「手放したくないな」と思ってしまいます。それほどの人材であれば、たいていは後日正式に勇者パーティーの一員となるのですが。

 最初は私怨を晴らすだけが目的でした。しかし復讐を遂げたら戦い続ける動機がありません。だからパーティーを離れるのです。

 私怨はひじょうに「自分事」であり、それに勇者パーティーが手を貸す自体、本来ならありえません。ですがそこは「物語」。進行の都合上行きがかりでもその人物の私怨を晴らす手伝いをするんですよね。

 しかも私怨を抱いている人は、世界がどうなろうと知ったことではないのです。私怨にだけ執着しており、将来魔王によって世界が支配される遠くの危機にまで頭がまわりません。

 だから私怨が晴れたら勇者パーティーを離脱するのです。

 しかし平穏に暮らせるはずが、魔王の影響がその人物のそばにまで及んでくる。

 そこで勇者パーティーを思い出します。

「あのとき勇者たちは魔王を倒すと言っていたが、まだ倒せないのか」「あいつらに任せておいても魔王は倒せないのではないか」

 そう思い至るとその人は勇者パーティーを追うか、自らパーティーを結成して魔王に迫ろうとするでしょう。後者の場合でも結果的には勇者パーティーと接触して、自然と勇者パーティーへ復帰するものです。

 つまり話が進んでいくと状況が変わり、私怨を晴らした人も協力して世界の危機に対処しようとするのです。

 魔王退治が「他人事」だった人が、「自分事」になったときに正式に勇者パーティーへ参加します。勇者パーティーの理念に賛同するのではなく、あくまでも「自分事」を解消するために参加するのです。




魔王軍からの寝返り者

 中には、当初魔王軍に属しながら、勇者パーティーへ寝返る人物も現れます。

 まぁだいたいは勇者パーティーが初めのうちに戦った四天王のひとりという場合が多いですね。

 勇者パーティーに敗北して魔王軍を追われる者もいます。勇者パーティーの説得に心を動かされて魔王に疑問を抱き、魔王軍を離れる方もいるでしょう。勇者の熱い心にあてられて正義感が芽生える者もいるでしょう。

 裏切る理由はひとつではありません。

 しかし理由もないのに裏切ってくる者を、すんなりと勇者パーティーへ受け入れられるほど、勇者が寛容かは疑問です。

 これまで命を懸けて戦ってきた勇者が、四天王のひとりを受け入れる。

 なかなかできはしません。

 田中芳樹氏『銀河英雄伝説』では銀河帝国軍の宿将ウィリバルト・ヨアヒム・フォン・メルカッツ中将が、銀河帝国内戦「リップシュタット戦役」敗戦後、副官のベルンハルト・フォン・シュナイダー少佐に自由惑星同盟への亡命を進められ、彼を伴って自由惑星同盟が奪取したイゼルローン要塞に配属されているヤン・ウェンリーを頼ります。ヤンの部下たちはこの亡命が擬態ではないかと疑いますが、ヤンは亡命してきた状況を伝え聞くと疑うことなく亡命を許可し、自分の権限が及ぶかぎり庇護すると表明するのです。

 このように魔王軍側の内紛に敗れて勇者パーティーを頼る者もいます。

 女性にわかりやすい例だと、アニメの東映『フレッシュプリキュア』に登場する敵の管理国家ラビリンスの幹部だったイースが、敗戦の責任を問われてプリキュアに助けられます。そして東せつなとして暮らし、キュアパッションとしてラビリンスに立ち向かうのです。

 これは敗北して魔王軍を追われたパターンでしょう。

 プリキュアだと『HUGっと!プリキュア』のルールー・アムールもイースと同じような構図でプリキュア側に寝返ります。

 ただこれらはよい例であって、悪い例も当然あります。

 たとえば、裏切って勇者パーティーに寝返ったこと自体が擬態で、チャンスを窺って裏切りに転じる者もいます。アニメの富野由悠季氏『機動戦士Ζガンダム』のサラ・ザビアロフが当たるでしょうか。

 さらに、当初味方だったのに裏切って魔王側へ行き、そこでさらに裏切って味方に戻る、という忙しない者もいます。サンライズ『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』のニナ・パープルトンがこのパターンです。

 サラにしてもニナにしても、節操がないため視聴者からのウケはあまりよくありません。

 裏切りをそうポンポンされてしまっては「裏切り」の持つ価値が下がるからです。

 それならまだ単に裏切っただけのレコア・ロンドやシーマ・ガラハウのほうが筋が通っています。




勇者も全員が世界を救いたいわけじゃない

 勇者パーティーに入る者がすべて「魔王を倒して世界を救いたいわけではない」のです。

 そして勇者そのものも「魔王を倒して世界を救いたいわけではない」かもしれません。

 それこそ私怨で「魔王を倒す」と決意しているだけで「世界まで救おうとは思っていない」とか。

 ときには全世界を敵にまわしても、愛する人のために行動する主人公だっているはずです。それが結果的に世界を救ってしまうこともあります。

 結果論で「世界を救った勇者」になっても、行動はあくまでも「愛する人のため」です。だからたとえ「勇者と魔王」の物語でも、動機がまったく異なります。

 世界中の人への奉仕の心ではなく、愛する人への惜しみない愛が「魔王」を倒す原動力となるのです。

 世界を救う「勇者」であろうと、そのおおもとはたったひとりのために。けっこう多いパターンになります。





最後に

 今回は「物語73.誰もが世界を救いたいわけではない」について述べました。

 どんな「勇者」でも「世界を救うために戦いたい」わけではありません。

 たったひとりのために戦い、結果として「世界を救っていた」ことのほうが多いでしょう。

 もし世界が崩壊しようとしているのなら、誰もが崩壊を阻止しようと動くかもしれません。しかしそれをまったく意に介さない運命論者もいます。そういった方を主人公にしても物語は面白くなりません。

 少なくとも「魔王」の非道を受け入れるのではなく、抵抗する主人公でなければ面白くないのです。




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