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三百枚書けるようになるお得な「小説の書き方」コラム  作者: カイ.智水
物語篇〜どのような関係になるか
1324/1500

1324.物語篇:物語68.平凡な主人公にこそ感情移入できる

 今回は日曜日に予約投稿したものです。

 なお抜歯は明日火曜に延期されました。先に抗生物質を飲んでおき、感染症を予防するのだそうです。即日抜かれることが多かったので、このパターンをすっかり忘れていました。ということで今日も火曜ぶんを予約投稿致します。しかし水曜も違う病院に通わなければならないので、ストックを急いで作っています。間に合うかな?

 前回に引き続き「主人公最強」について考えてみました。

 物語の最初から「主人公最強」である必要はあるのでしょうか。

 面白い物語はたいてい最初は「平凡な主人公」です。それが「最強」になっていくから感情移入しやすくなります。

物語68.平凡な主人公にこそ感情移入できる


 最近のライトノベルはとかく「主人公最強」「俺TUEEE」「チート」「無双」と、主人公がとてつもなく強い。

 しかし難点があります。読み手が主人公へ感情移入しにくいのです。憧れはするでしょうが、今ひとつ入り込めない。

 最初は平凡な主人公が、旅を経て立派な冒険者となる。だからこそ、読み手は主人公に感情移入しながら爽快感を味わえるのです。

「最初から特別」であれば、エリートの物語であって、凡人の努力から始まる物語ではありません。




始まりはごく平凡に

 入り込めない主人公では読み手が置いてけぼりを食らいます。

 それを避けるため、物語の開始当初はごく平凡な人物に設定するとよいでしょう。

 主人公をエリートにするのなら、三人称視点にするとよい。傍から見て「この主人公スゴい」と思えるには、一人称視点よりも三人称視点で客観的に書いたほうが映えます。

 しかし三人称視点は臨場感を出すのが難しい。盛り上がりに欠けてしまうのです。

 それでもエリートな主人公は、どうしても感情移入しづらい。いっそコメディーに振ってしまえば強さが引き立ちます。

 神坂一氏『スレイヤーズ』の主人公リナ=インバースの魔法の強さはまさに天下無敵。ドラゴンさえもまたいで通る「ドラまた」との二つ名を持ちます。このリナの強大な魔法を引き立てるために、あえて「コメディー」に振っているのです。

 考えてみればマンガの北条司氏『CITY HUNTER』の主人公・冴羽リョウも「主人公最強」でありながら「もっこり」など「コメディー」に振っていますよね。

「主人公最強」でも「コメディー」に振れないのはマンガのさいとう・たかを氏『ゴルゴ13』のデューク東郷など劇画に多いですね。

 少年向けマンガで「主人公最強」にするなら「コメディー」は避けて通れません。

 マンガの鳥山明氏『DRAGON BALL』の主人公となる孫悟空だって戦闘以外は天然ボケな一面を持っています。マンガの尾田栄一郎氏『ONE PIECE』の主人公モンキー・D・ルフィも戦闘ではかなりの無双っぷりですが、いつもはとぼけたところのあるキャラです。

 バトルマンガだけでなく、スポーツマンガを見ても「主人公最強」の引き換えにコメディーに振る作品は多い。

 マンガの高橋陽一氏『キャプテン翼』の主人公・大空翼は試合では「主人公最強」ですが、日常生活ではただのサッカーバカです。マンガの満田拓也氏『MAJOR』の主人公・茂野吾郎も、野球では「主人公最強」の投手ですが、日常シーンではボケまくり。

 ここまで挙げた中で、最初から「主人公最強」なのはリナ=インバース、冴羽リョウ、デューク東郷くらいのものです。

 他は一般人から始まって物語の進行によってどんどんレベルアップしていくパターンが多い。孫悟空はただ腕っぷしが強いだけの少年でしたが、亀仙人(武天老師)のもとで修行に励みますよね。後付け設定でサイヤ人という戦闘民族だとされていますが、じょじょに戦闘力が高まっていくタイプの主人公です。




平凡でも特訓は人一倍

 スポーツマンガの主人公は、当初その競技とは無縁の人物であり、当然そのままではなんの役にも立ちません。そこで必要になるのが特訓です。

 マンガの井上雄彦氏『SLAM DUNK』の主人公・桜木花道だって、高校に入るまでバスケットボールとは縁のない不良な人生を歩み、たまたまバスケットにダンクしている姿を赤木晴子に見られてしまいます。晴子にひと目惚れした花道は、流れでバスケットボール部へ入るのです。しかし体格に恵まれながらもバスケットボールはまったくの初心者。しかし晴子から気に入られたいので、地道なドリブルやシュートの特訓を行ないます。そして大会へ出場する頃には「リバウンド王」を自称するほどゴール下での無類の強さを手に入れたのです。シュートだってダンクばかりでなく「庶民シュート」の特訓も続けています。恋のライバルでもある流川楓とともに湘北高等学校のスターティング・メンバーとなって、これからが本番だ、というところで連載が終わってしまいます。

 井上雄彦氏にとっては試合の勝ち負けはどうでもよかったのでしょう。読み手に見せたかったのは「地道な努力」特訓を厭わない姿勢だった。そう考えるとインターハイ緒戦で連載終了とはならなかったはずです。人気がなくて打ち切りならいざ知らず。当時の『週刊少年ジャンプ』の連載陣でも屈指の人気を誇る作品が、これからというところで連載終了ですよ。これは相当綿密に担当編集さんとやりとりしていないとできません。「人気のあるうちに終わらせよう」という井上雄彦氏の強い意志を感じます。

 スポーツマンガに限らず、途中から「主人公最強」になるにはひたすら特訓あるのみです。

 平凡な人物が「主人公最強」に上りつめるのに、ある「きっかけ」だけでなってはなりません。たとえばモンキー・D・ルフィは悪魔の実を食べたことで「主人公最強」へと変わりました。これではなんの感慨も抱きません。読み手はルフィの無双が読みたいのでしょうが、無敵な主人公がいくら苦戦したところで勝つのは既定路線です。あとは「どうやって勝つか」だけ。ルフィを危機に陥れて劣勢を作り出し、そこから「どうやって勝つか」が見せ場なのです。

 平凡な人物があるきっかけで努力を始めます。そうしてじょじょに強い相手と戦いながらレベルアップしていき、ときに負けながらも誰もが認める「主人公最強」になっていく。天下一武闘会やフリーザ一味と戦って「主人公最強」へとたどり着いた孫悟空や、ジュニアの試合で右肩を壊して投げられなくなり、左投手として野球の舞台に帰ってきた茂野吾郎など。負けてもそれを糧にしてより大きくなって帰ってくる。それが本当の「主人公最強」の物語ではないでしょうか。

 何度も負けてきた孫悟空や茂野吾郎が「主人公最強」ではないと断じる人はいないはずです。いくら負けても「主人公最強」になれます。そのための苦しい特訓の日々を耐え抜き、目の前の課題をひとつずつこなしていき、最終的には強大な技や武器を手に入れて「主人公最強」となったのです。

 その意味では川原礫氏『ソードアート・オンライン』の主人公キリトは「主人公最強」になるための特訓シーンが書かれていません。本来(のブログ連載の段階で)はあったのですが、単行本一冊に収めるために大幅にカットされてしまったのです。『ソードアート・オンライン プログレッシブ』はその省かれたシーンを元に再構成された物語となっています。『ソードアート・オンライン』第一巻ではただひたすら強いだけのキリトですが、本来はベータテスターとして攻略法を地道に見つけていった経験があるのです。それをまるっと省いてしまったがゆえに、いきなり「主人公最強」になってしまいました。

 オンラインゲームでは今も「キリト」を名乗る「イキリト(関西方面の「イキる」つまり「粋がる・意気がる」にかけています)」が現れています。




平凡から特訓して最強へ

 平凡な主人公が、特訓を積んで実力をつけ、実戦を通して実績を残す。(「実」の字を三回も使っていますね。他に書きようはありますが、英単語は使いたくないのでこのままで)。

「主人公最強」はその手順を省いてはならないのです。

 平凡だから負けた。もっと強くなりたい。特訓する。実戦で試してみる。結果を残す。

「勇者と魔王」なら、最初は四天王にすらボロ負けでしょう。しかし負けて地力を思い知り、特訓で己を磨き上げます。そして冒険の旅で実績を残し、実力がどの程度あるかわかるのです。そして一度負けた四天王に勝って手応えを感じます。

「勇者と魔王」は、平凡な主人公が「勇者」に選ばれたほうが俄然面白くなるのです。

 平凡だから負け、負けたのが悔しいから特訓し、再戦したら勝てた。これを繰り返して「主人公最強」になるから読み手もすんなりと感情移入できるのです。

 あなたの「主人公最強」の物語に、特訓シーンはあるでしょうか。それが面白くなるかどうかの鍵を握っています。

 もし最初から「主人公最強」であったとしても、毎日のように技の練習を欠かさないでしょう。その練習風景を見せて「主人公最強」を維持する努力を読ませてください。

 特訓も練習もせずに「主人公最強」を維持しているから底が浅いのです。

 どんな主人公でもひたむきに己の力で強さを求めているから、読み手も「主人公最強」に納得するのです。

「主人公最強」がアイテムの力ではなく、己の実力でかちえた称号なら、きっと努力を惜しまないでしょう。称号だけで強さが維持できるのであれば、皆が名乗っていますよね。

「主人公最強」に必要なのは主人公が「努力する」シーンなのです。公に書いてもよいですし、特訓する前やした後のようなシーンを作ってもよいでしょう。





最後に

 今回は「平凡な主人公にこそ感情移入できる」について述べました。

「主人公最強」が持て囃される時代ですが、本当に読み手の心へ届くのは平凡な主人公が次第に「最強」となる物語です。

「絶対に死なない主人公」は確かに「主人公最強」でしょうが、スリリングさがまったくありませんよね。

 しかし「平凡な主人公」ならいつ死んでしまうかわからない。だからスリリングになり、ハラハラ・ドキドキしてくるのです。そのうえで「主人公最強」ならどう対処するのかワクワクしてきます。




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