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4/7

屋台の試食を作ってみた

5/7、一部表現の変更、行間の調整をしました

 今回、こんなにたくさんの成果を出せたのはズィードさんのおかげだ。なのでここはどどーんと丸ごといっぴきゴートをおすそ分け。

「トモシさんに貸したのは正解だったな」とかいいながらいつも以上に喜んで受け取ってくれた。


 さて、俺のほうは屋台の準備だ。

 早速調理場を借りて買ってきたものを並べる。

 今回作るのはコロッケとメンチカツだ。

 安くて簡単、そのうえおいしい。

 あと調理法として、揚げるっていうのはこの世界に来てまだ見たことがない。ものめずらしさも手伝って、売れるんじゃないかって思ってる。

 まずはコロッケ。某アニメの主題歌どおりに作成。あ、もちろん揚げる手前までね。

 次にメンチカツ。これはウルフの肉を使う。これもまたどこかの漫画で癖の強い肉をメンチカツにしてたからっていう安易な発想なんだけど、案外うまくいくんじゃないかって思ってる。

 なんて考えてるうちにタネが完成。


 ……もしまずかったらどうしよう。

 俺の未来がかかってるんだ。ちゃんと味見しておくか。

 大量の油を準備してコロッケとメンチカツを投入。しばし待つ。

 徐々に衣が狐色に変わっていくのを眺めながら、頃合を見て引き上げ、よく油を切る。

 うーん、カラッと上がっておいしそうだ。


「またずいぶん変わった調理法なうえに、変わったものを作ったな」


 っと、ズィードさんに声をかけられた。

 やっぱり揚げるっていう調理法はなかったか。計算どおり。

 さて、さっそく味見を・・・


 じー


 味見を……


 じー


 ……


「あの、味見してみます?」

「おう。わりぃな、催促したみたいでよ」


 いや、催促したでしょ!?

 やばいやばい、なんとかとどめたものの、思わず口に出して言うところだった。


「あー!お父さんずるーい!私も食べたいのに!」


 そこへシーナちゃん登場。タイミングよすぎやしないか?


「あ、いや、これはだな、そう!トモシさんの明日のために大事なことなんだ!」


 いや、俺が味見すればいい話ですからね?口にはださないけど。

 するとシーナちゃんはターゲットを俺に変更。上目遣いで何かを訴えてくる


 うるうる


「……何、シーナちゃん?」


 うるうる


「あの?」


 うるうる


「……シーナちゃんも味見する?」

「うんっ!」


 シーナちゃんどこでそういうことを覚えてくるんですか!?未成年とはいえ(以下略

 初めてズィードさんとシーナちゃんの血のつながりを感じたよ。

 しょうがないので自分用とシーナちゃん用に2つずつ追加。すぐに出来上がる。

 その間、ズィードさんは律儀に待っていた。この人変なところでまじめだ。

 いや、単にシーナちゃんに弱いだけか?


「それじゃあさっそく」

「あ、2人ともまだ揚げたてだから熱いので気をつけて」


 って聞いちゃいねぇ!


「熱っ」

「大丈夫?」

 だから言わんこっちゃない。

 シーナちゃんは手をフーフーしてる。

 かわいい女の子のこういう仕草って不思議とさまになるなぁとか少し場違いなことを考えてしまう。

 しかしズィードさんは1番最後に揚げたヤツを平気で手づかみでいきやがった。

 あんたの手はステンレスやチタンか何かですか?


「はい、これを使って」


 俺は自分用に準備してた串と皿をシーナちゃんに渡す。

 俺?俺も手づかみですよ。

 ズィードさんと違い俺の手は普通の一般ピープルの手だけど、1番最初に揚げたやつなので多少冷めてるから大丈夫。

 少し冷めた味も確認したかったからね。

 さて、味のほうは?


 サクリ


 うん。うまい。

 サクサク衣にホクホクジャガイモ。チープな感じのする味なんだけどそれが逆にいい。

 腹持ちもよさそうだし、食い物食ったぜ!って気にさせる。少し冷めてもこれなら、熱いのが苦手な人のにはこっちのほうがいいかも。

 まぁ俺が揚げ物好物だからそう思うのかもしれないけど。


「こりゃマジでうめぇ!サクサク食感に溢れる肉汁、この肉の存在感、こんなうめぇもん初めて食ったぞ!」


 ズィードさんがすごい勢いでかぶりついている。食べたのはメンチのほうか。

 まぁあの評価と勢いなら味も大丈夫そうだ。

 あっという間に食べ終わって少し名残惜しそうにしている。


「ちなみにそれ、ウルフの肉ですよ」

「マジか!?ウルフの肉っつったら筋ばっかなうえに癖と臭みで食えたもんじゃねぇシロモンだぞ?嘘じゃねぇんだよな?」

「ええ。ちゃんと食べられる部位を選んで使ってますよ」


 ミンチにしてね。


 そういえばシーナちゃんは静かだな。もしかして口に合わなかったか?

 そう思ってシーナちゃんを見ると、こっちはこっちで一心不乱に齧っていた。

 何だかリスみたいで可愛い。

 そんな様子を生暖かく見守っていると、やがて食べ終わったシーナちゃんが幸せそうにため息をついた。


「どっちもすごく美味しかったです。それにあの触感は初めてですね。お父さんはこんなに美味しいものを私に内緒で食べようとしてたんですね?」

「シ、シーナ?だからこれは」


 シーナちゃん、君のお父さん、なんか泣きそうな顔してるよ?

 シーナちゃんはズィードさんに背を向け、俺のほうを向く。あ、ズィードさんが崩れ落ちた。

 なにそのすっげぇいい笑顔。俺はすっげぇ嫌な予感がするんだけど。


「ねぇトモシさん、今度何か作るときは私にも味見させてください」


 やっぱりこっちにキター!いや、別に味見くらいいいんだけど、何か作るたびにシーナちゃん呼ぶのも手間だよ。


「今日みたいにタイミングが合えばね」


 じゃないと居ない時困る。


「約束ですよ?約束を破ったらお父さんもトモシさんも嫌いになっちゃいますからね?」

「あはは。俺もシーナちゃんに嫌われたくないからがんばって守るよ」


 よかった。そこさえ妥協してもらえれば俺のほうは別に問題はない。ズィードさんがちょっと怖いけど。


「・・・トモシさんよ、絶対に破るなよ?俺も巻き添えになるんだからな?」


 ヒィィ!


 背後から幽霊のように囁くズィードさんに思わず震え上がる。

 前言撤回。ズィードさんはちょっとどころじゃなくかなり怖い。


「はい!約束は絶対に破りません!」


 せっかく生きていくための光明がみえたのに死にたくない。

 そんな様子を見ていたシーナちゃんがクスクス笑う。さっきのような迫力を持った笑顔じゃなく、自然な笑顔だ。


「でも安心しました。これなら明日も心配ありませんね」

「俺も大丈夫だと思うしシーナもこう言ってんだ。明日はがんばれよ」

「そうですね。がんばります」


俺は2人の応援をうれしく思いながら、残りの仕込みと準備を済ませていった。



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