大倉 亘 13 (最終話)
成真が捕まって
数年の時が経った。
俺は実家で煎餅を焼いている。
「ありがとうございますぅ~~」
しかし普通の煎餅ではない。俺がデザインしたこの大倉煎餅のキャラクター、『倉餅ぇちゃん』が煎餅にプリントされた唯一無二の煎餅だ。売り行きはまだまだこれからってところだが‥‥。
「すいません、醤油2つと味噌2つ下さい」
「はい醤油2つと味噌2つねぇ~」
「ん?さっちゃんこの絵のやついる?」
母親に連れられた5歳くらいの女の子が倉餅ぇちゃんを見つめていた。意外と子供には人気なのだ。
「んーいらなーい」
「あそう、じゃあその4つでー」
「はいー‥‥」
名前が悪いのかな‥‥。
絵かな‥‥。もっとドラゴン系の煎餅とか作ろうかな。ドラゴン系って何だよ。形が?難いなぁー。あ、いっその事この何の生物かわからない倉餅ぇちゃんをドラゴンに‥‥
クラゴン?ってどうよ。あれ?中学んとき一時期クラゴンって呼ばれてたな俺。え?自画像?‥‥イケるかもな‥‥。
“すいません、倉餅ぇちゃん4枚ください”
突然凄い注文が耳に入った。倉餅ぇちゃん目当てだと?この煎餅を目当てに来るなんてまだこの町にも変わった奴が‥‥
「え‥‥」
煎餅を焼いている手が思わず止まった。
「‥‥成真」
目の前に立っていたのは成真だ。
「‥‥」
「亘君‥‥あな空いちゃうよ?煎餅」
「え、‥‥あぁ、大丈夫だよ」
「後でお茶飲みに行くんだけど、行く?」
「え?‥‥お茶?お茶、おう、え、お茶ってーあのお茶?」
「うん。あのお茶。あとこの煎餅持って。作太も後で来るって」
「ああ、そうか。5時で上がるから、それから行くよ」
「わかった、先に行ってるよ」
「おう。てか‥‥、成真」
「ん?」
「おかえり」
「ただいま」
おわり。




