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三橋 成真 1

駅を出た通りに並ぶ雑居ビルたち。


 


 その中でも特に地味な建物の2階あるゲームソフト屋。といっても7割程はトレカ(トレーディングカード)を扱っており、店内の半分は机が並んだカードゲームエリアになっている。




 平日でも夕方になると満席になったりもして、建物の外見とは裏腹にプレイヤーには熱い店だ。




「ここまで。作太(さくた)、交代して」と隣の席で見ていた佐久間(さくま)作太に投げかける。


「はーい」






「何だよ、勝ち逃げ一回勝負かよ」






 俺とプレイした、目の前に座っているこの大柄で寝癖がかかった男、大倉(おおくら)(わたる)は毎日のようにここへ来てはカードゲームをしている。




「亘君弱くなったね」




34歳のオッサンで、警備のバイトをしながら夢に向かって日々努力している……らしい。俺より10歳年上だけど特に敬う事も無く同い年のように接している。






「今日入ってるの?」と自分のカードを慣れた手つきで広げる作太。






「うん5時から、作太、今なら亘君に勝てるよ」




 俺の隣に座っている作太は亘君と違い細身で小柄。歳も俺より4つ下の20歳でまだ若いが学校も行ってない、仕事もしていない、いわゆるニート。


 作太も俺達がここに居る時は必ず来る常連だ。




「まだ40分じゃん、もう一回出来るでしょ」と亘が不貞腐れたように呟く。


 今日はいつもより機嫌が良くないみたいだ。




「10分前に入らなきゃいけないし、じゃっ」




「相変わらず真面目だねぇ~」




 自分のカードを片付け、出勤の準備をする。




「あっ!ねぇブルードラゴン入った?」


 作太が目を輝かせ聞いて来る。




「ん?あぁ入ったよ」




「え?マジ?え、いくらで売ってるの?」




「3500円」




「えぇー。ねぇ2000円じゃだめ?」




「不正行為はダメ。ちゃんと働いて稼いで買いな」




 俺はこの店で働いている。出勤前や休みの日もここでこの二人と会う事は多い。






「なぁ、隣の女とどこまでいった?」


「は?」




 腹いせなのか、亘がちょっかいを出してきた。




「え、なになに?」




「この前な、隣に住んでる謎のキモい女からいきなりプレゼント貰ったらしいぜー?」




「えー!」






「そんなんじゃないから」


俺は立ち上がり、そのまま店の奥に入っていった。






 22時15分、


いつものように外看板をしまい、店の鍵を閉める。


 アルバイトだけどシフトが社員並みに入っているので自然と大体の事は任せられている。




 この平凡で単調な毎日に幸せを感じている。








「ただいま」


 


玄関の明かりを点けるだけで1k6畳の部屋も照らされる小さなアパート。




もちろんこの部屋には俺しか住んでいない。


 


けどいつからか、「行ってきます」と「ただいま」は言うようになった。






ドア横にある棚の上に、10センチくらいの小さな手作りの人形がある。俺に似たその人形は笑顔でこちらを見ていた。






“この前な、隣に住んでるキモい謎のからいきなりプレゼント貰ったらしいぜー?”






「‥‥‥‥」






 その人形の首根っこを掴みゴミ箱の前へ立ちー




「‥‥‥‥」




 人形の顔を見る。








 「何で笑ってるんだよ‥‥」


 そう言いながら元の位置に人形を戻した。

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