第十七・五話 SS 少年と仔猫+姉とメイド長
僕は今、ヴェネート公爵家の馬車に乗って、シェーナ街に戻る車内にいます。
シュガーナ姉ちゃん、相棒のニャンタとドングリ宮殿メイド長のエリーゼさんと一緒です。
ほぼ揺れない不思議な馬車のカラクリは、行きの車内でエリーゼメイド長が教えてくれました。
ご主人となるトキン様は凄い御方のようです。
お給金も凄い金額をくれるといいます。
「ドングリ宮殿の感想を教えてもらえますか」
エリーゼメイド長の質問に、姉がこたえます。
「とても素敵な森の中に建つ、とても綺麗な宮殿で感激しました。天然温泉も楽しみです」
姉が、少し興奮気味です。
「食料ダンジョンは、僕とニャンタにお任せだぞー。あとブナの森でペムペム鳥も鳴いてたぞー。ニャンタの大好物だよー」
「ニャフ〜ン♪」
僕と相棒も感想を伝えます。
「そうですか、気に入ったようで良かった」
エリーゼメイド長が、ニコリと笑顔をみせます。
とても綺麗なメイド長さんです。
「シュガーナ姉ちゃん。宿屋すぐ辞めれるのかー」
「ニャフー?」
質問します。
「大丈夫よ。宿で提供していた食事のレシピを、全て女将さんにあげる約束をしてるの。旦那さんもいるし平気なのよ」
姉がこたえます。
「元々、ご夫婦だけで充分回せる宿なの。でも私達が二人きりになったから、仕事と住処を与えるために、わざわざ雇ってくれたのよ」
初めて聞く話です。
「そうだったのかー」
僕が物心ついたころには、今の住まいに姉と二人暮らしです。
ご主人と女将さんには、子供がいないのもあって、優しくしてもらった記憶しかありません。
「そうよ。だから旦那さんと女将さんは、一緒に喜んでくれるわよ」
「そっかー」
どうやら、すぐにでも菓子職人になれそうです。
僕も甘味は作るのも食べるのも大好きです。
「エリーゼメイド長さん。宮殿の人員は十人くらいなのですか」
姉が質問します。
「そうですね。今のところ一緒に住む家人に関しては、あと六人増える予定です。お嬢様方で滞在する予定なのはニコーレ様、アリーチェ様のお二人と、そのメイド二名の予定です」
エリーゼメイド長さんが、十四人になると言います。
「それと、私のことはメイド長と気軽に呼んで下さい。さん付けも、エリーゼもいりませんよ。私もシュガーナさんのことは料理長。クッキーノくんのことは副料理長。ニャンタくんは、ニャンタと呼ばせてもらいます。もう同じご主人様に仕える仲間ですからね」
メイド長がニコリと笑います。
「わかりましたわメイド長」
「メイド長、わかったぞー」
「ニャフー」
〜〜〜
『宿屋ワンコイン』に到着します。
姉は夕食の仕込みです。
今日は僕も手伝います。
ニャンタは見張りです。
メイド長は、客室で女将さん達とお話です。
〜〜〜
夕食の仕込みが一段落つきます。
メイド長が厨房に降りて来ます。
「話はつきました。明日の昼前には、迎えの者をよこします。その後、追加で必要な物と明日の甘味の材料買い出しをしてから宮殿に来てもらいます。それで大丈夫ですか」
「はい、よろしくお願いしますメイド長」
「メイド長、わかったぞー」
「ニャフー」
笑顔で別れます。
宿屋のご主人と女将さんが降りて来ます。
「シュガーナ、クッキーノおめでとう」
そういって女将さんは、姉を抱きしめます。
ご主人は僕を、天井に届くくらい高く持ち上げます。
相棒は機嫌良く、僕らの周りをクルクル走り回ります。
「旦那さん、女将さん。これまでありがとうだぞー」
「ニャフ〜ン♪」
「シェーナ街には、食材の買い出しに来るでしょう。たまには顔を見せに来ておくれよ」
女将さんが泣いてます。
旦那さんは笑顔です。
〜〜〜
僕は相棒を頭に乗せて、白猫店長のお店に向かいます。
公爵家別荘へ引越すことを伝えるためです。
相棒と一緒に元気に進みます。
明日からは菓子職人です。




