第十六話 廃墟別荘15
ワイン祭四日目 夕方
夕方前に、ニンジーノ達と別れ、モンタルチーノ街へ戻ります。
〜〜〜
ソフィこと、ソフィア・トツカーナ伯爵令嬢が貸切にしている、プリオーリ宮殿の別邸を、六人で出発します。
歩いて鑑定屋さんに向かいます。
メンバーは、
アリスこと、アリーチェ・アレンツォ子爵令嬢。
アリスの専属メイド、シーマさん。
僕の家人、エリーゼ、クワッドとピッピーノです。
店内にアリス、シーマさん、エリーゼ。会計係のお手伝いさん。
店外に僕とクワッドと、子爵家人のミルンさん。
行列整理にピッピーノです。
徐々にお客さんがきます。
「これお願いね」
十五歳前後にみえる、ソロ女性冒険者さんです。
「はい。これは銘を【駆出しの金槌】効果は体力+5器用さ+5の逸品です。価値は10万ゴルド。買取なら2万5千ゴルドです。会計時に20%UPになります。お次のお客様どうぞー」
「お願いしまーす」
若い男性二人組の冒険者さんです。
「はい。これは銘を【きのこ帽子のミルク缶】効果は防腐+10%の逸品です。価値は20万ゴルド。買取なら5万ゴルドです。会計時に20%UPになります。お次のお客様どうぞー」
「僕ちんを、待たせるとは度胸があるな。まあ庶民は無知なるゆえ仕方あるまい」
八歳くらいにみえる、ソロの男の子冒険者です。
確かに鑑定待ちの行列が出来ています。
十五分くらいの待ち時間となっているはずです。
「お待たせして申し訳ありません。鑑定依頼品はありますか」
にっこりとペコリで対応します。
「鑑定品?うむ、まあそう急くではない庶民よ。僕ちんこそは、かのトンズーラ騎士爵が三男、サブッロ・トンズーラである」
堂々たる名乗りを上げますが全く知りません。
騎士爵というからには、何処かの貴族の配下である陪臣。あるいは王宮務めの親がいるはずです。
王宮務めの場合は領地無しが多いらしい、くらいの知識しかありません。
見た目も、使い古した革の胸当てに、革ズボンの両ひざには継ぎはぎがあてられ、左足のブーツからは親指が見えています。
腰に下げる剣にいたっては、何ヶ所欠けているかわかりません。
いかにも兄からの、お下がりのお下がりといった感じです。
「失礼しました。サブッロ・トンズーラ様。それで鑑定依頼の品をお見せ頂けますか」
ここはプライドを傷つけないよう対応します。
「うむ、そう急くではない庶民よ。お前は見どころがあるゆえ、特別に我がトンズーラ騎士爵家の起こりを教えてやろう」
あ〜駄目です。長くなりそうなので、申し訳ないですが見切ります。
「ピッピーノ。こちらのお客様を向こうで対応してもらえるかな」
親指で裏路地を示します。
「お客様こちらへどうぞ。じっくりお話をお聞かせ下さい」
ピッピーノが背中に手を添え、トンズーラ子息を物陰に誘います。
「お待たせしました。お次にお待ちのお客様どうぞー」
気を取り直して鑑定再開です。
「こいつを見てくれ。こいつをどう思う」
おっと。三日連続で僕が鑑定することになった、ソロ男性冒険者さんです。
「こ、これは、す、少し欲しいです。銘を【アオダモの板バネ】効果は振動耐性+20%疲労耐性+20%。価値は40万ゴルド。買取なら10万ゴルドですが、僕に売ってくれるなら24万ゴルドで買取ます」
「24万ゴルドか、それで頼む」
「はい、ありがとうございます。お次のお客様どうぞー」
〜〜〜
夕方前に鑑定を終えます。
今日も大盛況でした。
六人で歩いて宮殿を目指します。
物陰から一人の冒険者が姿を現します。
「トキン・ヴェネート様っ。先程は大変申し訳御座いませんでした。知らなかったとはいえ失礼致しました。ど、どうか一族皆殺しのうえ、さらし首だけはご容赦下さい。この通りで御座いますっ」
先程のサブッロ・トンズーラ騎士爵子息です。
土下座から、腹ばいになります。
五体投地みたいになってます。
「サブッロさん。僕にそんな権限も力もありませんよ。さあ、通りで寝そべっては通行人の迷惑になります。起きて一緒に夕食でもたべましょう」
ピッピーノが、サブッロさんを起こします。
「僕ちんごときが、トキン・ヴェネート様と同席など滅相もございません」
また五体投地に、はいろうとするのをピッピーノがとめます。
「我が主の誘いを断るわけではあるまいな」
ピッピーノがいいます。
「断るなど滅相もございません。ですから、どうかお家取り潰しだけはご容赦下さい。お願い致します」
「はははっ。まあわかったから。どうせ夕食もまだでしょ。僕達もこれからなんだ。きっとモンタルチーノ子爵夫妻も歓迎してくれるから」
まだ何か言おうとするサブッロさんをピッピーノが背中に手を添え歩かせます。
〜〜〜
プリオーリ宮殿 夕食後
「ほう、ではサブッロ殿の実家は、ラッツィオ伯爵家の陪臣だね」
モンタルチーノ子爵がいいます。
「はい、そうなります」
「騎士爵にしてもらった経緯は聞いてるのかい」
モンタルチーノ子爵が、サブッロさんに興味津々です。
「領兵だった爺ちゃんが、村を襲った熊の魔物を退治したという嘘の報告で、騎士爵に取り立てられたと聞いています」
「はははっ、嘘なのかい?」
落ち着きを取り戻した、サブッロさんとの話が続きます。
トンズーラ騎士爵家の起こりを聞きます。
二つの村が熊に襲われ、畑に被害が出た。
領主のラッツィオ伯爵から、熊一匹の討伐をお爺ちゃんが命じられた。
村にたどり着き話を聞くと、野生の熊ではなく魔物の熊だとわかった。
それを聞いたお爺ちゃんは逃走したが、やはり村に被害が出ては不味いと思い直し戻った。
村に戻ると、男衆総出で魔物と戦い瀕死の傷を負わせていた。
最後のとどめだけ刺して、ラッツィオ伯爵に報告したが一度逃げたのがバレた。
伯爵は面白がり、その二つの村を領地として与え、名字を「逃走」と名付けたと言います。
「はははっ、愉快なお爺ちゃんと愉快な領主ではないか。面白い、気に入った。サブッロ殿、もしその気があるなら我がモンタルチーノ家に仕えてみないか。いつでも歓迎するよ」
その夜、サブッロ・トンズーラさんはモンタルチーノ子爵の宮殿、プリオーリ宮殿に泊まります。




