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第十五話 廃墟別荘14



モンタルチーノ街 ワイン祭四日目



僕は今、鐘楼塔にいます。


地平線の向こうに、顔をだしはじめた朝陽を、二人で眺めています。


隣に立つ、赤色に輝いてみえる美少女に向き直り告げます。


「マルティーナさん。あらためて伝えるよ、僕の婚約者になってほしい」


「はい、トキン様。喜んでお受け致します。よろしくお願い致します」


マルティーナさんが、笑顔で頭を下げます。


僕もにっこり頷きます。


「ありがとう、ティナ。婚約の記念に、これを贈るよ」


上着のポケットから、シルクのハンカチーフに包まれた品を取り出します。


「この金色のヘアピンは銘を【金風の髪飾り】と言う逸品でね。ティナに似合うと思って、大事にとっておいた品なんだ。僕がつけていいかな」


ティナが顔を赤らめ頷きます。


髪飾りをつけた、ティナにいいます。


「とっても似合ってるよ」


そっと彼女を抱き寄せます。


朝陽が登りきるのを、静かに眺めます。



〜〜〜



「みんな、ちょっと意見があったら聞きたいんだ」


朝食後、皆に質問します。


メンバーは、

ソフィこと、ソフィア・トツカーナ伯爵令嬢。

ニコこと、ニコーレ・ミラノ侯爵令嬢。

ティナこと、マルティーナさん。

アリスこと、アリーチェ・アレンツォ子爵令嬢。



「ブナの森の中に建つ別荘だけど、呼び名を決めたいと思って。対外的には「ヴェネート公爵家 別荘」となるけど、僕達身内での呼び名が欲しいと思ってね」


別荘とはいえ、宮殿並の規模を持つ建物に、名前が欲しいと思ったのです。


「名前ね、確かにあった方がいいわね」


ソフィがいいます。


「そうね、素敵な森の中に建つ、美しい宮殿にどんな名前が相応しいかしら」


ニコがいいます。


「そうですね。建物も素敵ですが、周囲の環境も含めた名前はどうでしょうか」


ティナがいいます。


「それもいいわね」


ソフィが同意します。


「建てたのは、ソフィのご先祖さまって聞いたけど、名前はついて無かったの」


アリスがソフィに聞きます。


「数代前のガットゥーゾ・トツカーナさんが建てたと聞いてるわ。でも宮殿名は伝わってないのよ」


ソフィがこたえます。


「そうなのね」


アリスがいいます。


しばし、みんなで考えます。



「ドングリ宮殿というのはどうかしら」


ソフィがいいます。


「それ、いいかも。建物の周囲もイメージできるわ」


ニコがいいます。


「ドングリ宮殿。可愛らしい名前です」


ティナがいいます。


「私もドングリ宮殿に賛成するわ」


アリスがいいます。


婚約者四人の意見が一致します。


「ドングリ宮殿か。うん、僕も気に入ったよ。よし、これからはドングリ宮殿と呼ぼう」



〜〜〜



モンタルチーノ街を出ます。


ドングリ宮殿にニコ、ポーラさん、エリーゼ、ピッピーノを降ろします。


クワッドを御者にシェーナ街へ向かいます。




ヴェネート公爵家 別邸



「母さま、おはよう。ちょっとお願いがあるんだ」


いくつか相談をします。


「わかったわ、好きにやりなさい。ジーヤにも言っておくわ」


にっこりを贈って、別邸を出ます。



別邸の裏手にある、小さな家に向かいます。


馬丁長のニンジーノをみつけます。


「ニンジーノ、おはよう」


「トキン様、おはよう御座います」


「ニンジーノ、頼みたいことがあるんだ」


いくつかお願いします。


「わかりやした。早速、何名か連れて行ってきやすぜぇ」


「うん、頼んだよ」


馬丁長を見送ります。


以前、母さまとジーヤと三人で住んでいた、小さな家に入ります。


「セドミン、セドポンおはよう」


ベニス街の商家出身である、二人の家人を訪ねます。


姉のセドミンは、サリンベーニ商会で、副商会長のポジションとして頑張っています。


弟のセドポンは、鑑定スキルを持っており、僕の鑑定屋の店長として頑張っています。


二人に今後の展望を伝えます。


ついでにアリの巣の無事を確認します。


次は、シェーナ街の西門を目指します。


〜〜〜


小さな鑑定屋さん


『トキンの虫眼鏡』



カギを開けて入ります。

真っ直ぐ、奥の作業場に向かいます。


四人を見つけ、声を掛けます。


「みんな、おはよう」


そこに居たのは、僕の仕事仲間である、ヒロン、ホホン、ビアンカ、ジュリアです。


四人は鑑定屋の二階に住んで、シェーナ街、迷宮ダンジョン、昆虫ダンジョンの周囲から、古代の逸品の欠片と一般品の欠片、細かな素材スクラップを集めて来てくれます。


「毎朝、ワカバ執事から、読み書き計算を習ったと聞いたよ。もうバッチリかな」


「バッチリだよ。それだけじゃなく社交マナーも習ったぜ、トキン様」


まとめ役のヒロンがいいます。


「はははっ、そうみたいだね。それなら、皆んなに次の仕事を頼めるね。ベニス街とミラノ街にある、僕の鑑定屋さんを任せたいんだ」


二人一組で行ってもらい、スキルも取得出来ること。

鑑定屋に住込みで働き、報酬額も伝えます。


「すぐ結論を出す必要はないよ。四人でよく話し合って決めてね」


手を振り別れます。

武器防具を二十点置いて、店を後にします。


「クワッド、お待たせ。ドングリ宮殿に帰ろう」


「はい、トキン様」



〜〜〜



ブナの森の中に建つ、ドングリ宮殿に到着します。


ヴェネート公爵家の紋章『有翼の獅子』を掲げた馬車が二台停まっています。


一台は四人乗り。もう一台は二人乗りです。


別邸の馬丁長ニンジーノが来てくれたのです。


宮殿に入ります。


エリーゼが、横幅のある階段の手すりを磨いています。


「お帰りなさいませ、トキン様」


「ただいま、エリーゼ」


かけ寄ってきたエリーゼがいいます。


「ニコーレ様とポーラさんは、自室で作業中です。ピッピーノとニンジーノ達は、裏手の温泉掃除と、もう一つの温泉を探してます」


「わかった。クワッド、裏手に回って皆んなを呼んできて。僕とエリーゼでティータイムの準備をしよう」


〜〜〜


大食堂でお茶を楽しみながら、ニンジーノの報告を受けます。


「トキン様。裏手の温泉はすぐにでも使えます。排水も問題ありません。もう一つの温泉も場所を確認できましたが、まだ大きさと深さの全貌が掴めません。こっちは調査と清掃に数日かかりそうです」


「わかった」


「この後は、温泉の方に五名まわして、俺はクワッドとピッピーノに、馬車の取付けと外し方。それと馬の世話を教えようかと思いますがどうでしょうか」


「うん、それで頼むよ」


ニコがいいます。


「急ピッチで準備が進んでるわね」


「そうだね。ニコと旅をしてた時は想像してなかったけどね。思わぬ建物が手に入ったし、アリスのこともあって急ごしらえだけど、ワイン祭が終わる前には形にしたいんだ」


「そうよね。私はてっきり公爵家別邸に、しばらくお世話になるものだと思ってたから、この状況も楽しいけどね」


「僕もそう思ってたよ。母さまは、あの通り明るくて細かいことは言わない人だけど、それでも僕達だけの方がより気楽だからね」


「ほんとアリアンナ様は気さくな方ね。私のお母様とは対極だわ」


「はははっ、確かにそうだね。母さまは公爵家長女の立場を捨てて、ダンジョンを選ぶ人だからね」


皆んなに笑顔が広がります。


〜〜〜


夕方前に、ニンジーノ達と別れ、モンタルチーノ街へ戻ります。

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