第十四話 廃墟別荘13
『宿屋ワンコイン』
「ここか。そろそろお腹もこなれたし、まずはお客さんとして食事してみよう」
「はい、トキン様」
エリーゼとお店に入ります。
馬車停めが無いので、クワッドは留守番です。
「いらっしゃいませ『宿屋ワンコイン』へようこそ」
「食事だけ、二名お願いします」
「ありがとうございます。二名様で銅貨二枚になります」
エリーゼが銅貨二枚渡します。
「お好きな席に、お掛けになってお待ち下さい」
空いてる席に腰掛けます。
小さな声で話します。
「エリーゼ、今の娘がそうだよね」
「はい、トキン様。おそらくそうだと思います」
七歳くらいの少女で、そばかすがチャームポイントです。優しそうな雰囲気の可愛らしい女の子です。
黒のドレスに白のエプロンをかけ、腕まくりしています。
「お待たせしました。ごゆっくりどうぞー」
テーブルに食事が並びます。
トマト・モッツァレラチーズ・バジルを用いたシンプルなピッツァマルゲリータの大きめな一片、野草のサラダと具材の少ない野菜スープです。
食事を持って来てくれたのは、おそらく宿の女将さんです。
さっそく食べてみます。
どう見ても、安い食材だけなのに美味しいです。
野菜スープも飲んでみます。
くず野菜と呼ばれるような、僅かな量の野菜が入ってます。
やはり、こちらも美味しいです。
「うむ。美味い、シェフを呼べ」
「トキン様。そこまで小さい声ですと、誰にも聞こえないかと」
「うん、そうだよね。一度、言ってみたかっただけなんだ」
エリーゼがくすくす笑います。
「僕は、安い食材を上手く調理してると思ったけど、エリーゼはどうかな」
「はい、私もそう感じました。特に野菜スープは調味料で誤魔化さず、丁寧に下ごしらえされています」
「なるほど。後は甘味を食べてみたいけど、お店では出してないようだね」
「はい、そのようです」
どうしたものか考えます。
「エリーゼ、正攻法で行こう。どうせ気に入ったら、引き抜く形になると思う。女将さんを呼んでもらえるかな」
「はい、トキン様」
このあと身分を明かして、謝礼を払ったうえで、二日後に甘味を用意してもらい、別荘に招待することにします。
〜〜〜
僕は今、昨日と同じフォーメーションで鑑定しています。
別荘で、ニコ、ポーラさん、ピッピーノを乗せてモンタルチーノ街に帰ってきました。
少し休んで、先程から鑑定を開始しています。
「お待たせしました。お次のお客様どうぞー」
「やっと俺等の順番だぜー。ってトキンじゃねーか!」
「ほんとだ。ちょっと男らしくなってる。泣ける」
「本当にトキンか?マジトキ?」
「久々トキン見たら、腹減った」
懐かしいお客さんと再会します。
Eランクパーティーの『たぬきの皮』さん達です。
ただし鑑定待ちの、行列が出来ていますので、ゆっくりお話はできません。
「この置き時計は銘を【夢見の時計】効果は快眠+30%を半径15メドル。価値は十二万ゴルドの逸品です。買取なら三万ゴルドです。個人的に必要になるので、僕に売ってくれるなら、十四万四千ゴルドで買取ます」
牛のようないびき、卑猥な寝言、歯ぎしり対策への先行投資です。
「もちろん売るぜー。それで頼む」
「やっぱ、ワイン祭だと景気がいいな。泣ける」
「高級赤ワイン『ブルネッロ』グラス一杯いけるだろ、マジで」
「食べ物優先。トキンまたな」
ワイン祭中は、ここモンタルチーノ街に居ることを伝え別れます。
「お次のお客様どうぞー」
「こいつを見てくれ、こいつをどう思う」
おっと、昨日も僕が鑑定した冒険者さんです。
引き出しが三つ付いた、小さな小物入れです。
「す、凄く小さい小物入れは、銘を【古桐の小箱】効果は防腐+10%、価値は一万ゴルドの逸品です。買取なら二千五百ゴルド。会計時に20%アップになります。お次のお客様どうぞー」
〜〜〜
夕暮れ前に鑑定終了します。
やはりお客さんとの触れ合いは楽しいです。
この大盛況ぶりだと、依頼していた鑑定士二名が来てたとしても、二名でお客さんを捌くのは厳しいと思います。
小物雑貨ダンジョンは、思った以上に集客力が高いのかも知れません。
少し遅めの夕食は、差し入れした鶏肉と卵の料理です。




