第十一話 廃墟別荘10
チュン、チュン♪
僕は今、早朝のプリオーリ宮殿の離宮にいます。
部屋を出て大広間に向かっています。
いつもより早く目覚めた朝に、何かを期待して歩きます。
大広間には、既に二人の先客がいます。
さっそく挨拶します。
「身も心も美しい方は早起き。と言うのは本当のようですね。お早う御座います。お美しいお嬢様方」
「お早う、トキン。でもそんな諺は聞いたことないわ」
ソフィが言います。
「トキン、お早う。そんな諺は無いわよ。フフッ」
ニコが言います。
「はははっ、そうだね。どうやって可愛い二人を褒めようかと思ってね。作っちゃったよ」
三人でニコニコです。
ソフィとニコは仲良しです。
お互い無理なく、気軽に接しているのがわかります。
仲が良いのは、僕にとってもいいことです。
そんな二人に謝ります。
「モンタルチーノ街に来てから、余り時間を取れなくてごめんなさい。ソフィともニコとも、一緒にゆっくりしたいんだけど」
「大丈夫よ、トキン。ちゃんとお祭りを楽しんでるわ。フフフ」
「そうよ、トキン。気にしないで、フフッ」
ソフィとニコが優しいです。
「今日も夕方から、アイテム鑑定の手伝いをするんだ。それで、よかったら日中に別荘を観に行かないかと思って。建物はもう綺麗になったんだ」
誘ってみます。
「えっ、もう綺麗になったの」
「なかなかの廃墟だって、聞いたばかりだけど」
驚いています。
「ソフィもニコも、僕のスキルは知ってるでしょう。それで返事はどうかな」
「えーと、確かにスキルは知ってるけど、建物も直せる。とは思わなかったわ。私は大丈夫よ、フフッ」
「トキン、私も見てみたいわ。あとはティナとアリスにも聞いてみましょう。フフフ」
「うん、そうだね。それで僕の馬車で行きたいけど、四人乗りなんだ。僕が御者するとしても、メイドさんが乗れないけど大丈夫かな」
「ポーラには、その間、自由にお祭りを楽しんでもらうわ」
「バーヤは、ここでメイドね。フフフ」
アリスとティナも広間に顔をだします。
朝食後、みんなで出掛けることにします。
〜〜〜
高速馬車フォルトゥーナ号で、フレンチーナ街道を北に向かいます。
今日は僕が御者を努めます。
四人乗りの車内には、僕の婚約者が乗っています。
ソフィこと、ソフィア・トツカーナ伯爵令嬢。
ニコこと、ニコーレ・ミラノ侯爵令嬢。
ティナこと、マルティーナさん。
アリスこと、アリーチェ・アレンツォ子爵令嬢です。
街道から小道にそれます。
隠し通路のような、糸杉の林道をクネクネ進みます。
車内からは、美少女達のざわめきが聴こえます。
ブナの森へ入った際には、歓声が上がります。
気持ちよい朝の森を、ゆっくり進みます。
綺麗になった別荘に着きます。
僕は急いで御者席を降り、馬車のドアを開け、美少女達に手を差し伸べます。
目の前に建つ、森の中の宮殿を観て、みな歓声をあげます。
「凄く素敵な宮殿だわぁ」
「真っ白な壁に、真っ青な三角屋根。配色もいいわ」
「とっても綺麗な建物ね。周囲の森も優しい感じね」
「とても上品な別荘ですね」
婚約者達の反応に、にっこりします。
「建物の中も、簡単に案内するよ」
まずは一階です。大広間、食堂、厨房などをみてまわります。
階段をあがり踊り場とつながる、二階を案内します。
使用人の部屋を一つみせて、他も同じ造りだと伝えます。
三階に到着します。
建物左手へ向かいます。
位置としては、厨房、食堂の上の上の階にあたり、外には厩舎や放牧地がある方向です。
建物左手の一番奥の部屋に着きます。
「この突き当りにある部屋二つは、僕が使おうと思ってるんだ。左手の部屋は、書庫を兼ねた執務室と応接室」
ドアを開けてみせます。
隣りの部屋もみせます。
「こっちの部屋は、寝室かな」
「立派な造りね。調度品も少し古いデザインが、かえって高級に観えるわ」
「そうだね、ソフィ。君のご先祖さまが、こしらえた建物と調度品だね。かなり傷んでたけど全て直したよ。ははは」
一度、廊下にでます。
「みんなに使ってもらう部屋も案内するよ。まず僕の寝室の隣りはソフィの部屋だよ。観てみて」
入ってすぐに広間があります。
奥に応接セット。壁ぎわには高さのない横長箪笥が有ります。
部屋の左手と奥にドアが有ります。
左手のドアを開けると専属メイドのための控室、小さな個室が有ります。
奥のドアを開けると広い寝室です。
寝室の窓から、ブナの森がずっと続く景色を見渡せます。
「部屋も景色も素敵だわ。ありがとうトキン」
ソフィがニコニコです。
僕もにっこり頷きます。
隣りの部屋に移ります。
「ここは、ニコの部屋だよ」
ソフィの部屋と同じ造りの部屋を案内します。
「次はマルティーナさんの部屋だよ」
ニコの隣りの部屋を案内します。
「ここはアリスの部屋になるよ」
ティナの隣りの部屋に案内します。
皆の個室の正面にあたる場所を案内します。
「みんなの部屋の向い側には、お風呂二つと、洗面所を兼ねた化粧室が四つあるよ」
女性陣にとって大事な場所です。
皆、しっかり吟味します。
概ね満足頂けたようです。
「それと、こっちにいくつかある小さい部屋は、将来の僕達の子供部屋かな」
一つだけドアを開けて案内します。
皆、何も言いません。
うつむいたり、頬を赤らめたり、苦笑いを浮かべたりします。
僕は何か間違ってしまったのでしょうか。
気にせず、三階の反対側にある客室を案内して一階に降ります。
玄関ホールで言います。
「この別荘には、まだ見どころがあるんだ。ティナ、案内を頼めるかな」
ティナはにっこり頷きます。
「皆様、こちらです」
ティナに続いて、階段の右横から階段裏へ移動します。
壁に開いた大穴の前に来ます。
「これは、脳筋、じゃなくて家人のピッピーノが開けた穴なんだ。あの床の鉄扉の下には、隠しダンジョンがあるんだ」
「えっ、嘘でしょトキン」
「またまた冗談いって。驚かないわよ」
「本当なら危険じゃないの」
いい反応に満足します。
「ティナ、みんなに教えてあげて」
ティナの口から真実が伝えられます。
証拠品として、大型冷蔵庫に大量にストックされた鶏肉と卵。少しだけの豚肉を見せます。
さらに一階の空き部屋に、山積みされた羽毛のストックも見せます。
結界もあり、魔物も間引いたので安心なことを伝えます。
「まだ見せたいものがあるんだ。みんな外に行こう」
建物を左回りに進みます。
やはり気持ちよい環境です。
建物の裏手で言います。
「ニコ、みんなを案内してくれるかな」
「任せてトキン。みんなこっちよ」
ニコを先頭に進みます。
「みんな、ここよ。フフッ」
ポカンとするみんなに説明します。
「ここはまだ綺麗になってないけど、葉っぱが湿ってるところが温泉なんだ」
縦横数メドルのエリアを指さします。
「露天風呂ってことかしら」
「天然温泉があるのですね」
「プライベート温泉まであるの」
女性陣の反応に大満足します。
「数日中に綺麗にするから、みんなで入ろうね」
「私、水着は持って来てないです」
ティナがポツリといいます。
「それは私の出番ね。後で採寸させて、すぐ用意できるわ」
ニコが言います。
「よかったじゃない、私もアリスもニコのブランド水着を持ってるわ。でも既製品よ、ティナのはオーダーメイドね」
「モンタルチーノ街に来たら、温泉に入らないとね」
ソフィとアリスが言います。
温泉確定です。
足元に、鈍い色を放つ縦横5ミリほどの、金属片があります。
拾い上げていいます。
「マルティーナさん、アリス。僕の秘密のスキルをみせるよ。良くみててね『修復』」
僕の両手から優しい光が溢れます。
金属片が本来の姿を取り戻します。
鑑定結果
「鉄の文鎮」
良品
【獅子の重鎮】
防風+20%
振動耐性+20%
8,000,000ゴルド
半径10メドルに効果。
「振動耐性があるね、馬車に置こうかな」
「トキン様のユニークスキルということですか」
「だから、素材も集めてたのね」
マルティーナさんとアリスは、思惑通り驚いています。
「秘密のスキルだから、誰にも言わないでね。はははっ」
スマートに次の提案をします。
「よかったら、このあとシェーナ街にある僕の店で、部屋に必要な家具や小物を選びに行きたいと思って。一時間ほどで着くからさ」
〜〜〜
シェーナ街のサリンベーニ商会で、それぞれ必要な物を買い揃えます。
サリンベーニ商会長に地図をわたして後日届けてもらいます。
お昼過ぎにモンタルチーノ街へ戻ります。
プリオーリ宮殿でマリア伯母様が出迎えてくれます。
マリア伯母様は、モンタルチーノ子爵夫人です。
赤ちゃんのロッソ君を片手で抱いています。
「みんな、お帰りなさい。ティータイムにしましょう」
みんなで食堂に移動します。
毎日食べても飽きない『ポポロ ディ ポロリ』製のマリトッツォとジェラートがテーブルに並びます。
「さあ、みなさん。どうぞ召し上がって。あら?ジェラートが少し溶けてるかしら。「氷結」これで平気ね、ふふふ」




