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バタンと乱暴にドアが閉まった後、俺はふっと口元に笑みを作った。

「まったく、素直なやつなんだからな、グレイは」

素直なグレイは俺の言ったことを全て信じているにちがいない。

まあ、信じてもらわなくては困る。なぜなら、それは全て嘘だから。

――そう、今言ったことは全て嘘だ。

でも、悪意をこめてではない。親友であるグレイのために身を引くためだ。

その証拠に、今でも胸が痛む。

友に嘘をついた罪悪感と、好きな人を諦めなくてはならない辛さ。

でも、仕方ないのだ。

グレイ、いや、アデライン様の願いのために。

いや、アデライン様は否定するだろう。イケメン好きと自認するあの人は、醜男なグレイに自分が心を奪われていることなど認めないに違いない。でも、実際は違う、


アデライン様は、グレイのことが好きなのだ。


自分がイケメン好きだとあまりにも強く信じすぎて、自分で自分の心に嘘をついているのだ。

でも、自分でも知らないうちに本音は出ている。

例えばそう、抱きとめられた時とか。

アデライン様は自覚していないだろうが、アデライン様が倒れる瞬間に彼女は小さく助けを求めた。


『グレイ様』


と。

その後、グレイの名を出してからかうとびっくりした顔をしていたから彼女は自分がグレイを呼んだことに気付いていないのだろう。

その時、素直に、アデライン様をかわいいと思った。

でも、実際はグレイとアデライン様は相思相愛だと思い出して目の前が真っ暗になる。


今、ここで笑ってる人が、自分には絶対に手の届かない所にいる。

できることなら自分の隣で笑っていてほしい。でも、悲しむ顔は見たくない。

ならば。

彼と彼女を引き合わせることが彼女の幸せに繋がるのなら――


たとえ自分が苦しくても、二人の幸せを願うよ。


「ま、グレイが踏み出せるように後押ししたんだから、せいぜい頑張ってもらわないと」

小さく呟いて、俺は自分の部屋へと歩きだした。


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