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プロローグⅠ 俺という自分



 吾輩は天城透(あまぎとおる)である。名が無い訳ではない。

 学生時代には演劇部に所属していて、自慢ではないが、エースだった。と、自他共に認める程度には実力があったと思う。まぁ今は、適当に生きて、適当に就職して、適当に働いた結果、自分の中のやる気を使い果たしたのだろう。


 その結果……。

 今は立派な引きこもりニートが誕生してしまったのである。ちなみに今日は、引きこもりニートになって三年目。ニート誕生の日だ。


 なんで引きこもったんだってぇ?んなもん聞くな、バカタレ。


 強いて言うなら、俺は『何者』でもなかったから、としか言えない。今日も今日とて、母さんからの連絡だ。

いつものように心配の声。片親で俺を育て上げた、立派な親だ。こんなクズニートのクズ息子を、それでも心配してくれている。

 こんなことになるくらいなら、母さんの期待に答えて立派な人間を演じてやればよかったのかもしれない。

 後悔は先に立たず、っていう言葉は、こういう時に使うのかもしれない。


「………………ああ、ダメだ。考えが深ーい海底に沈んで、帰って来れない。今日はなんて日なんだ……」


 そう宣って、いつもの居場所(お布団)に包まっては転がる。食欲もなければ、定期的に連絡をくれる友人への返事をする気力もない。

 病院に行くべきだという友の言葉は、正しいのかもしれない。

 まぁ、今日はそういうのは置いておいて、自分の好きなゲームでもして、『何者』でもない自分を忘れるに限るかもしれない。


 趣味は万病の薬になるしな。

え? 違うって?


 そうして、俺はその場所から這い出た。


◾︎


 まだまだ俺の一人語りに付き合ってもらおう。

 なぜなら俺は暇だからだ。

 俺が好きなゲームは、もっぱら王道ファンタジー!

 勇者が世界を救うストーリーが一等好きだ。特に主人公を自分の名前に変えられるものだとなおよし。


「これ、もう少しで物語が終わりそうだな……」

 そう思うと、寂しいもんだ。結構長かったな、このゲーム。

 俺は大体、一回物語を最後までやると、そこで終わらせて秘蔵に仕舞う。そして次にやるゲームを探し始める。


 二周目がある! ってことがなければ、大体そうだ。ストーリーの見直しはたまにするけど、あんまりしない。


 これはまぁ、主人公である勇者が世界を救うのは、たった一度でいいだろ。という、物珍しい俺の自論だ。

 友にはちっとも理解されない。

 続編があってもいいけど、平和な時代があってもいいだろうが。頑張った褒美だろ?

 RPGはいい。

 ゲームの中の人生を読んで、没頭して、何も考えなくてもいいのだ。いや、良くないことは分かってるよ。

貯金、そろそろなくなりそうだし……。

一か八か、投資に手を出そうかな……。


 こわいな……。


 ダメだ。

 こんな気持ちで、気持ち良いファンファーレを迎えることはできない。俺は苦渋の判断をもって、ゲームを終了した。 明日やればいい、明日。もちろんセーブはした。モグラに怒られた記憶は、いつまでも残っているからな。


 ………………。


 今日はもうダメだ。持ち場(お布団)に戻ることにする。ふかふかの布団は全てを包み込んで暗い気持ちを捨ててくれるだろう。

 どうせ、明日は何もせずぐうたらとしてるだけの何もない自分だろう。

今日だけだこんなキノコが生えそうなじめじめした自分はな。明日の自分が何とかしてくれるだろう。


 そうと決まれば、寝るに限る!

何とかしたい気持ちがあれど、どうにもできないこともある。いつでも自問自答中だ。よし寝よう。布団もそう言っている。


「誰もいねぇけどな!おやすみなさい、俺!」


 俺は目をきつく閉じて、深い深い世界に、自分から沈んでいったのだった……。



 寝る前にやったゲームが原因か、なにかは分からないけど、俺は、【勇者】の夢を見た。

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