表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/7

第3話『この世界ではない』

「――ここは……」


 朝になり、カナタはソファーで目を覚ました。この屋敷に空いている部屋がなかったため、彼はソファーで寝ることになっていたのだ。

 

 窓から陽光が差し込み、開けた目を閉じて立ち上がる。


 (あ、そうか。俺、異世界に来たんだったな……)


 やはり、信じられない。こんな世界があるなんて。まあ、夢でもなく本当に起こっていることだ。一人では為す術がない。


「――おはようございます。早いですね」


「え? あ、えっと……セレナ、さん?」


「はい、そうですよ」


 声がし、後ろを向くと獣人メイドのセレナがいた。朝早いというのに、目もしっかり開けていて眠そうな雰囲気がない。


「いつもこんな早くに起きてるんですか?」


「そうですね。朝食を準備しないといけないので。ま、今日は学園ないんですけどね。この時間に起きるのが癖になってしまって」


 そう話しながら、キッチンで料理をしているセレナ。料理のいい匂いが流れてきて、鼻をクンクンとさせていると、また声が聞こえてきた。


「あれ、もう起きたんですか〜? 早いですね〜」


 セレナとは異なり、欠伸をしながら気だるそうに歩くもう一人のメイド。名はエルフィーネだったか。セレナと比べればだらしないように見える彼女だが、こんな豪邸に仕えているなら彼女もなにかあるのだろうか。


「? アタシのこと見てどうしました〜?」


「あ、いや。こんな広い豪邸でメイドって大変なのかなって気になって」


「そうですね……あまり大変では無いですよ? (わたくし)たちだけ動くのではなくて、ライン様たちも自分のことや色々としてくれるので助かってます」


「そだね〜。みんな優しいし〜。楽しいよね〜」


 ――大人数で生活してるのは、楽しそうで本当に羨ましい。


 ――その時、玄関の扉が強くノックされた。


「あれ、誰か来てるのかな〜?」


「手が離せないですね……。すみません、出てもらっても良いですか?」


 料理に集中しているセレナとエルフィーネにグッドサインを送り、カナタは扉を開けた。

 そこには、腰に剣を携えている、青みがかった銀髪の少年がいた。


「――えっと、君は? ラインたちいるかな?」


「え、ラインたちですか? 今寝てますけど……」


「そっか……。じゃあラインでいいから起こしてきてもらっていい?」


「あ、いいですよ」


 目の前の少年にそう返し、カナタは一度セレナたちのもとに向かった。

 剣を持っているのだ。なるべく刺激しないように冷静に対応し、メイドに伝えようとしたのだ。


「あの、腰に剣付けた男が来てるんですけど……。ラインたちがいるか? って。あの人大丈夫な人ですか?」


「剣を持ってるんですか? えっと……髪色は?」


「銀髪に青がかかってました」


「じゃあ大丈夫な方です。(わたくし)たちの友達ですので」


 その言葉に安堵し、カナタは頭を下げて階段を登って行った。


◆◇◆◇


 ――五分後、カナタは眠そうなラインを引っ張りながら玄関まで戻ってきた。

 それを確認すると剣を持った少年はラインに話しかけた。


「おはよう。朝早くにごめん。実は昨日、二名の盗賊が指名手配されてね。ここら辺に逃げているらしくて。それを追ってるんだけど、見なかったかい?」

 

 ――二名の盗賊? なんか見た事あるな……。そう思ったカナタがラインを見つめると、彼も全く同じことを考えたのか、こちらを見てきた。


「ちなみに特徴って?」


「特徴は――」


 剣の男が教えてくれた特徴。うん、間違いなく昨日のあいつらだ。そういえば、カナタが助かってからすぐに逃げたようだが、指名手配されるような奴らだったとは……。


「あー、俺ら昨日会ったヤツだな。逃がしちゃった。悪い」


「会ったんだ? じゃあ一緒に来てくれない? 見つけて欲しい」


「ああ、わかった」


 男の頼みにラインは了承し、ついて行った。扉が閉まると同時に、一気に全身が安心した。敵意がないとはいえ、剣を持った男と会話するのは怖すぎた。

 

 (ハハッ、怖すぎこの世界……)


 元の世界ではこんな場面遭遇することは無かっただろう。閉めた扉を背もたれにしていると、階段を降りてくる三つの足音が聞こえた。


 それは、アレス、セツナ、レンゲのものだった。ゆっくりと降りてくると、彼らは自分の席に座る。すると、机にはいつの間にか凄い完成度の朝食が置かれていたのだ。


「あ、カナタ君! こっち来て!」


 元気いっぱいな少女――レンゲに手で招かれ、カナタは昨日座っていた席に着く。


「兄さんは?」


「なんか腰に剣を持った人について行ったよ。昨日会った盗賊の件で」


「ああ、私がぶん殴ったやつのこと? あれ捕まえとけば良かったね」


「……セツナ、そんなことしてたの?」


「仕方ないじゃん。首にナイフ向けられたんだから」


「じゃあ仕方ないか」


 アレスとセツナがそう話していると、レンゲが声をあげた。


「ラインお兄ちゃんもすぐ帰ってこないと思うし、食べちゃお!」


 そして、セレナとエルフィーネも席につき、


「いただきます」


 と言って食事が始まった。もちろん、昨日の夕飯に変わらず美味い。美味しすぎて感想が言えない。料理に夢中になっていると、アレスがカナタに声をかけた。


「ねえカナタ。昨日みんなで話して、聞くか迷ったんだけどさ」


「――? どうしたの?」


「――カナタって、この世界の人じゃないよね?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ